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2018年4月11日水曜日

日本でキルギス語を勉強するにはどうしたらよいか

キルギス語は、中央アジアのキルギス共和国を中心に話されている言語で、話者数は諸説ありますが500万人程度ではないかと言われています。専門家は現地の発音に合わせて「クルグズ語」と言うこともありますが、ここではより一般的な「キルギス語」と表記しておきます。キルギス語はテュルク系の言語に属しているため、トルコ語、カザフ語、ウズベク語などと文法や語彙の点で共通点が多いです。

そんなキルギス語を日本で勉強したい!という人は少ないと思いますが、 勉強したくなってしまった方を対象に、キルギス語の勉強方法を解説します。

授業・家庭教師

キルギス語は通常の語学スクールでは、まず教えられていません。
しかし、いくつか学べる可能性があります。

東京外国語大学のオープンアカデミー

東京外大の学生でなくとも授業が受けられる「オープンアカデミー」で、キルギス語の講座が開かれることがあります。2016年の8月に、3回の講義として開かれたようです。
2018年も開講される予定でしたが、残念ながら中止となったようです。申し込みが少なかったのでしょうか?

【A1804026】 キルギス語初級Ⅰ【開講中止】

東京(本郷)へ行ける人でないと参加はできませんが、講師のアクマタリエワ・ジャクシルクさんはキルギス語の専門家かつおそらくキルギス語ネイティブなので、費用対効果は高いでしょう。

東京外大のオープンアカデミーは毎夏開かれているので、来年もキルギス語が開講されることを願いましょう。

バークレーハウス語学センター

東京・市ヶ谷にある語学スクールで、キルギス語の講座があります。「受講者の声」があることから見て、実際に実績があるようですね。問題はレッスン単価です。安くても1回(55分)6,900円がかかります。主に、お金に余裕のある人や法人向けですね。

http://berkeleyhouse.co.jp/language/kyrgyz

キルギス人に教えてもらう

キルギス語を勉強したいと思う人は、たいてい何らかのきっかけでキルギスと関係があり、キルギス人の知り合いがいると思います。その知り合いを通じて、良い先生を紹介してもらえばよいのです。先生を見つけたら、他の語学と同じようにカフェや、Skypeを通じてレッスンをしてもらいましょう。

Skypeロシア語レッスンを活用

人件費の安いフィリピンなどの英語圏の人が格安で英語を教える「Skype英会話」が定着していますが、そのロシア語版があります。そしてフィリピン同様に人件費が安いキルギス人が講師をやっているサービスがあります。

話せるオンライン

基本はロシア語を教えるサービスなのですが、ロシア語を勉強する傍ら、キルギス語を教えてもらうのも不可能ではありません。私もこのサービスで少しだけロシア語を習いましたが、講師に「キルギス語も教えられるか?」と聞いたところ「できなくもない」と言っていました(結局時間切れで教えてもらいませんでしたが)。ただ、彼らの多くはロシア語教師であり、キルギス語教師ではありません。またキルギス人には「キルギス語が不得意」な人もいるので、誰もがキルギス語を教えられるわけではありません。

青年海外協力隊に応募する

これは裏技みたいな感じですが、青年海外協力隊に応募してキルギスへの派遣が決まると、派遣前にキルギス語の語学研修を受けることができます。いや、受けなければなりません。

青年海外協力隊は2年間、アジア、アフリカ、中南米などの開発途上国でボランティア活動をするプロジェクトです。配属先国は希望通りにならない場合が多いので、キルギスへ行けるとも限りません。

ただ、青年海外協力隊でキルギスの特に地方へ行った方は、非常にキルギス語ができるようになって帰ってきます。

教科書

授業を受けられれば教材は配られますし、先生がいろいろ紹介してくれると思います。ただ、独学が好きな人や、授業以上にもっと勉強したい、という場合もあるでしょう。そこでキルギス語の教科書を紹介します。とはいっても、日本ではもちろん、現地キルギスでも外国人向けのキルギス語教科書はあまり多くありません。その少ない選択肢の中から、いくつか紹介します。

1. 松下聖/スバゴジョエワ・アセリ/臼山利信「実践キルギス語入門」筑波大学グローバルコミュニケーションセンター(2017)

