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2021年9月1日水曜日
2020年9月25日金曜日
2020年4月4日土曜日
Zoom以外のオンライン授業用コミュニケーションツールを比べてみた(Google Meet / Microsoft Teams)
新型コロナウィルスの感染拡大により、世界の教育機関は一斉にオンライン授業への舵を切りました。教育機関で特に利用が増えているのはZoomというサービスです。特に、日本国内の大学などの高等教育機関は、なぜかZoom利用が基本になりつつある雰囲気です。
たしかにZoomはオンライン授業に便利ですが、1つのサービスに利用が集まると問題も出てきます。一昔前のようにアクセス集中で簡単にサーバが落ちることは減りましたが、それでもダウンすることもあります。また、つい最近のニュースにもあったように、セキュリティー上の問題が発生すると、一斉に多くのユーザが影響を受けます。
人気ビデオ会議アプリ「Zoom」が今も抱えるさまざまな問題 | TechCrunch Japan
ということで、Zoom以外にオンライン授業に使えるコミュニケーションツールについてまとめてみました。
筆者は、オンライン授業に適したコミュニケーションツールには、コスト面をひとまず除くと、次の5つの条件が必要なのではと考えています。
①複数人同士のビデオ通話・チャットができる
②ライブストリーミングができる
③コラボレーション機能がある(あるいは外部ツールと連携できる)
④権限管理(閲覧制限)ができる
⑤プライベート用のコミュニケケーションツールと混同しない
一つずつ、背景を見ていきましょう。
ほかにも望ましい条件はあるでしょうけど、個人的にはこの5つが満たせればいいかなと思っています。そして、これらを満たすツールとして、Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsを紹介します。
https://zoom.us/jp-jp/education.html
それではまず、いま大本命のZoom。注目が集まっているのは、上の①〜⑤の条件を満たしているからという事があると思います。
①のビデオ通話・チャットはもちろん、基本機能としてあります。ただし無料ユーザは通話時間の上限が40分、参加人数は100人までとなっています。新型コロナウィルスの流行を受けて、教育機関のユーザに対しては40分の上限を一時的に取り除いています。なので、90分の授業をZoomでやっても大丈夫なわけです。
②のストリーミングは、「ウェビナー」という機能として備わっています。これは有料プランでないと使えません。
③コラボレーション機能は、Zoomはそこまで強くはありません。ファイル転送ができるくらいで、ファイル共有や共同編集となると、Dropboxなど別のサービスと連携することになります。
④権限管理も、大丈夫です。授業にパスワードをかければ、リンクを知っていても忍び込むことはできません。
⑤プライベートツールとの兼ね合いも、ZoomをLineのように友人と家族とのやりとりで使うことは、まずないと思います。
Zoomの最近の躍進は、こういった条件が満たされていることのほかに、Zoomはコロナウィルスの問題が出る前から、教育関係者の中で流行り始めていたことも大きかったと思います。
2019年の夏ころだったか、自分でSkypeの設定もできなかったような大学教員がZoomで打ち合わせをしていて驚いたことを覚えています。
https://gsuite.google.co.jp/intl/ja/products/meet/
次に、Googleの提供する"Meet"です。これは、G suite Educationなど、Gmailを使うサービスを組織で契約している場合に使えるサービスです。2020年7月1日までは、どのような契約プランでも無料で使えるようになりました。
G suiteの大きな特徴としては、ウェブブラウザだけで全て完結するということです。ZoomやTeamsはデスクトップソフトのダウンロードが必要か、あった方が便利です。
①ビデオ通話も、ブラウザ(またはスマホアプリ)上で行います。Chrome以外のブラウザでも多くの場合は対応しています。ブラウザではなく電話やビデオ会議専用のPolycomなどを通じての参加もできるようです。参加人数は250人まで。
②のストリーミングは、なんと10万人まで視聴が可能なようです。まあ10万人の視聴する講義なんて無いと思うので、この数は無視していいですが、ともかく大人数への配信も問題ないということです。またこの機能は、管理者の設定次第では使えないこともあるようです。
③コラボレーション機能は、Meetの画面上では直接使えるものはあまりありません。基本的にはGoogleの提供する様々なサービス(ドライブ、Classroomなど)を併用します。
④権限管理も、招待制にできるので、大丈夫です。組織のアカウントを持っていなくても参加できるような設定(リンク発行で参加)も可能です。
⑤プライベートとの兼ね合いも大丈夫ですが、個人でgmailアカウントを持っている人も多いので、利用するときに学校アカウントと間違えて個人アカウントでログインしており参加できないというトラブルも想像されます。
Chromebookを全学生に配布しているなど、Googleべったりな機関はMeetを使えばいいのではと思います。ブラウザだけで完結するよう、作りはかなりシンプルで、動作は軽快です。
ただGoogleにありがちな、ヘルプやチュートリアルが不親切な面があるので、最初はとっつきづらいかもしれません。
https://www.microsoft.com/ja-jp/education/products/teams
最後にMicrosoft Teamsです。これはOffice 365の機能の1つであり、Office365 Educationを契約している教育機関で使うことができます。契約プランによっては含まれていない場合もあります。およそ3年前に開始されたサービスで、チャットツールSlackの対抗馬としてまさに売り出し中のサービスです。
①ビデオ通話は、ブラウザとデスクトップソフト、スマホアプリいずれでもできます。ビデオ通話の最大参加人数は、Meetと同じ250人。
②ストリーミングは、「ライブイベント」機能として使うことができます。Teamsの場合は視聴者1万人までらしいですが、講義には十分な量ですね。
③コラボレーション機能は、おそらくTeamsが一番強いと思われます。ファイル共有にはOnedrive、さらにOffice365のWord, Excel, Powerpoint, OneNoteなどと連携できます。Teamsのデスクトップアプリを設定すれば、その画面上でWordやパワポの共同編集まで一貫してできます。
④権限管理も問題ありません。Teamsでは、「チーム」単位でチャットグループを管理し、その中で通話や配信を行います。なので、最初に講義のグループを作ってしまえば、次に授業を行うときもアクセスが簡単です。
⑤プライベートとの切り分けも容易だと思います。Gmailに比べると、microsoftの個人アカウントを使っている学生は少ないはずです。
Office365 Educationを契約している教育機関は多いので、導入ハードルは低いはずです。また、wordやパワポを直接使えるというのは便利です。
一方、これはMicrosoftにありがちですが、多機能なぶん、どうしても動作にもっさり感が出てしまいます。
こういうツールはあまり入門書は出ないのですが、4月下旬に出版されるものもあるようです。
それぞれの機関で状況が違うので、ケースに応じて使用するツールを決めればいいのかなと思います。
ただ、もともとGoogleのG suiteやMicrosoft Office365を法人契約していて、MeetやTeamsをすぐ使える状態にあるにも関わらず、「みんなが使っているからZoomを使おう!(無料だし)」となりかけている現状には少し違和感を感じます。
筆者はGoogleやMicrosoftの回し者ではありませんが、本当にZoomを必要としているユーザーのためにも、Zoom熱は少し冷まして、他のツールも検討してみてはどうかなと思います。
たしかにZoomはオンライン授業に便利ですが、1つのサービスに利用が集まると問題も出てきます。一昔前のようにアクセス集中で簡単にサーバが落ちることは減りましたが、それでもダウンすることもあります。また、つい最近のニュースにもあったように、セキュリティー上の問題が発生すると、一斉に多くのユーザが影響を受けます。
人気ビデオ会議アプリ「Zoom」が今も抱えるさまざまな問題 | TechCrunch Japan
ということで、Zoom以外にオンライン授業に使えるコミュニケーションツールについてまとめてみました。
オンライン授業に用いるコミュニケーションツールの条件は
まず、なぜ今、みんながオンライン授業のためにZoomを使い出したのか考えてみましょう。それにはいくつか理由があるはずです。筆者は、オンライン授業に適したコミュニケーションツールには、コスト面をひとまず除くと、次の5つの条件が必要なのではと考えています。
①複数人同士のビデオ通話・チャットができる
②ライブストリーミングができる
③コラボレーション機能がある(あるいは外部ツールと連携できる)
④権限管理(閲覧制限)ができる
⑤プライベート用のコミュニケケーションツールと混同しない
一つずつ、背景を見ていきましょう。
①複数人同士のビデオ通話・チャットができる
まず一般にオンライン授業というと、この機能が必須になります。大学の授業ではディスカッションや質疑を取り入れた授業が多いので、ただ授業をビデオ配信ではなく、双方向でコミュニケーションができなければいけません。これはだいたいのツールにあります。②ライブストリーミングができる
とはいえ、100人を超えるような大人数の講義だと、色々と収拾がつかなくなります。そうした大規模な講義は、Youtube Liveのように、1人から受講者多数に一方的に配信する形式が望まれます。この機能も1つのツール内にあった方が便利です。③コラボレーション機能がある(あるいは外部ツールと連携できる)
授業資料のシェアや共同編集をすることが多くなります。そういった機能が、コミュニケーションツール内にあるか、または容易に外部のコラボレーションツールと連携できることが望ましいです。④権限管理(閲覧制限)ができる
オンライン授業とはいえ、学校外の人に見られては困ります。変質者がオンライン授業に侵入したというニュースもありました。なので、閲覧権限を持った学生だけが参加できるよう管理できる必要があります。⑤プライベート用のコミュニケケーションツールと混同しない
①〜④だけ見ると、じゃあLineやinstagramでもいいじゃん!てなりますが、プライベート用のSNSを授業で使うのは、学生も嫌でしょうし、教員も嫌です。なので授業用は別のツールを用いたいです。ほかにも望ましい条件はあるでしょうけど、個人的にはこの5つが満たせればいいかなと思っています。そして、これらを満たすツールとして、Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsを紹介します。
Zoom
それではまず、いま大本命のZoom。注目が集まっているのは、上の①〜⑤の条件を満たしているからという事があると思います。
①のビデオ通話・チャットはもちろん、基本機能としてあります。ただし無料ユーザは通話時間の上限が40分、参加人数は100人までとなっています。新型コロナウィルスの流行を受けて、教育機関のユーザに対しては40分の上限を一時的に取り除いています。なので、90分の授業をZoomでやっても大丈夫なわけです。
②のストリーミングは、「ウェビナー」という機能として備わっています。これは有料プランでないと使えません。
③コラボレーション機能は、Zoomはそこまで強くはありません。ファイル転送ができるくらいで、ファイル共有や共同編集となると、Dropboxなど別のサービスと連携することになります。
④権限管理も、大丈夫です。授業にパスワードをかければ、リンクを知っていても忍び込むことはできません。
⑤プライベートツールとの兼ね合いも、ZoomをLineのように友人と家族とのやりとりで使うことは、まずないと思います。
Zoomの最近の躍進は、こういった条件が満たされていることのほかに、Zoomはコロナウィルスの問題が出る前から、教育関係者の中で流行り始めていたことも大きかったと思います。
2019年の夏ころだったか、自分でSkypeの設定もできなかったような大学教員がZoomで打ち合わせをしていて驚いたことを覚えています。
Google Meet
次に、Googleの提供する"Meet"です。これは、G suite Educationなど、Gmailを使うサービスを組織で契約している場合に使えるサービスです。2020年7月1日までは、どのような契約プランでも無料で使えるようになりました。
G suiteの大きな特徴としては、ウェブブラウザだけで全て完結するということです。ZoomやTeamsはデスクトップソフトのダウンロードが必要か、あった方が便利です。
①ビデオ通話も、ブラウザ(またはスマホアプリ)上で行います。Chrome以外のブラウザでも多くの場合は対応しています。ブラウザではなく電話やビデオ会議専用のPolycomなどを通じての参加もできるようです。参加人数は250人まで。
②のストリーミングは、なんと10万人まで視聴が可能なようです。まあ10万人の視聴する講義なんて無いと思うので、この数は無視していいですが、ともかく大人数への配信も問題ないということです。またこの機能は、管理者の設定次第では使えないこともあるようです。
③コラボレーション機能は、Meetの画面上では直接使えるものはあまりありません。基本的にはGoogleの提供する様々なサービス(ドライブ、Classroomなど)を併用します。
④権限管理も、招待制にできるので、大丈夫です。組織のアカウントを持っていなくても参加できるような設定(リンク発行で参加)も可能です。
⑤プライベートとの兼ね合いも大丈夫ですが、個人でgmailアカウントを持っている人も多いので、利用するときに学校アカウントと間違えて個人アカウントでログインしており参加できないというトラブルも想像されます。
Chromebookを全学生に配布しているなど、Googleべったりな機関はMeetを使えばいいのではと思います。ブラウザだけで完結するよう、作りはかなりシンプルで、動作は軽快です。
ただGoogleにありがちな、ヘルプやチュートリアルが不親切な面があるので、最初はとっつきづらいかもしれません。
Microsoft Teams
https://www.microsoft.com/ja-jp/education/products/teams
最後にMicrosoft Teamsです。これはOffice 365の機能の1つであり、Office365 Educationを契約している教育機関で使うことができます。契約プランによっては含まれていない場合もあります。およそ3年前に開始されたサービスで、チャットツールSlackの対抗馬としてまさに売り出し中のサービスです。
①ビデオ通話は、ブラウザとデスクトップソフト、スマホアプリいずれでもできます。ビデオ通話の最大参加人数は、Meetと同じ250人。
②ストリーミングは、「ライブイベント」機能として使うことができます。Teamsの場合は視聴者1万人までらしいですが、講義には十分な量ですね。
③コラボレーション機能は、おそらくTeamsが一番強いと思われます。ファイル共有にはOnedrive、さらにOffice365のWord, Excel, Powerpoint, OneNoteなどと連携できます。Teamsのデスクトップアプリを設定すれば、その画面上でWordやパワポの共同編集まで一貫してできます。
④権限管理も問題ありません。Teamsでは、「チーム」単位でチャットグループを管理し、その中で通話や配信を行います。なので、最初に講義のグループを作ってしまえば、次に授業を行うときもアクセスが簡単です。
⑤プライベートとの切り分けも容易だと思います。Gmailに比べると、microsoftの個人アカウントを使っている学生は少ないはずです。
Office365 Educationを契約している教育機関は多いので、導入ハードルは低いはずです。また、wordやパワポを直接使えるというのは便利です。
一方、これはMicrosoftにありがちですが、多機能なぶん、どうしても動作にもっさり感が出てしまいます。
こういうツールはあまり入門書は出ないのですが、4月下旬に出版されるものもあるようです。
結局、どれがいいのか?
どれが一番かという結論は特にありません。それぞれの機関で状況が違うので、ケースに応じて使用するツールを決めればいいのかなと思います。
ただ、もともとGoogleのG suiteやMicrosoft Office365を法人契約していて、MeetやTeamsをすぐ使える状態にあるにも関わらず、「みんなが使っているからZoomを使おう!(無料だし)」となりかけている現状には少し違和感を感じます。
筆者はGoogleやMicrosoftの回し者ではありませんが、本当にZoomを必要としているユーザーのためにも、Zoom熱は少し冷まして、他のツールも検討してみてはどうかなと思います。
2018年4月11日水曜日
2018年4月5日木曜日
【2018年版】これから大学で働く人に読んでもらいたいIT入門記事
この春から、全国の大学で職員、教員、研究員、コーディネーターなどとして働き始める方はたくさんいると思います。
大学の特徴として、とにかくデスクワーク、ペーパーワークが多いという点があります。Excel、Word、パワポのオンパレードです。なので、何にもまして、Officeソフトを中心にITを活用して、業務を効率的に進める事が重要になります。特に最近は、国公立大学での人員削減や採用抑制が目指されているので、効率化の必要性は高まっています。
正規職員として採用された 方は新人研修などがあるかもしれませんが、教員や研究員、非正規職員にはほとんどないでしょう。分野や研究室にもよりますが、これまで研究一筋で事務仕事など経験がないという方には試練の連続だと思います。
このブログでは、IT系企業を経て大学で働いている筆者が、ITを活用して業務を効率化するための記事をいろいろと書いています。
その中から、まさにこれから大学で働く新任者に役立ちそうな記事を選んで紹介します。
全般・心構え
まずは心構えからです。パソコン仕事が苦手な方は、まず読むことをおすすめします。パソコンを使いこなすのは難しい・・・と思い込まず、「楽をしよう」と認識することが大切だと思います。わざわざ右クリックしたり、メニューを選択しなくても済む「ショートカットキー」という方法。使ったことのない人は、基本的なものから試しましょう。
Officeソフト
名前のリストとテンプレートをもとに、修了証を簡単に作る方法です。ほかにも宛名印刷、通知文書などにも応用できます。これもWordの差込印刷機能に似ています。あるリストをもとに、別のシートで何かを一括入力したい時に便利です。
Office365
普通のOfficeソフトではなく、オンラインで使えるMicrosoftのサービス「Office365」を組織全体で契約している、というところも多いと思います。Office365はWordやExcelをブラウザーで使えるほか、データをクラウドに保存できたり、アンケートフォームを作ったり、業務アプリを作ったり、といった機能があります。これらをうまく活用すれば、仕事をさくさく進めることができます。
まずはフォーム作成機能のFormsについて。フォーム作成はいまや、必須の事務スキルと思います。
ちょっと発展的ですが、PowerAppsというソフトを使えば、プログラミング不要で、オリジナルの業務用アプリを短時間で作ることができます。
メール
よくある「ファイルが重すぎてメール添付で送れない!」という場合の対処法。活用する機会があるはずです。これは特に、学生にも知ってほしいです。ウェブサービス
オフィスワークでよくある、「画像をPDFにしたい!」「PDFを画像にしたい!」「PDFを圧縮したい!」などといった事が、ウェブブラウザだけで簡単にできちゃう、という話。
クラウドストレージのDropboxに、隠れた便利なサービスがあります。多数のひとから、ファイルをアップロードしてもらえるサービスです。レポートや写真の回収に利用できます。
ウェブサービスをたくさん使っていると、大量のパスワードを覚えなければなりません。その煩わしさから解放してくれる便利なサービスがあるのですが、果たして・・・。
ここ最近、日本の大学教育や研究環境の危機が叫ばれています。
限られた資源を、研究力・教育力の向上に注ぐ為にも、大学に関わる個々人のスキルアップは欠かせないと考えています。私がこのブログで効率化の記事を色々と書いている理由もこれです。
やたらめったらITを導入すればいいわけではありませんが、こうした知識が少しでも課題解決に役立つことを願います。
最後に、愚痴の記事を一つ。
JASSOが指定するExcelフォーマットが非常に煩雑という件。この記事を書いたおかげか知りませんが、年々、少しずつ簡略化と改善が見られます。
ウェブサービスをたくさん使っていると、大量のパスワードを覚えなければなりません。その煩わしさから解放してくれる便利なサービスがあるのですが、果たして・・・。
小技
使う機会があるかわかりませんが、一応。発展
本気で業務改善に取り組みたい場合は、次の記事が参考になるかもしれません。意欲のある方はどうぞ。最後に
紹介した記事は、当ブログに掲載した記事だけなので、ITを使いこなすための心構えで書いたように、Googleで情報を調べたり、体系的に学ぶなどしてスキル向上を目指しましょう。ここ最近、日本の大学教育や研究環境の危機が叫ばれています。
限られた資源を、研究力・教育力の向上に注ぐ為にも、大学に関わる個々人のスキルアップは欠かせないと考えています。私がこのブログで効率化の記事を色々と書いている理由もこれです。
やたらめったらITを導入すればいいわけではありませんが、こうした知識が少しでも課題解決に役立つことを願います。
最後に、愚痴の記事を一つ。
JASSOが指定するExcelフォーマットが非常に煩雑という件。この記事を書いたおかげか知りませんが、年々、少しずつ簡略化と改善が見られます。
参考文献:
2018年3月28日水曜日
【2018年版】留学生が日本で携帯電話を使う一番いい方法は?
はじめに
文部科学省の方針もあり、日本へ来る留学生の数は増える一方です。筆者は現在、大学で留学生を受け入れる仕事もしていますが、その時によく問題になるのが、留学生の「携帯電話の契約」です。なにが問題か
では、留学生が日本の携帯電話を使おうとする時に、何が問題となるのでしょうか。筆者の経験上、留学生受入の現場では、おおよそ次のようなことが発生してしまいます。- 留学生が日本へ到着。携帯電話を使えるようにしたいので、とりあえず街の携帯電話ショップ(docomo、au、softbankとか)へ行く。
- 田舎のショップだと外国語を話せる店員がいないのでそもそも話が通じない。
- 幸い話が通じても、月額料金の高さと契約プランの複雑さ、違約金の高額さに衝撃を受ける。
- 結果、携帯電話の契約をあきらめて、自国から持ってきたスマホをWi-Fiのみで運用してなんとか過ごす。
- しかし大学から急ぎで何か連絡したいときに電話番号がなくて困る。 すごく困る。 本人も不便。
docomo、au、softbankなどの大手携帯キャリアで契約すると、スマホのデータ通信プランだと6,000円以上するのが普通です。「2年契約」がほとんどのため、半年や1年で帰国する留学生は高額な違約金を払わなければいけません。 しかも割引は本体とセットでの契約でなければ効かず、本体代は分割であっても高額・・・。 とならば、お金のない留学生は携帯電話をあきらめても不思議ではありません。
解決策
解決策としては、次の2つが考えられます。- 中古ガラケー+SIM契約
- 自分のスマホ+「格安SIM」契約
- Softbankのプリペイド携帯「Simply」を契約 ← 追加(2018年版)
1. 中古ガラケー+SIM契約の方法
1つめは、日本にいる間はガラケー(注:日本でしか使えないフィーチャーフォン)を使う方法です。ガラケーは、大手のショップで新品で買うと、非常に高いです。本体代金で3万円以上します。そこで、中古携帯電話ショップへ行って、ガラケーを購入します。 中古ショップでは、ものにもよりますが、安いものだと900円くらいからあります。
そして中古ショップで購入した端末を、docomo、au、softbankなどのショップへ持って行き、電話回線を契約します。 日本の携帯電話はSIMロックがかかっているのが普通なので、必ずその携帯電話が対応したキャリアへ持って行ってください。
データ通信を使わなければ、月700円台〜使えるプランがあります(注:解約金が必要)。 ただし通話料金は30秒で20円と高いので、なるべく自分からは電話をかけずに、かかってきた時だけ使うようにしましょう。 何回か電話をかけても、だいたい月1,000円~1,500円くらいで収まるはずです。
初期費用(端末代、契約事務手数料)で5,000円、月々1,000円×12ヶ月=12,000円、解約金10,000円とすると、1年でかかる費用は30,000円くらいだと思われます。
これくらいなら、まあまあ払えるんじゃないでしょうか。 インターネットは無料Wi-Fiで何とかするから電話だけでいい、という場合はこの方法でいいでしょう。
参考に、大手3社のガラケー料金プランのリンクを載せます。
あと、大手3社に次ぐY!mobileもガラケープランを提供しています。
補足:プリペイド携帯
日本の携帯は大抵ポストペイド(月額制)ですが、例外的にプリペイド携帯も存在します。ただし、通話料が普通のプランより割高になります。auとsoftbankがプリペイド携帯を提供していますが、softbankの方が充実しています。
Softbankのプリペイドを使う場合、「Simply」がおすすめです。この記事の3. Softbankのプリペイド携帯「Simply」を契約するを参照してください。
2. 自分のスマホ+「格安SIM」契約
自分のスマホを持っていて、電話だけでなくデータ通信(インターネット)を使いたい、またはデータ通信だけ使いたいという場合は、格安SIMを契約することをおすすめします。日本はフリーWi-Fiの環境が劣悪です。大都市は多少、フリーWi-Fiスポットは増えましたが、LineやWhats Appなどチャットアプリをよく使う人は、やはりデータ通信のできるSIMが必要でしょう。
格安SIMとは?