いきなりですが拙著です。筑波大学で「中央アジアの言語と文化」という科目が開設されており、その中で1学期だけキルギス語を主に教えることになり、授業テキストとして作成したものです。一般には販売されていません。筑波大学などいくつかの大学図書館に所蔵されています。

CiNii 図書 - 実践キルギス語入門

著者の一人である私はテュルク系言語の専門家ではありませんが、キルギスに数ヶ月間滞在している時にキルギス語を勉強したことから、この教科書を書くことになったのです。とはいえ、私だけでは書けないので、キルギス語ネイティブで言語学者・キルギス語教師のアセリさんにだいぶ助けてもらいました。

内容は、キルギス語を全く知らない人を対象に、キルギス語を学ぶ意義や文字、発音から解説しています。また、実際にキルギスでの生活で使う、重要な文法事項に絞った内容にしています。

これを使った独学も不可ではありませんが、説明が不十分な箇所もあるため、教えてくれる人が身近にいた方がいいでしょう。

あと、急いで作ったこともあり、間違いも割とあります。正誤表は必ず参照するように。正誤表が付いていない場合は、本書末尾に記載の著者にメールを送り、正誤表を取り寄せるように。

誰か私の後を継いでキルギス語教科書を作りたい、という意欲がある方がいれば、原稿や経験などいろいろと共有します。

2. ダウレトバエワ・ジャミリャー/ジョルブラコワ・マイラム「日本人継続学習者のためのキルギス語: Жапондор үчүн окуу китеби Кыргыз тили улантуучулар үчүн」(2017)


クラウドファンディングによって制作費を集めて作られた教科書です。初めはキルギス人向けの日本語教科書を作るために費用が集められたようですが、予想以上に集まったために日本人向けのキルギス語教科書も作られたとのこと。

この教科書は「すでにキルギス語の学習経験があり、キルギスでの留学や業務をする予定のある人」向けの教科書です。中身も、日本語での文法解説はほとんど無く、問題文もキルギス語で書かれています。

いきなりこの教科書で勉強するのは難しく、ある程度勉強を進めた学習者が、ネイティブのキルギス語の先生に教えてもらう時に使えると思います。

これも一般に販売されていないので、入手は難しいですが、Google Booksでサンプルが公開されているのでご覧ください。


3. 飯沼英三「キルギス語入門」ベスト社(1995)

日本語で書かれたキルギス語の教科書として、過去に販売された唯一のものでしょう。しかし、出版されたのは1995年と20年以上も前のこと(2001年に再版?されているようです)。入手しようと思っても、絶版になっており、見つけても中古で1万円以上はします。内容も古くなっているので、無理して入手する必要はないです。

ただ、キルギス語の概要をざっと日本語で知れる、というのは良い点です。いくつかの大学図書館には所蔵されているので、気になる人は教科書が所蔵されている図書館に足を運んでみると良いでしょう。

同じ著者の「キルギス語会話」という本もamazonで1万円以上で売られていますが、これは会話集とその音声のみが入っています。フレーズを繰り返して覚えたい場合には良いでしょう。


4. Bakytbek Tokubek uulu“Learn the Kyrgyz Language: Connecting with People and Culture”(2010)


英語で書かれたキルギス語の教科書ですが、日本語・ロシア語で書かれた教科書も含めて、これが外国人向けのキルギス語教科書の中では一番だと思います。300ページ以上あり、全てカラー。写真や図も豊富に使ってあり、非常に分かりやすいです。CDつきで、音声を聞きながらの学習もできます。

ただし、2010年出版のこの教科書も入手が困難になってきています。2016年夏にキルギスへ行った際には、ビシュケクの最も大きい本屋に在庫がありませんでした。2015年まではビシュケクの書店にもあったのですが……。少し前までアメリカのAmazonでも手に入りましたが、もう売られていません。

5. Э.Дж.Мамытова "Кыргызский для начинающих(初心者のためのキルギス語)"(2014)


ロシア語で書かれたキルギス語の教科書で、2014年に出版された比較的新しいものです。音声つきです。文法事項も網羅されており内容的には2の教科書と遜色ないのですが、素っ気ないんですよね。イラストは多少ありますが全て白黒で、写真もほとんどないです。英語よりもロシア語が得意でかつ「キラキラしたアメリカンな教科書より、ぶっきら棒な教科書の方が俄然やる気が出る」という嗜好の方は、こちらがいいと思います。