格安SIMは、大手通信会社よりもかなり安価に携帯電話やデータ通信の契約ができるサービスのことです。「SIM」とは、携帯電話の通信に必要な小さなICチップのことで、格安SIM会社の多くは、この「SIMカード」単体で販売していることが多いです。
(画像)SIMカード
格安SIMは、大手通信会社の通信インフラを借り受けて、独自のサービスや料金プランを設定してそれぞれのお客さんに提供しています。格安SIMの会社は、ほとんど店舗を持たないかあってもほんの数店舗など、コストを極力抑えています。なので大手よりも格安で通信回線を提供できるのです。
どれくらい安いのか
どれくらい安いのか、比べてみましょう。| 月額料金(通話+ネット) | 契約期間 | 解約金 | データ通信量 | 備考 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 大手通信会社 | 約6,900 円(機種代込み) | 2年 | 9,500円 | 2GB | ・電話かけ放題 ・本体を分割払いで購入した場合は解約時に残債の支払いが必要 |
| 格安SIM A社 | 約1,900円 | 6ヶ月 | 8,000円 | 3GB | ・これに電話料金がかかる(20円/30秒) ・電話機本体を用意する必要がある |
上の表は、電話とネットをスマートフォンで利用する場合の料金比較です。前述のように、大手通信会社の契約プランが複雑怪奇なので、あくまで目安、例と思ってください。
大手通信会社と契約する場合は、機種を同時に購入するのが一般的です。上の月額料金は、Nexus5Xを同時購入した場合の料金です。SIMだけでも契約できるにはできますが、色々な割引プランが効かなくなります。ガラケーにすれば月額料金は安いのですが、最近のガラケーは本体料金がけっこう高いんですよ。
格安SIMでSIMだけを契約した場合、機種本体は自分で用意する必要がありますが、自国でスマートフォンを持っている場合もあるので、それが日本で使える機種の場合は、わざわざ新たに買う必要はありません。買う必要があっても、最近は1万円台でそれなりに使える機種が見つかります。
どうでしょうか。比べてみると、こんなに差があるんです。
なぜ安いのか
安さにはそれなりの理由があります。一般に、格安SIMのデメリットとしては次のようなことが言われています。- 物理的な店舗の数が少ないので、申し込みやトラブルの相談が不便
- 設定を全部自分でやらなければいけない
- 通信速度が遅い
- 通話し放題プランがない
- クレジットカードがないと契約できない場合が多い
2 については、これも若い留学生にとってはさほど苦労しないでしょう。SIMを入れるときに「APN設定」というネットワークの設定をしないと使えません。説明書に書いてある通りに設定すれば大丈夫です。
3 大手通信会社に比べて、通信速度が遅い場合があります。時間帯によって著しく速度が下がる時もあると言われていますが、安いんだからあきらめなさいってことです。最近は、速度については改善されてきています。私も格安SIMを使っていますが、速度の点で不満に思うことはほとんどありません。
4 通話し放題プランが必要な留学生はいるのでしょうか?よほどアクティブなビジネスマンみたいな留学生以外は、それほど自分から電話はかけないでしょう。
5 これだけは問題になるかもしれません。クレジットカードを作って日本に来た学生はよいのですが、日本で留学生がクレジットカードを作ることは簡単ではありません。ただ、銀行振込も可能な格安SIMの会社もいくつかあるので、そういう会社を使うしかないでしょう。
格安SIMのデメリットを見てみましたが、ほとんどの留学生にとって1~4はほとんど問題にならないでしょう。とにかく、使えればよいのです。
格安SIMのサービス
有名な格安SIMのサービスは次のようなものがあります。格安SIMの普及に伴い、だんだんと料金プランが複雑になってきました。長くなってしまうのでここで比較はしませんが、どのサービスも、データ通信は数百円〜、通話つきの場合は1,000円台後半から、プランがあります。
月々2,000~3,000円くらいは携帯電話に出費してもよいという場合は、こういった格安SIMを契約するといいでしょう。
大都市の家電量販店にはだいたい、これらのSIMカードが置いてあり、その場で契約できます。最近では、筆者の住んでいる田舎のケーズデンキやノジマなどにも、一部の格安SIM(楽天モバイルとか)が販売されています。最近は、取り扱い店舗も増えています。
とりあえず近くの電気やさんに行ってみてください。
3. Softbankのプリペイド携帯「Simply」を契約
日本の大手携帯会社は、一応プリペイド携帯のサービスも提供しています。Softbankとauが提供していますが、おすすめはSoftbankで、「simply」という携帯を契約する方法です。
Simplyは、Softbankから2017年12月に発売された、名前の通りシンプルな携帯電話です。できることは、電話、メール、SMS、簡単なインターネットブラウジングくらいです。一応、スマートフォンと同じAndroidがOSとして入っていますが、電話機能に特化されているため、新たなアプリのインストールなどはできません。
機種代金は6,458円で、4,000円分のチャージが付いてきます。契約事務手数料・機種変更手数料が3,000円かかるので、初期費用は1万円くらいと思っていいでしょう。
プリペイドなので、その都度チャージが必要です。通話料金などについてはこちら。
通話料は8.58円/6秒です。30秒あたり約43円なので、よくある通話料金の2倍以上です。まあ、プリペイドなので仕方がないでしょう。
留学期間が終わったら、携帯電話本体はSIMロックを解除して、買取店やメルカリなどのフリマアプリで売ることができます。次に留学しにくる別の学生に譲ってもいいですね。
結論
以上、見てきたとおり、月々1,000円、2,000円くらいでも携帯電話が使えることを紹介しました。日本の携帯電話契約はとにかく複雑なのですが、留学生をサポートする人たち(学校の教職員やまわりの学生)が、ガラケープランや格安SIMについて基本的な仕組みや主なサービスを覚えておいて、留学生におすすめするようにした方がいいと思います。
とにかく留学生には、電話番号くらいは持っていてほしいのです。
SIMカードはamazonから買うと、契約手数料(3,000円程度)が無料になるようです。表示価格が300円とか非常に安く見えますが、もちろん月額料金は別途かかります。また、購入したらすぐSIMが届くのではなく、パッケージの指示にしたがって、各会社のサイトから登録する必要があります。日本語がよくわかる人でも難易度高めかもしれません。
2017年9月10日日曜日
幻想を捨てて戦略を持とう:常見陽平『「就活」と日本社会ー平等幻想を超えて』
日本型就活は死ななくてもよい:海老原嗣生『お祈りメール来た、日本死ね』に引き続き、就活関係の本です。
常見陽平氏は現在、千葉商科大学専任講師。「若き老害」を自称し、様々なメディアで就活問題、労働問題などについて発信している方(そして時々、炎上している)なので、名前を知っている方も多いと思います。
著者本人のウェブサイトには、次のようなプロフィールが掲載されています。
プロフィール】常見陽平(つねみようへい) 身長175センチ 体重85キロ 千葉商科大学国際教養学部専任講師/いしかわUIターン応援団長 北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。 専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。http://www.yo-hey.com/ より。
そんな常見氏による就活についての新書です。
本書の特徴
常見氏の就活に関する著作はたくさんあります。『くたばれ!就職氷河期 就活格差を乗り越えろ 』(2012)、『就活の神さま~自信のなかったボクを「納得内定」に導いた22の教え~』(2011)などです。その中で本書の特徴は、「就活」を社会学的な視座からも捉えようとしていることにあるのではと思います。
というのも、もともと著者は学部卒後、企業勤務を経て言論活動を行っていましたが、それと並行して大学院へ入学し、修士号を取得しています。本書は、修士論文での研究成果の一部を取り入れて、学術的な視点とジャーナリズム的な視点を織り交ぜて書かれています。
そのため、多くの先行研究や統計データが参照され、印象論や経験談に頼らない内容となっています。一方、完全な学術書でもないので、ウェブ記事などで見かける著者の 持ち味が出ている面白さもあります。
「就活」を取り巻くデータと研究史
本書は4章構成となっています。第1章〜第3章は、統計データや先行研究を参照しながら「就活」を取り巻く歴史と現状を明らかにしています。そして第4章が著者のオピニオン、という構成です。
- 序章 日本の「就活」をどう捉えるか
- 第1章 「新卒一括採用」の特徴
- 第2章 採用基準はなぜ不透明になるのか
- 第3章 「新卒一括採用」の選抜システム
- 第4章 「就活」の平等幻想を超えて
就活を論じるマスメディアの記事や新書は多いものの、学術的な視点からまともに「就活」を取り上げたものはあまり見かけないため、第1章〜第3章まで目を通すだけでも、だいぶ参考になるのではと思います。
マスメディアで「通説」のように語られていることも、データを確認して検証しています。
例えば、「欧米では新卒一括採用なんて存在しないから、在学中に就活することはない」という通説があります。しかし実際のところは、欧州でも約4割が在学中に就職活動を行っていることが統計をもとに紹介されています(p.64)。
また、いわゆる「学歴フィルター」についても取り上げられています。「学歴フィルター」とは、企業が応募者の出身大学の入学難易度(偏差値)によって選考にフィルターをかける、と言われている仕組みのこと。企業への応募要件には出身大学の制限などは書かれておらず、どんな大学出身でも公平に選考されると思いきや、有名大学でなければ企業説明会にすら参加できない・・・ということも巷では言われています。
本書では、この「学歴フィルター」を先行研究に基づいて検証しています。 実は、大学によってその後の就職がどう左右されるかという研究は、「トランジション研究」(学校から職業への移行に関する研究)ということで、教育社会学や労働社会学の分野で繰り返し行われてきたとのこと(p.24)。
こうした研究から、大手企業が有名大学に対して採用枠を設けていたり、大学名を基準に採用活動を行っている面がある事実は確認されています。ただし採用には様々な類型があり、企業規模や採用時期によっては大学名の基準が変動する(よりオープンになる)ことがあると、第3章では指摘されています。
最後に:幻想を捨てて戦略を持とう
本書の副題「平等幻想を超えて」にある通り、日本の「就活」には誰もが大手優良企業に就職できる公平なチャンスがあるかのような平等幻想を描いてしまい、そのために求職者(学生)も企業も膨大な手間とコスト、精神的な負担がかかって消耗している現状を、著者は指摘しています。そして、第4章の最後を、著者は次のように結んでいます。
もう、平等という幻想にしがみつくのはやめよう。競争が平等でないということに気づこうではないか。(中略)平等ではないことを受け入れることで、弱者は弱者なりの生存戦略を考えようではないか。(p.205)確かに、その通りだと思います。
企業就職する場合は、どんな人でもこういった戦略的思考は持った方がいいでしょう。巨大な資本を抱えた大企業のマーケティング戦略と小資本の中小企業のマーケティング戦略が全く異なるように、自分の所属大学や持っているスキル(これから持ちうる、持ちたいスキル)をもとに、戦略的な思考で就職先を考えることは重要です。
ただ難しいのが、はじめから頭で考えることばかりしていると、自分で自分の可能性を狭めたり、チャンスを逃す可能性もあります。ひょんな縁から就職が決まるということもありますからね。
また、こういった就活の戦略を、就業経験のない学生が就活時期になってから考え始めるなんて、無茶なことです(だから極度に消耗する)。大学入学後の早い時期から、戦略を考えるチャンスを、大学や周囲が作ってサポートする必要があると思います。
逆に企業側も、平等を装って採用活動を行うのは、大きなコストになっています。余裕のある大手企業はともかく、中小企業や無名な企業は、就職ナビなどに頼って応募者を集めるよりは、有名大学よりも質の高い教育を行っている大学を狙い撃ちにするとか、地方自治体と連携して既卒者にアプローチするとか、様々な手法があります。
最後に、本書でいう「就活」は、日本での企業就職を目指す健康な大卒者(おそらく主に学部卒者が中心)が行う求職活動のことを指しています。この他にも求職活動、労働の形には様々な立場に立ったものがあるため、今後の研究で、現状では範疇外になっている点も含めて「就活」問題を追求してくれることを願います。
2017年7月31日月曜日
日本型就活は死ななくてもよい:海老原嗣生『お祈りメール来た、日本死ね』
「2018年卒の就職活動も終盤になってきた」ーなんていう表現は、極めて日本的なものでしょう。2018年春に卒業する学生は、おおよそ2017年の3月から会社説明会へ参加して志望する企業へエントリーし、6月ころから選考が始まり、8月、9月には内定を得て、進路を決める。10月には内定式、2018年4月には入社・・・これが、日本的就職活動の模範的なスケジュールとなっています。
徹底解説! 2018卒 就活スケジュール - 就活支援 - マイナビ2018
こうした就職活動は、日本型新卒一括採用の特徴(大概において「弊害」)として語られることが多くあります。
本書、『お祈りメール来た、日本死ね ー「日本型新卒一括採用」を考える』は、その日本の大卒者の就職活動と日本型新卒一括採用の「光と陰」を取り扱った新書です。
タイトルにある通り、2016年にネットの書き込みから話題となった「保育園落ちた、日本死ね」をもじっています。文体はあえて軽く書かれているのだと思いますが、扱っている内容は至って真面目です。
内容を、かいつまんでお話します。
就活の悩みは戦前からの100年論争
「就活」に関しては、様々な問題がメディアでクローズアップされています。非個性的なリクルートスーツ、画一的な面接ノウハウ、既卒者の不利な扱い、圧迫面接、就活による学業への影響・・・等々。これだけの問題が報じられていることから、就活問題というのは最近の現代的な問題のように感じられますが、歴史をひもとくと100年近く前、戦前からも続く、歴史の長い問題なのです。
それが、冒頭の第1章から解説されています。
特に問題となってきたのが「就活時期」の問題で、1928年にはじめての「就職協定」が当時の大手企業によって作られて以後、景気状況によって破られたり、ころころと時期が変わったりを繰り返して今に至っています(p.27参照)。
かつては、大学進学率は今ほど高くなかったので、大卒者の就活というのはごく限られた人の問題だったのでしょう。しかし、大学進学率が50%を超えた今、就活は多くの人が直面する問題となっています。また、グローバル化が進む中で、企業経営の観点からも新卒一括採用が見直されつつあります。そのためメディアでも大きく取り上げられ、「現代特有の」問題というように認識されているのだと思われます。
欧米型採用の闇
タイトルから想像すると、本書は日本型一括採用とそれに合わせた就活を批判する内容かと考えがちですが、それは違います。欧米型採用の光と闇、特に闇の部分を紹介し、その上で日本型採用と比較しています。
欧米では日本のような新卒一括採用ではなく、在学中から長期インターンシップなどに取り組み、卒業後も期限付きのポジションなどで実務経験を積んだ上で採用されるというのが大半です。
この形式だと、新卒も既卒も関係なく公平に実力で採用される、採用されるために高いモチベーションで専門性を身につけられそうだ、企業にとっても即戦力を採用できる・・・といったメリットが思い浮かびます。
では欧米型採用の闇とは何なのでしょうか。
一例として紹介されているのが、インターンシップが「雇用の調整弁」として、つまり格安の労働力として使われているという点です。
本書で紹介されているのはフランスの例。一部のエリートにはそれなりの給料が支払われるようですが、ノンエリートがインターンシップ(実習期間)で手にできる給料は、なんと最低賃金の3分の1程度。日本円でいうと月5万円程度だそうです。
欧米では解雇がしやすい、というイメージがありますが、実際のところは日本以上に解雇規制が厳しい所もあります。なので、格安で短期間雇えるインターン生は、企業にとって都合の良い存在なのです。
著者は次のように言い切っています。
そう、欧州のインターンシップは、企業にとって使い勝手の良い雇用調整弁という側面がある。だから企業はインターン生を重用する。あちらの国でも、決して社会貢献や企業の社会的責任のみで受け入れているわけではない。(p.127)それでも大半はインターンで実務経験を積まないと望むような職につけないため、みなインターンシップに取り組むわけです。なお日本によくあるような職業体験的なインターンシップではなく、普通の業務に取り組みます。
まとめ:日本型就活はこれでいいの・・・か?
欧米的な採用環境で、厳しい条件でインターンシップをし、必死で実務経験を積んで職につく・・・そしてその先も、エリート候補以外は一定以上には出世できず、より良い条件の仕事に就くためには転職や学び直しを繰り返す。そういった環境と、日本型就活を経て新卒入社し、企業研修で育ててもらい、熾烈ではあるが誰もにチャンスがある(ように見える)出世レースに参加するか。
そのどちらが良い・悪いというのは著者は述べていません。2つを比較した上で、日本型新卒一括採用と日本型就活に対する改善策を提案しています(その内容は本書内でお読みください)。
私も、どちらが良い悪いという問題ではないと思います。それに、就活を経て企業就職する以外に、公務員、教員、起業、家業を継ぐ・・・など、キャリアの選択は色々あります。
1つ言いたいのは、日本型就活のメリットは活用できる余地がある ということです。
何の実務経験もない学生を、専門性もさほど問われずに正社員として採用してもらえるだなんて、ノンエリートの欧米の学生からみたら垂涎ものでしょう。
実際に私も、人文系が専門だったにも関わらず、新卒エンジニアとして採用してもらえました。欧米であれば、履歴書だけで完全に門前払いだったでしょう。
日本型就活は確かにプレッシャーも大きく大変だと思いますが、その幸運な環境を活かしたい人にとっては絶好の機会ではあるので、自分自身のために 「就活とやらを大いに利用してやるぞ」ぐらいの大きな気持ちで望んでもよいのではないでしょうか。
2017年3月28日火曜日
「21世紀型スキル」はしんどい
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| 画像は21世紀型スキルとは関係ありません。 |
「21世紀型スキル」という用語が、ここ数年、教育関係の中でもバズワード(流行語)のようにして広まっています。これについて、思ったことをまとめてみました。タイトルの通り「21世紀型スキルはしんどい」のでは、という話です。
「21世紀型スキル」とは
21世紀型スキルとは、「21世紀を生き抜くために育むべき能力」のことです。21世紀型スキルには唯一絶対の定義があるわけではなく、様々な団体が定義付けを試みています。
よく引用されるのは、国際団体ACT21sが定義している「21世紀型スキル」です。
思考の方法(上記訳は、人工知能に負けない子ども、どう教育するかより。)
仕事の方法
- 創造力とイノベーション
- 批判的思考、問題解決、意思決定
- 学びの学習、メタ認知
仕事のツール
- 情報リテラシー
- ICTリテラシー
社会生活
- コミュニケーション
- コラボレーション(チームワーク)
- 地域とグローバルのよい市民であること
- 人生のキャリア発達
- 個人の責任と社会的責任
(ところでこれを提唱したACT21sのウェブサイトは閲覧できない状態になっていますし、2015年ころ以降の情報がネット上では見当たりません。解散したのでしょうか。)
また、OECDは、非常に分厚い報告書で「21世紀に必要なスキル」を詳述しています。
Chapter 1: The skills needed for the 21st century
アメリカのウォルト・ディズニー社やフォード社がメンバーとなっているP21(Pertnership for 21st century learning)という組織にも定義付けがあります。
FRAMEWORK FOR 21ST CENTURY LEARNING
おおよそどこの団体も、ACT21sと同様のことを提唱しています。つまり、単純に教科の知識を得るだけでなく、個人の高度な思考能力(批判的思考能力など)、さらに価値観の異なる人々と協働し、情報技術を活用して、イノベーションを起こす能力・・・などが求められているのです。
これらのスキルが「21世紀型」と言われているように、20世紀を生きるためには、多くの人にとって必ずしも必要でない能力でした。20世紀は、言わば「やる気・元気・思いやり」とテストでそこそこいい点数を取る能力があれば、なんとか生きてこれた時代でした。学校教育もそのようにデザインされていました。
しかし21世紀は違う、と。グローバル化の進展により、様々な思想・背景の人たちと仕事をしなければいけない。さらに技術革新で多くの仕事はAI(人工知能)、ロボットに置き換えられてしまう・・・。
そんな時代を生き抜くためには、上述のような「21世紀型スキル」が必要だと言うのです。
21世紀型スキルはしんどくないか?ー「自己再生力」の必要性
教育に携わっている人間が言っていいことか分かりませんが、正直、「21世紀型スキルを身につけるってしんどくないか?」と思ってしまいます。求められる要素が非常に多く、レベルが高いです。「22世紀スキル」は、いったいどんな風になってしまうのでしょうか。気になります。教える方もしんどいです。というよりも、教える側が21世紀型スキルなんて十分に身につけていない場合が多いのです。しかし、現代〜何年か先の社会が「21世紀型スキル」を求めているというのも現実です。そして、21世紀型スキル(のようなもの)が求められる社会というのは、やはりしんどい社会になりそうです。
そんな時に、どう対処したらいいのでしょうか。
示唆的なのは、リンダ・グラットン氏が未来の働き方について書いた著書『WORK SHIFT』の中で提唱している「自己再生のコミュニティ」の必要性です。
未来の働き方は、今以上に時間の使い方が細切れとなり、バーチャルな空間での仕事が多くを占めるようになる。そうなると、必然的に孤独感と強いストレスが蓄積されていきます。グラットンは、そのことを前提として、バーチャルなコミュニティに頼らない、リアルな場で幸福感を高めてくれるつながりが必要だ、ということを主張しています。
自己再生のコミュニティのメンバーとは、現実の世界で頻繁に会い、一緒に食事をしたり、冗談を言って笑い合ったり、プライベートなことを語り合ったりして、くつろいで時間を過ごす。生活の質を高め、心の幸福を感じるために、このような人間関係が重要になる。リンダ・グラットン著(池村千秋 ・訳)『WORK SHIFT』p.309-p.310
一見、「友達は大切だ」「家族は大切だ」というような、当たり前のことのように感じます。しかし、その当たり前のことが、未来の働き方をしていると、どんどん自明のことではなくなっていくのです。グラットンは次のように書いています。
重要なのは、自分で選択して、そういう人間関係を築くことだ。この種の温かい人間関係が当たり前のように手に入る時代が終わり、意識的に自己再生のコミュニティを築く必要が増すのだ。前掲書 p.310
話を21世紀型スキルへ戻すと、21世紀型スキルが求められるような職業というのは、『WORK SHIFT』に書かれているような、高い能力が求められ、時間に追われ、放っておくと心身を消耗するような仕事のはずです。
それを前提として、グラットンの言うような「自己再生のコミュニティ」、あるいは個人としての「自己再生力」の必要性についても、21世紀型スキルとの関連で教えるべきだと思います。
具体的にどう教えるべきかというのは別の機会に考えたいのですが、ともかく、一方的に能力の伸長を求めるばかりではしんどいので、そのしんどさを乗り越えるための方策も、今後の学校教育と家庭教育の中に意識的に取り入れていかなければならないはずです。
まとめ
21世紀型スキルの概念と、それに関連して自己再生力の必要性について書きました。グローバル人材育成系のプログラムに多少関わっている身としては、21世紀型スキルについて事例など調べて掘り下げるとともに、自己再生というキーワードも考えていきたいと思います。
2017年1月9日月曜日
manabaはなぜダメなのか
突然、煽るようなタイトルですみません。
manabaは株式会社朝日ネットが提供するLMS(Learning Management System)、ポートフォリオシステムです。ここ10年以内くらいに大学や専門学校を卒業した方であれば、何らかのシステムにログインして課題を提出したり、出席を記録したりしたことがあるかもしれません。manabaもそんなシステムの一種です。どんなシステムかは、公式サイトの紹介をご覧ください。
教育支援サービス 「manaba」|株式会社朝日ネット

manabaの画面イメージ(公式サイトより)
慶応義塾大学、中央大学、国際基督教大学など、多くの大学がこのmanabaを導入しています。私の勤務先も導入しています。日本では、moodleと並んで最もよく使われるLMSの1つではないかと思われます。
このmanabaを使うことで、学習の成果を1箇所にまとめることができる(ポートフォリオ)、学生同士・または教員との授業前後のインタラクティブな学習が可能になる、などといった効果が期待できます。
1~3の理由があってか、いまいちmanabaは定着していません。定着させるには、教員、学生ともにかなりの努力が必要になります。
manabaをやり玉にあげたような形ですが、他のLMSも似たり寄ったりの状況か、manabaよりも悪いかもしれません。manabaはモバイルアプリは無いとはいえ、ブラウザでのスマートフォン対応はしています。私は他のLMSでは数年前のmoodleしか使ったことはありませんが、当時はスマートフォン対応なんて皆無でしたね。moodle、今はスマートフォン対応されているのでしょうか?
この仕組みをmanabaにも導入したら、多くの可能性が開けると思います。例えば、レポートの提出締切を登録したらそれがGoogleカレンダーにも自動で同期されるとか、コースの掲示板に書き込んだら外部のメーリングリストに流してくれるだとか、そういった連携が可能になります。さらにAPIを活用すれば、独自の教育アプリケーションも開発できるようになります。
manabaは株式会社朝日ネットが提供するLMS(Learning Management System)、ポートフォリオシステムです。ここ10年以内くらいに大学や専門学校を卒業した方であれば、何らかのシステムにログインして課題を提出したり、出席を記録したりしたことがあるかもしれません。manabaもそんなシステムの一種です。どんなシステムかは、公式サイトの紹介をご覧ください。
教育支援サービス 「manaba」|株式会社朝日ネット

manabaの画面イメージ(公式サイトより)
慶応義塾大学、中央大学、国際基督教大学など、多くの大学がこのmanabaを導入しています。私の勤務先も導入しています。日本では、moodleと並んで最もよく使われるLMSの1つではないかと思われます。
このmanabaを使うことで、学習の成果を1箇所にまとめることができる(ポートフォリオ)、学生同士・または教員との授業前後のインタラクティブな学習が可能になる、などといった効果が期待できます。
manabaのがっかりなところ
さて、そんなmanaba。私も活用しています。ないよりはあった方がいいのですが、個人的にがっかりな点がいくつかあるので、あえて指摘します。1. スマートフォンアプリがない
manabah「モバイル対応」をうたっていますが、あくまでスマートフォンのブラウザから閲覧できる、という意味です。iOS、Androidアプリはありません。スマートフォンのブラウザでmanabaへアクセスすると、スマートフォン用のmanabaページが表示されます。これをショートカットとしてスタート画面にアイコンを配置すれば、あたかもアプリのように使えます。が、誰もがその方法を知っているとは思えませんし、単なるショートカットなのでアプリのようなプッシュ通知はありません。やはり今の時代、モバイルアプリは必須だと思います(もしかしたら開発中かもしれませんね)。2. インターフェイスがひと昔まえ
決して分かりづらいわけではないですが、ユーザーインターフェイスとデザインがひと昔前のウェブを彷彿とさせます。例えるなら、mixi的なインターフェイス、デザインです(皆さん、mixiって覚えていますか?そもそも知っていますか?)。manabaがリリースされた年代からいって、mixiを意識していたんじゃないかと思います。ただ、時代は進みましたので、FacebookやTwitter、LINEなんかに慣れた学生世代からすると、直感的に使いづらく、ややとっつきにくいインターフェイスではないでしょうか。3. コメントのやりとりが気軽にできない
LMSを導入する狙いとして、学生同士または教員とのインタラクティブなコミュニケーションを促進し、学生の主体的な学習を促すことが挙げられます。しかしmanabaでの交流は、私が見る限り活発に行われている例はあまりありません。manabaでのコメントのやりとりは「掲示板」形式です。話題ごとにスレッドを立てて、それに返信を書いていく、という形です。スレッドはツリー状になっていきます。この形式もやはり、最近のフィード に次々と投稿が流れてくるSNSに慣れた世代には使いづらく、どうやって使ったらいいのか躊躇するレベルだと思います。mixi世代にとっても、もはや使いづらいです。せっかくのLMSの狙いが実現できていません。1~3の理由があってか、いまいちmanabaは定着していません。定着させるには、教員、学生ともにかなりの努力が必要になります。
manabaをやり玉にあげたような形ですが、他のLMSも似たり寄ったりの状況か、manabaよりも悪いかもしれません。manabaはモバイルアプリは無いとはいえ、ブラウザでのスマートフォン対応はしています。私は他のLMSでは数年前のmoodleしか使ったことはありませんが、当時はスマートフォン対応なんて皆無でしたね。moodle、今はスマートフォン対応されているのでしょうか?
manabaへの要望
がっかりなところ1~3を踏まえて、個人的なmanabaへの要望をまとめてみました。1. モバイルアプリ(iOS、Android)の開発
朝日ネット社は、関連サービスとしてモバイルアプリのmanaba +responをリリースしているくらいなので、モバイルアプリを作る技術力は確かにあるはずです。あくまで推測ですが、manaba本体にモバイルアプリがない理由は、導入先の学校ごとに微妙なカスタマイズがされていたりして、モバイルアプリの仕様を統一するのが難しいからじゃないでしょうか?逆に、そのような障壁がなければ、モバイルアプリは一刻も早く開発した方がいいと思います。今なら、国産LMSとして不動の地位を築けます。2. コメント形式をフィード式に&「いいね」ボタンの導入
がっかり3で指摘した点に関して。フィードバックを促進するためにも、FacebookやTwitterなどを参考に、フィード上にコメントが流れてきてその場ですぐに返信できる形式にすべきです。また「いいね(Like)」ボタンを導入し、もっと簡単にポジティブなフィードバックをできるようにすることを提案します。発言や課題提出に対して、無反応よりも「いいね」を押された方が、学生のモチベーションはぐっと上がるのではないでしょうか。3. ユーザーインターフェイスやデザインの見直し
manabaにはmanabaなりの「設計思想」があると思いますが、モバイルアプリのリリースに合わせて、モバイル優先の設計思想に変えてはどうでしょう。現在のmanabaは明らかにPCでの利用を前提としています。しかしmanabaで出来ることを考えると、今のタブレットやスマートフォンで出来ないことはほとんどありません。スマートフォンでレポートを書く学生がいる時代です。モバイル優先で直感的に操作できるインターフェイスにすれば、利用率は大幅に上がるのではないでしょうか。4. APIの開放
ちょっと専門的な話ですが、APIを開放して欲しいな、と思います。APIとは、システムの機能を外部からのアクセスで活用できるようにする仕組みのことです。例えば、Twitterに何か投稿したら同じ内容をFacebookにも投稿する、といった機能を使ったことがあるかもしれませんが、これもAPIです。TwitterとFacebookがAPIを開放することで、相互連携が可能になっているのです。この仕組みをmanabaにも導入したら、多くの可能性が開けると思います。例えば、レポートの提出締切を登録したらそれがGoogleカレンダーにも自動で同期されるとか、コースの掲示板に書き込んだら外部のメーリングリストに流してくれるだとか、そういった連携が可能になります。さらにAPIを活用すれば、独自の教育アプリケーションも開発できるようになります。
さいごに
manabaに対して苦言を呈す形になってしまいました。しかしこれも、manabaに大きな期待を持っているがゆえの提言です。素晴らしいLMSに成長し、日本の教育を伸ばすツールとなってほしいと、心から願っています。2016年12月27日火曜日
JASSO留学支援奨学金のネ申エクセル問題について
自民党の河野太郎議員が、科研費の申請書などで使われている、非常に扱いづらく煩雑なエクセルファイル、通称「ネ申エクセル(または神エクセル、以下「神エクセル」)」を廃止するよう提言したことが話題となっています。
データとして役立たない「神エクセル」問題に解決の兆し 河野太郎議員が文科省へ全廃を指示
これに似た問題が、JASSO(日本学生支援機構)留学支援奨学金関係の神エクセル問題です。すでにどなたかが問題提起されているかもしれませんが、大学で国際交流に携わっている私からも、問題提起させてください。
※ネ申(神)Excelについては三重大学の奥村先生が書かれた論文に詳しいので、そちらを参照してください:「ネ申Excel」問題
実はこのJASSO、通常の奨学金の他に、海外留学をする学生、また海外から日本へ受け入れる学生に対して返済不要の奨学金も支給しています。今回取り上げたいのは、大学間協定に基づく交換留学を支援する奨学金にまつわる書類についてです。
http://www.jasso.go.jp/ryugaku/tantosha/study_a/short_term_h/2016.html
平成28年度海外留学支援制度(協定派遣)事務手続きについて>「1.事務手続きの手引き・様式等」のところに、大学の海外派遣担当者が提出しなければいけない書類が掲載されています。
ぜひ、1つ1つ、Excelファイルをダウンロードして中身を見てみてください。
例えば、平成28年度海外留学支援制度(協定派遣)登録データ 。
留学期間を数値で入力すると、右の 月別に別れた列に、自動で ○ が入力されていきます。高機能です。「開始月と終了月の合算日数(BF)」列が閏年で計算される不具合」があったようですが、つい先日、修正されたようです。
・・・めまいがしてきませんか?
この他にも、提出すべきExcelファイルは盛りだくさんです。非常に神々しいExcelファイルの数々です。あまりの煩雑さに、毎年、毎月、留学担当者たちは悲鳴をあげているのです。しかも様式が年度によって変わったりするのがまた大変で・・・。
職員だけでなく、学生も大変です。奨学金を受給した学生は、受給期間終了後にいくつかの書類を出す必要がありますが、そのうちの一つがこれ:平成28年度海外留学支援制度(協定派遣)報告書関係様式(様式G~J) 。「様式H-3」というシートをご覧ください。Excelで、横にずーーーっと続くアンケートに回答しなければいけません。小さな正方形の中に回答を入力しないといけないのです。学生はお金をもらっている側なので、文句は言えません。粛々と回答して提出してくれます。
これを提出されて集計する方のJASSO職員の方々も、おそらく相当な苦労をされているはずです。ちなみに大学からJASSOへの提出は、一部は紙で、一部はExcelで、となっているみたいです。
JASSOの留学支援奨学金は、借り手からの返済で成り立っている通常の奨学金と違い、国の予算から直接支出されているものです。なので、きちんと目的に適った利用がされているという証拠を残さねいけません。よって、誰に対して奨学金が支給され、どのような効果があって、という情報を、できるだけ細かく蓄積しておかないとならないのでしょう。
しかし、このような煩雑な書類作成ばかり求められるとなると、大学ではそれなりの数の事務スタッフが必要ですし、JASSOでもスタッフが必要となります。その人件費や、掛けられている膨大な時間をもっと有意義なことに使えるのではと思います。
私は末端のいち担当者なので何の力もありませんが、とにかく、ここにも「 神エクセル問題」があることを知っていただけたら幸いです。
データとして役立たない「神エクセル」問題に解決の兆し 河野太郎議員が文科省へ全廃を指示
これに似た問題が、JASSO(日本学生支援機構)留学支援奨学金関係の神エクセル問題です。すでにどなたかが問題提起されているかもしれませんが、大学で国際交流に携わっている私からも、問題提起させてください。
※ネ申(神)Excelについては三重大学の奥村先生が書かれた論文に詳しいので、そちらを参照してください:「ネ申Excel」問題
JASSO留学支援奨学金とは
JASSO(日本学生支援機構)は、経済的に支援が必要な学生を対象に奨学金を提供している独立行政法人です。JASSOの奨学金は返済が必要であり、実質は学生ローン。奨学金の返済ができずに破産する例が相次ぐなど社会問題となり、平成29年度からは返済不要の奨学金が始まります。実はこのJASSO、通常の奨学金の他に、海外留学をする学生、また海外から日本へ受け入れる学生に対して返済不要の奨学金も支給しています。今回取り上げたいのは、大学間協定に基づく交換留学を支援する奨学金にまつわる書類についてです。
JASSOが提供する神Excelについて
まずは、日本人学生の海外留学を支援する、JASSO(日本学生支援機構)協定派遣のページをご覧ください。http://www.jasso.go.jp/ryugaku/tantosha/study_a/short_term_h/2016.html
平成28年度海外留学支援制度(協定派遣)事務手続きについて>「1.事務手続きの手引き・様式等」のところに、大学の海外派遣担当者が提出しなければいけない書類が掲載されています。
ぜひ、1つ1つ、Excelファイルをダウンロードして中身を見てみてください。
例えば、平成28年度海外留学支援制度(協定派遣)登録データ 。
留学期間を数値で入力すると、右の 月別に別れた列に、自動で ○ が入力されていきます。高機能です。「開始月と終了月の合算日数(BF)」列が閏年で計算される不具合」があったようですが、つい先日、修正されたようです。
・・・めまいがしてきませんか?
この他にも、提出すべきExcelファイルは盛りだくさんです。非常に神々しいExcelファイルの数々です。あまりの煩雑さに、毎年、毎月、留学担当者たちは悲鳴をあげているのです。しかも様式が年度によって変わったりするのがまた大変で・・・。
職員だけでなく、学生も大変です。奨学金を受給した学生は、受給期間終了後にいくつかの書類を出す必要がありますが、そのうちの一つがこれ:平成28年度海外留学支援制度(協定派遣)報告書関係様式(様式G~J) 。「様式H-3」というシートをご覧ください。Excelで、横にずーーーっと続くアンケートに回答しなければいけません。小さな正方形の中に回答を入力しないといけないのです。学生はお金をもらっている側なので、文句は言えません。粛々と回答して提出してくれます。
これを提出されて集計する方のJASSO職員の方々も、おそらく相当な苦労をされているはずです。ちなみに大学からJASSOへの提出は、一部は紙で、一部はExcelで、となっているみたいです。
その背景について推測
なぜこのような 神エクセルが誕生してしまったのか。私はJASSO内部の者ではないので、その背景は分かりませんが、推測はできます。JASSOの留学支援奨学金は、借り手からの返済で成り立っている通常の奨学金と違い、国の予算から直接支出されているものです。なので、きちんと目的に適った利用がされているという証拠を残さねいけません。よって、誰に対して奨学金が支給され、どのような効果があって、という情報を、できるだけ細かく蓄積しておかないとならないのでしょう。
しかし、このような煩雑な書類作成ばかり求められるとなると、大学ではそれなりの数の事務スタッフが必要ですし、JASSOでもスタッフが必要となります。その人件費や、掛けられている膨大な時間をもっと有意義なことに使えるのではと思います。
解決策は?
エクセルを廃止して全てをウェブシステム化…というのが理想かもしれませんが、システム化にはデメリットがつきものです。下手なシステムを作ってしまうと、エクセルよりも作業が煩雑になってしまい、かつ莫大な制作コスト、運用コストがかかります。まずは現状の運用方式での簡素化・合理化、業務フローの見直し、一部のシステム化などから始めてもよいのではと思います。私は末端のいち担当者なので何の力もありませんが、とにかく、ここにも「 神エクセル問題」があることを知っていただけたら幸いです。
2016年12月20日火曜日
ショートカットキーを使うと人生が変わる・・・かも
「ショートカットキー」なるものを、どこかで聞いたことはあると思います。パソコン操作の「切り取り」や「貼り付け」を、マウスの右クリックではなくキーボード操作だけで行うことです。
聞いたことはあるけど、覚えるのが面倒でやっていない、という人が多いのではないでしょうか。
しかし、ショートカットキーを使うのと使わないのとでは、パソコン作業の効率性が大きく変わると言われています。
少し古いですが、2005年のある論文では、Wordの操作(コピー、ペースト、開く、保存など)を1.メニューから選択、2.アイコン操作、3.ショートカットキー利用の3タイプで被験者の反応速度を比較したところ、ショートカットキーを利用した方が効率が良いという結論が出されています。
Hidden Costs of Graphical User Interfaces: Failure to Make the Transition from Menus and Icon Toolbars to Keyboard Shortcuts (2005) by Lane, Napier, Peres and Sándor
ネット上の記事、ブログでもショートカットキーの重要性は盛んに言及されています。ショートカットキーの書籍もいろいろ出ています。
それら全てを使いこなすのは非常に大変ですが、まずはよく使うものから覚えましょう。
ここでは、文書作成ソフトやメールソフトでよく使う、5つのショートカットキーを紹介します。いずれも「Ctrl(コントロール)」を押しながら、アルファベットのキーを押します。Macの場合はCtrlをCommandに代えれば使えます。
1〜5まで、どの操作も頻繁に使いますよね。その時に、1回1回、キーボードからマウスに手を動かして右クリックして・・・だと、効率が悪いです。
また5「保存」のショートカットキーを覚えて、変更を加えたらすぐに保存する癖をつけましょう。頻繁に保存をすることで、「せっかくファイル作ったのにデータが消えた!!」といったうっかりを防げます。
他にもショートカットキーは大量にあります。気になる人は下記のサイトを見ましょう。
仕事の効率がUPする【Windows】基本ショートカットキー40選
私のオススメは、ショートカットキーを ゲームのコマンドと思って覚えること です。ゲームにはまったことがある人なら、格闘ゲームで技を繰り出すコマンドや、裏技のためのコマンドを覚えたと思います。私もパワプロという野球ゲームで、上上下下左右左右スタートという裏技コマンドを覚えて何度も繰り返していました。
要は、仕事をゲームだと思えばいいのです。
ショートカットキーを、いまのステージを早くクリアするために必要な技、そのためのコマンドと思えば覚えられませんか?
ショートカットキーがうまく使えたら「よっしゃ、技が決まったwww」と内心で喜びましょう。
新入社員向けの研修などでショートカットキーが教えられるかもしれませんが、そんなまともに研修を行っているところばかりではないと思います。
学生の間に、レポートや論文を書く機会にショートカットキーを身につけておいたほうがよいです。
聞いたことはあるけど、覚えるのが面倒でやっていない、という人が多いのではないでしょうか。
しかし、ショートカットキーを使うのと使わないのとでは、パソコン作業の効率性が大きく変わると言われています。
ショートカットキーの効率性
ショートカットキーを使うと、パソコン操作の効率性は上がります。少し古いですが、2005年のある論文では、Wordの操作(コピー、ペースト、開く、保存など)を1.メニューから選択、2.アイコン操作、3.ショートカットキー利用の3タイプで被験者の反応速度を比較したところ、ショートカットキーを利用した方が効率が良いという結論が出されています。
Hidden Costs of Graphical User Interfaces: Failure to Make the Transition from Menus and Icon Toolbars to Keyboard Shortcuts (2005) by Lane, Napier, Peres and Sándor
ネット上の記事、ブログでもショートカットキーの重要性は盛んに言及されています。ショートカットキーの書籍もいろいろ出ています。
どんなショートカットキーがあるのか
ショートカットキーは膨大な量があります。Windows、MacなどOSそのもののショートカットキーがあれば、それぞれのソフトに独自のショートカットキーが大量にあります。それら全てを使いこなすのは非常に大変ですが、まずはよく使うものから覚えましょう。
ここでは、文書作成ソフトやメールソフトでよく使う、5つのショートカットキーを紹介します。いずれも「Ctrl(コントロール)」を押しながら、アルファベットのキーを押します。Macの場合はCtrlをCommandに代えれば使えます。
- コピー 「Ctrl」+「C」
- ペースト(貼り付け)「Ctrl」+「V」
- 切り取り「Ctrl」+「X」
- 元に戻す「Ctrl」+「Z」
- 保存「Ctrl」+「S」
1〜5まで、どの操作も頻繁に使いますよね。その時に、1回1回、キーボードからマウスに手を動かして右クリックして・・・だと、効率が悪いです。
また5「保存」のショートカットキーを覚えて、変更を加えたらすぐに保存する癖をつけましょう。頻繁に保存をすることで、「せっかくファイル作ったのにデータが消えた!!」といったうっかりを防げます。
他にもショートカットキーは大量にあります。気になる人は下記のサイトを見ましょう。
仕事の効率がUPする【Windows】基本ショートカットキー40選
ショートカットキーの覚え方
ショートカットキーに慣れていない人は、キーの組み合わせを覚えるのが大変かもしれないです。私のオススメは、ショートカットキーを ゲームのコマンドと思って覚えること です。ゲームにはまったことがある人なら、格闘ゲームで技を繰り出すコマンドや、裏技のためのコマンドを覚えたと思います。私もパワプロという野球ゲームで、上上下下左右左右スタートという裏技コマンドを覚えて何度も繰り返していました。
要は、仕事をゲームだと思えばいいのです。
ショートカットキーを、いまのステージを早くクリアするために必要な技、そのためのコマンドと思えば覚えられませんか?
ショートカットキーがうまく使えたら「よっしゃ、技が決まったwww」と内心で喜びましょう。
まとめ
これほど重要なショートカットキーですが、義務教育の情報の時間には習った記憶がありません。私自身は、なぜか大学1年の英語の授業でショートカットキーの話題が出て、そこではじめてショートカットキーの便利さ、重要性に気づきました。新入社員向けの研修などでショートカットキーが教えられるかもしれませんが、そんなまともに研修を行っているところばかりではないと思います。
学生の間に、レポートや論文を書く機会にショートカットキーを身につけておいたほうがよいです。
2016年12月1日木曜日
大学院生は知っておきたいTransferable Skills について
「高学歴ワーキングプア」が話題となりましたが、今やそれが当たり前の現実、周知の事実になってしまいました。
修士号、博士号まで取得したのに低賃金な仕事しかできない状況は、政府の方針や構造的な問題もありますが、社会が変わるのを待っていても問題は解決しません。
そこで、解決の糸口になるかもしれないキーワード「Transferable Skills」について紹介します。
Transferable Skillsとは?
Transferable Skillsとは、日本語に訳せば「移転可能な技能」となりますが、「別の分野でも通用するスキル」とも言えるでしょう。 大学院まで進学して専門的な技能を身につけても必ずしも社会で直接活かせる訳ではない、というのは日本に限らずどこでも同じです。そこで英国を中心とするヨーロッパ圏では、2000年代くらいからTransferable Skillsというのが言われ始め、専門分野を極めつつも別の領域にも通じるスキルを身につけましょう、という動きが出てきたようです。
この流れについて、以下の論文に詳しく書かれています。
山内, 保典; 中川, 智絵,「イギリスの大学におけるTransferable Skills Trainingの取り 組み : 日本の科学技術関係人材育成への示唆」科学技術コミュニケーション = Japanese Journal of Science Communication, 12: 92-107, 2012 http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/50975/1/JJSC12_007.pdf
この論文の中で、Transferable Skillsの定義については、欧州科学財団 (European Science Foundation) の報告書(2009)から、次のような引用がされています。
「1つの文脈で学んだスキル,例えば,研究を行う上で学んだスキルのなかで,他の状況,例えば,研究であれ,ビジネスであれ,今後の就職先において有効に活用できるようなスキル.Transferable Skillsがあれば,学問領域及び研究関連のスキルを効果的に応用したり,開発したりすることも出来るようになる.このスキルは様々なトレーニングコースを通して学んだり,研究や業務に携わる日々の生活の中で得たりする」ちなみに、研究以外の文脈でもTransferable Skillsというキーワードは使われます。特に転職界隈の話題では「いまの会社・業界だけではなく他社・他業種でも通用するスキル」という意味あいで用いられます。
参考:トランスファラブルスキル(日本の人事部)
どのようにTransferable Skillsを身に付けるか?
日本の大学では、Transferable Skillsという名称は使われていないものの、それに類する個々のスキル開発のコースや授業はそれなりにあるでしょう。「グローバル人材」、「国際交渉能力」、「社会人基礎力」といったキーワードが含まれた科目・コースや、その他なんたら人材育成プログラム系は、Transferable Skillsの考え方に近いものがあると思われます。ただ、やはり専門家育成の比重の方が大きく、Transferable Skillsを念頭に置いた教育プログラムなどは少ないと思います。なので、大学院生は普段の研究活動から、自分で意識的にTransferable Skillsを身につける必要があります。
例えば、次のような活動を通して、Transferable Skillsを身につけられるでしょう。
論文の執筆、共同研究
「いつまでに完了させる」というゴールを設定し、そこから逆算してタスク(資料収集、インタビュー、実験等)を細分化してそれぞれに期限を付け実行する。これはあらゆる仕事をこなす上での基本です。やる気と集中力と才能で何とかなってしまう人もいそうですが、それは一時の勘違いだと思ってください。また、特に文系の大学院の場合は、研究は基本的に一人で行うという場合が多いでしょう。そんな環境でも、共同でプロジェクトに取り組む機会を探しましょう。チームで共同作業を行うことで、プロジェクトマネジメント、リーダーシップの力を身につけることができます。
ディスカッション、プレゼンテーション
分野にもよると思いますが、大学院ではディスカッションやプレゼンテーションを行う演習形式の授業が多いでしょう。ディスカッションの参加者となるだけでなく、議論を導く立場(ファシリテーター)も経験させてもらいましょう。ファシリテーションについては、様々な書籍があるので、参考になります。プレゼンテーションは、場数を踏むほど上手になります。発表資料の作成技術もこの際身につけてしまいましょう。学部生の指導
授業のティーチングアシスタントとして、また研究室の先輩として、学部学生の指導をすることもあるでしょう。面倒かもしれませんが、これは素晴らしい機会です。人材育成の一旦を担っていると自覚して、学部生の学修モチベーションを上げるように活動しましょう。言い方は悪いですが、後輩たちを「実験台」にして、人がどのように育つか(あるいは育たないか)を客観的に観察すると、将来役に立つんじゃないかと思います。他にも語学力、PCソフトの操作スキル、コミュニケーション能力、統計知識など、研究以外の場へも転用可能なスキルを身につけることができるでしょう。これらのスキルを十分に身につければ、アカデミックな世界で行き場がなくなっても、途方にくれる必要がなくなります。
まとめ
私が大学院生のころは、Transferable Skillsなんていう言葉は知りませんでした。が、振り返ってみると、国際学生会議のプロジェクトに参加したり、修士論文を様々な工夫をして(付せんを使ったタスク管理、Evernoteを使った情報整理など)計画的に進めたりしたことで、その後の会社員生活や現在の仕事に活かせるスキルが身についていたと思います。Transferable Skillsの考え方を最初から意識していれば、さらにいろいろな活動に挑戦していたかもしれません。学部生も、もちろんTransferable Skillsを意識することは重要です。ただ学部生が卒業後に働き出し様々な実務スキルを磨くのに対し、学部からすぐに進学した大学院生の場合、数年もその機会を逃してしまいます。いま大学院生のひとは、アカデミックなキャリアを志望するひともそうでない人も、自分の研究活動を通じて、どのようなTransferable Skillsが養われるのか、考えることをおすすめします。
2016年11月29日火曜日
一瞬で大量の情報取得!スクレイピングサービスimport.ioを使ってみる
スクレイピングとは
スクレイピングは、聞きなれない言葉だと思います。スクレイピングとは、Webスクレイピングとは、WebサイトからWebページのHTMLデータを収集して、特定のデータを抽出、整形し直すことである。という意味です(IT用語辞典)。HTMLはウェブサイトを作る言語のことですが、そのHTMLを分析してページの構造を把握し、データを機械的に抽出するという仕組みです。
スクレイピングをやってみる
それでは、スクレイピングでどんなことができるのか、試してみましょう。日本の外務省のプレスリリースを一括で取得することを目標とします。外務省プレスリリース:http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/index.html
ではその手順です。
import.io(https://www.import.io)にアクセスします。登録は無料です。FacebookやGoogleアカウントがあれば、すぐにログインできます。
この画面で、New Extractorを押して、新しいプロセスを作成します。
こんなポップアップが出てくるので、外務省プレスリリースのURLをコピーペーストしましょう。そしてGo。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/index.html
数秒待つと、このような画面が出てきます。データ解析が正常にできたということです。右上のDoneを押しましょう。
こんな画面になります。これで外務省のプレスリリースを取得するというプロセスは設定できました。真ん中あたりのRun URLsを押すと、最新のプレスリリース情報を取得しに行きます。
情報を取得できたら、CSVでダウンロードできます。CSVはExcelで開けますが、日本語だと文字化けするかもしれません。Open Officeというソフトを使うと、文字化けは防げます。
「なんだこれだけか」と思うかもしれませんが、さらにいろいろできます。指定できるURLは1つではありません。例えば、このようにURLを複数指定すれば、数ヶ月分のプレスリリース情報を一括で取得できるのです。
また有料版($249/月〜)にすると、プロセスを動かすスケジュールを設定することができます。例えば、外務省のプレスリリースを毎日自動で取得する、ということもできます。
注意点
- プログラムによるアクセスがブロックされて、スクレイピングができないサイトもあります。
- スクレイピングで取得した情報を利用・公開する時には著作権等に注意する必要があります。
- import.io無料版では、情報取得の回数が1月500回までに制限されています。
他の活用方法
今回は「外務省のプレスリリースを取得する」という例を実行しましたが、他にも次のような活用方法が考えられます。- オンライン書店であるキーワードに関する書籍の一覧を取得する。
- ニュースサイトで毎日ニュースの一覧を取得する。
- 求人情報を定期的に収集する。
- あるページのサムネイル画像だけを取得する(アイドルのファンなんかは活用できそう・・・)。
今すぐに使わなくても、スクレイピングというキーワードは覚えておいて損はないです。
import.io以外のスクレイピングサービスについては、こちらの記事を参照してください。
誰でも簡単!Webページ情報を自動でデータ化できるスクレイピングツール5選
2016年11月22日火曜日
Google Public Dataを使ってグラフで遊ぼう
レポートやプレゼンテーションにグラフを使いたい時、ありますよね。そんな時にめちゃくちゃ便利なのが、Google Public Dataです。
まさにこの通りで、公開されているデータであれば、様々な組み合わせのデータを簡単にグラフにして表示することができます。
さっそく、活用例を見てみましょう。
グラフ表示の仕方は非常に簡単です。
すると、このようなグラフが表示されます。
グラフ作成画面では、横軸は西暦になっており、つまみを動かして、「直近5年間」、「1990年代」など、期間を自由に調整できます。
上は折れ線グラフでしたが、棒グラフにして他の国々と比較することもできます。
これは「ヨーロッパおよび中央アジア」の域内の一人あたりGDP(2015年)を比較した棒グラフです。中央アジア経済というとイメージもつかず「貧しいんじゃないか」と思う人も多いかもしれません。ただ、中央アジアの中でもカザフスタンなど資源国は一人あたりGDPが高く、数値ではポルトガルなどと大差がないことがパッと見て分かります(もちろん一人あたりGDPが高いからといって市場や社会が成熟しているかというと、そうとは限らないのは言わずもがなですが・・・)。
こういったグラフを材料に、発表やレポートを作っていくことができます。
グラフを作ったら、スクリーンショット(最近は「スクショ」と略しますよね)を撮ってパワポ資料に貼り付ける、リンクをコピペする、ブログなどの場合はHTMLをコピペする、などの方法で資料を 活用できます。
国を入れ替えたり、指標を変えたりしてデータを眺めているだけでも楽しいです。みなさんも、ぜひ遊んでみてください。
また、自分で持っているデータをアップロードしてグラフを生成することもできるようなのですが、まだ試していません。いつの日かいい材料があればやってみます。
Google Public Dataとは
公式サイトには次のように説明されています。Google Public Data Explorer は、大量の公共データから必要なデータを簡単に見つけ出し、分かりやすくグラフ化できるツールです。グラフや分布図で時系列に沿ったアニメーションを表示できるので、世の中の変化を直感的に把握できます。このツールを利用するのにデータ分析の専門家である必要はありません。どなたでも簡単に表示方法を切り替えたり、データを比較したり、みんなと共有したりできます。https://support.google.com/publicdata/answer/1100640?hl=ja
まさにこの通りで、公開されているデータであれば、様々な組み合わせのデータを簡単にグラフにして表示することができます。
さっそく、活用例を見てみましょう。
例
例えば、「中央アジアの経済について調べたい」と思ったとします。グラフ表示の仕方は非常に簡単です。
- Google Public Dataトップから、「世界開発指標」をクリック。
- 指標(「経済政策と債務」>「1人あたりGDP」)と国名(「ヨーロッパおよび中央アジア」>各国をチェック)を設定する。
すると、このようなグラフが表示されます。
グラフ作成画面では、横軸は西暦になっており、つまみを動かして、「直近5年間」、「1990年代」など、期間を自由に調整できます。
上は折れ線グラフでしたが、棒グラフにして他の国々と比較することもできます。
これは「ヨーロッパおよび中央アジア」の域内の一人あたりGDP(2015年)を比較した棒グラフです。中央アジア経済というとイメージもつかず「貧しいんじゃないか」と思う人も多いかもしれません。ただ、中央アジアの中でもカザフスタンなど資源国は一人あたりGDPが高く、数値ではポルトガルなどと大差がないことがパッと見て分かります(もちろん一人あたりGDPが高いからといって市場や社会が成熟しているかというと、そうとは限らないのは言わずもがなですが・・・)。
こういったグラフを材料に、発表やレポートを作っていくことができます。
グラフを作ったら、スクリーンショット(最近は「スクショ」と略しますよね)を撮ってパワポ資料に貼り付ける、リンクをコピペする、ブログなどの場合はHTMLをコピペする、などの方法で資料を 活用できます。
まとめ
Google Public Data、めちゃくちゃ便利です。公開されているデータなら、わざわざ元データを参照してExcelでいちからガリガリグラフを作るのが馬鹿らしくなります。国を入れ替えたり、指標を変えたりしてデータを眺めているだけでも楽しいです。みなさんも、ぜひ遊んでみてください。
また、自分で持っているデータをアップロードしてグラフを生成することもできるようなのですが、まだ試していません。いつの日かいい材料があればやってみます。
2016年10月27日木曜日
簡単!スケジュール自動共有&リマインドサービスをZapierで作る
Zapierとは
Zapierは、いろいろなウェブサービスを連携させて処理を自動化するサービスです。例えば、Twitterにメンションが届いたらSlack(チャットアプリ)に知らせてくれる、instagramで新しい写真を投稿したらDropboxに追加する、Evernoteに新しいノートを作ったらGoogleスプレッドシート行を追加する・・・などの自動処理が、難しい知識なしで簡単に実現できます。連携できるサービスは728種類(2016年10月22日時点。筆者が指で数えた(笑))もあるので、いく通りもの組み合わせで自動処理が実現できます。似たようなサービスにはiftttやMythingsなどがあります。もともとiftttが有名でしたが、最近はZapierが目立って台頭してきました。My thingsは日本のyahooが運営しているサービスなので、日本発サービス(はてな!など)との連携に強みがありますね。
見本
このZapierを使ってどんなものができるか、具体的に紹介します。紹介したいのは、私が運営している「ユーラシアイベントガイド」です。これは、ロシア、中央アジアなど旧ソ連圏に関するイベント(講演会など)をFacebookやTwitter で紹介し、かつTwitterでは開催前日になるとリマインドのツイートをするという、イベント共有サービスのようなものです。こういったイベントの情報は、これまでは様々な情報ソース(メーリングリスト、ウェブサイト、個人のFacebookフィードなど)で紹介されていましたが、それを一元化してより広い層に情報を届けようと狙ったものです。
このサービスの仕組みですが、次のようになっています。
- Google カレンダーにイベント情報を登録する
- Facebook、Twitterでイベント情報が自動で投稿される
- イベント前日になるとTwitterでリマインドの投稿が自動でされる
今回は、これとほぼ同じ機能を持った自動連携機能(「Zap(ザップ)」と言います)をZapierで作ってみましょう。
作ってみよう
準備するもの
- Zapierアカウント
- Facebookページアカウント(無ければ個人のFacebookアカウント)
- Twitterアカウント
- Googleアカウント
おおまかな流れ
おおまかな流れは、次の3ステップです。- Triggerを設定
- Actionを設定
- ZAPをON!
Zapierにログイン
新規登録し、ログインするとこのような画面になりますが、右上の「MAKE A ZAP!」をクリックします。Triggerを設定する
まずどのサービスでどういったイベントが発生したら処理を開始するかを設定します。ここではGoogleカレンダーを選びます。アカウントと連携する
自分のGoogleアカウントとZapierを連携させる設定を行います。Zapierとの連携を許可してください。
Trigger イベントを決める
どんな動作があったら処理を開始するか決めます。New Event Searchの場合は、条件にあったイベントが登録された場合、Event Startはイベント開始の一定期間前になったら、New Eventは新規イベントが登録されたら、という意味です。使用するカレンダーをきめる
Googleカレンダーでは、プライベート用、仕事用、複数のカレンダーを作ることができます。連携に使用する、公開してよいカレンダーを選びましょう。テストする
ちゃんとGoogleカレンダーの情報が取得できるか、テストしてみましょう。この時、カレンダーになんらかのイベントが登録されていないとうまくいきません。テストができたら、Triggerの設定は終わりです。Action を設定する
「カレンダーに予定が登録されたらTwitterでツイートする」という設定をしましょう。アカウントと連携する
この画面でTwitterを選択し、アカウントと連携させます。
Action イベントを決める
「カレンダーに予定が登録されたらTwitterで・・・する」の・・・の部分を決めます。Twitterは、ツイートする、画像付きツイートをする、ユーザーをリストへ追加する、ユーザーを検索する、などのActionができます。ここでは「Create Tweet」を選びましょう。テンプレートを作る
次に、Tweetでどんな投稿をするか、テンプレートの文章を作りましょう。Googleカレンダーと連携した場合、日付、場所、開始時間、件名などを自動で取得できます。それを枠内に並べ、間や冒頭、末尾に文章を加えることができます。テストする
カレンダーから予定を取り込み、ツイートできるかテストしてみましょう。ONにする
Dashboardへ行くと、自分の作った「Zap」一覧があるので、いま作ったZapをONにしましょう。すると、カレンダーに予定を登録すると数分後に自動的にツイートが投稿されるようになります。他の連携
Facebookと連携する場合、新しくZapを設定し、Action の部分をFacebookに変えればいいだけです。Twitterでイベント前日にツイートする場合、はじめのTrigger設定でEvent Startを選び、何日前(または時間単位でも設定できる)にリマインドするか設定しましょう。あとは上記のTwitterの設定と同じです。
注意
無料だと、Zapを3つまでしか実行できない、処理は150回まで、などの制限があります。大量に処理を行う場合は有料プランを契約しましょう。ちなみに「ユーラシアイベントガイド」は無料プランで使えています。まとめ:何ができるか考えてみよう
今回は自動イベント共有サービスの作り方を紹介しましたが、いかがでしょうか?意外と簡単なのではないでしょうか?ZapierではGoogleカレンダー、Facebook、Twitter以外にも色々なアプリと連携しているので、どんな自動処理ができ、そして日々の生活や仕事をどう効率よくできるか、考えてみましょう。何かいい「Zap」を思いついたらぜひ教えてください。
2016年10月13日木曜日
Office365 Education の"Forms"を使ってみよう
はじめに
ウェブサイトを使っていると、よくこのような申込フォームやアンケートフォームを見たことはありませんか?こういった入力フォーム、専門知識や自分のウェブサイトがなくても簡単に作れるのです。
フォーム作成サービスはいろいろありますが、今回はOffice365 Educationの「Forms」という機能を紹介します。
※Office365 Formsは、2017年7月25日以降、Office365 Education以外のOffice 365 Enterprise や Office 365 Business 等でも利用できるようになったようです。
参考:https://blogs.technet.microsoft.com/officesupportjp/2017/09/05/what-is-forms/
Office365とは
Office365は、Microsoftが提供しているクラウドプラットフォームです。簡単に言うと、おなじみのWord、Excel、PowerpointなどのOfficeソフトがブラウザ上で使え、さらに複数のメンバーで共同作業するための便利な機能(ファイル共有やカレンダーなど)を備えているサービスです。中小企業から大企業までいろいろな組織で導入されています。Office365 Education とは
Office365 Education は、Office365を教育機関向けにカスタマイズしたバージョンです。教師や生徒が使いやすいようなサービスを備えています。参照:https://products.office.com/ja-jp/student/office-in-education
Google フォームとの違い
Googleのサービスでも同様のサービスがあり、一般的にはこちらの方が多く使われています。できることは機能的には似ていますが、違いといえば、多くの場合Formsはみなさんの所属している教育機関で正式に採用されているOffice365のいち機能であるのに対し、Googleのフォームは個人的にアカウントを登録して運用しなければならない点です。
個人で(勝手に)ウェブサービスに登録して仕事で使うことは「野良IT」とも言われ、敬遠される会社や組織があります。
情報の扱いに神経質になってきた昨今です。もしOffice365を組織で契約しており、いらぬ心配をしたくない場合はFormsを使ったほうが無難でしょう。
Formsの使い方
ログイン
まず、Office365にログインをします。アプリケーション一覧の中のこのマークがFormsです。クリックしましょう。新規作成
+新規作成をクリックします。タイトルを入れる
一番上の見出しをクリックして、タイトルを変えます。質問を作る
「質問を追加」ボタンを押します。作れる質問の形式はいろいろあります。選択肢
1つしか選択できないタイプか、複数回答可能なタイプか選ぶことができます。質問を編集することができます。また、「サブタイトル」を選んで質問文を補足することができます。解答例を書く時などに使えますね。
テキスト
短いテキスト(一行)か長いテキスト(複数行)か選べます。評価
5段階または10段階評価を選べます。数字選択か星で回答するかも設定できます。日付
日付を回答させることができます。日程調整に便利ですね。クイズ
面白いのがこのクイズ形式です。選択肢をいくつか作り、その中で正解を設定できます。実際のフォームで、外れを選択して送信すると、不正解だと表示されます。小テストなどに使えそうですね。フォームの送信(公開)
右上の「フォームの送信」を押すと、公開の範囲・方法を選べます。公開範囲は、デフォルトでは「組織内のみ」にチェックが入っています。この場合、あなたの組織のOffice365ユーザーのみが、このフォームを見ることができます。
もし外部に公開したい場合は、下の「リンクを持つユーザー」にチェックを入れましょう。
公開範囲を決めたら、リンクURLをコピーします。そしてリンクをメールやウェブサイトに貼り付けます。このリンクをクリックすると、ほかの人がフォームを閲覧し、投稿できます。
または、ソースコードをコピーして、ページに埋め込むことができます。ここは少し専門知識が必要かもしれません。
回答を見る
回答タブをクリックすると、回答が閲覧できます。なんと、自動でグラフになります!Excelファイルで回答をダウンロードする
もしExcelでデータが欲しい場合は、ダウンドーロすることもできます。Excelオンラインと連携させたい場合はこちらの記事を参照してください:Office365: 入力フォームのFormsからExcelファイルへ情報を送る方法は?
まとめ
以上、Formsの使い方を簡単に解説しました。Formsは2016年初頭にサービス公開となったばかりのようで、これからどんどん機能が改良されていくと思います。Office365 Educationユーザーは使ってみて損はないですよ。
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