この教科書は現地へ行かないと買えないでしょう。もしかしたらロシアでも売っているかもしれません。

ちなみにキルギスではロシア語が「公用語」に指定されているので、キルギスへ行くならロシア語も勉強しておいた方がいいです。

6. Хулхачиева "Киргизский язык. Самоучитель(キルギス語独習)"(2017)


最近ロシアで出版されたキルギス語の教科書です。ロシア語をよく知っている人であれば、これで勉強してもよいでしょう。モスクワの大きな本屋さんなどで売っています。
体系的にまとまっていて良いのですが、やはりこの教科書も文字がびっしりで、イラストや写真は一切ないので、若干くらくらしてきます。白黒ではなく、2色刷りです。意欲がある方はぜひ。

なお、本書はロシアで出版された教科書なので、「キルギス語」の表記がキルギス風のКыргызскийではなく、Киргизскийとなっています。この違いはデカイです(わかる人にはわかる)。

辞書アプリ

言語を勉強する上で欠かせないのは辞書でしょう。キルギス語にも 紙の辞書はいくつかありますが、日本だと入手は難しいので、ウェブやスマホアプリの辞書を使うと便利です。

ウェブサイト(PC)

まず、PCで使える辞書サイトでは、次の2つがおすすめです。
  • Эл создук - キルギス語と、対ロシア語・英語・トルコ語の辞書が使えます。辞書だけでなくフレーズ集もあるので、発音を聴いて繰り返す練習もできます。使い勝手もいいですね。一番おすすめ。
  • Translatos - キルギス語と対ロシア語の辞書が使えます。ここの良いところは、キルギス語に近いウズベク語・カザフ語・トルクメン語の辞書も同じところで使えることです。中央アジアの言語をいくつか同時に勉強している人なんかには良いでしょう。

スマホアプリ

上で紹介したЭл создукのアプリバーションです。機能に差はないですが、スマホで使えるだけでも便利ですね。

他にも辞書アプリはあるようですが、私は使ったことがないのでここでは紹介しません。

なお、動詞に限った辞書であれば、キルギス語-日本語の辞書がAmazonで手に入るようです。

まとめ

以上、日本に居ながらキルギス語を勉強する方法をまとめました。

日本にあるキルギス大使館では、数年に一回「キルギス語スピーチコンテスト」なるものが開催されているようです。

第1回日本人キルギス語スピーチコンテスト 開催される - Blog Da
キルギス語スピーチコンテスト | berekenomura

学習歴やレベルは問わないようです。次回はいつ開催されるかわかりませんが、キルギス語を勉強したらぜひぜひ、参加してみてください!

2018年4月5日木曜日

【2018年版】これから大学で働く人に読んでもらいたいIT入門記事


この春から、全国の大学で職員、教員、研究員、コーディネーターなどとして働き始める方はたくさんいると思います。

大学の特徴として、とにかくデスクワーク、ペーパーワークが多いという点があります。Excel、Word、パワポのオンパレードです。なので、何にもまして、Officeソフトを中心にITを活用して、業務を効率的に進める事が重要になります。特に最近は、国公立大学での人員削減や採用抑制が目指されているので、効率化の必要性は高まっています。

正規職員として採用された 方は新人研修などがあるかもしれませんが、教員や研究員、非正規職員にはほとんどないでしょう。分野や研究室にもよりますが、これまで研究一筋で事務仕事など経験がないという方には試練の連続だと思います。

このブログでは、IT系企業を経て大学で働いている筆者が、ITを活用して業務を効率化するための記事をいろいろと書いています。

その中から、まさにこれから大学で働く新任者に役立ちそうな記事を選んで紹介します。

全般・心構え

まずは心構えからです。パソコン仕事が苦手な方は、まず読むことをおすすめします。パソコンを使いこなすのは難しい・・・と思い込まず、「楽をしよう」と認識することが大切だと思います。
わざわざ右クリックしたり、メニューを選択しなくても済む「ショートカットキー」という方法。使ったことのない人は、基本的なものから試しましょう。

Officeソフト

名前のリストとテンプレートをもとに、修了証を簡単に作る方法です。ほかにも宛名印刷、通知文書などにも応用できます。
これもWordの差込印刷機能に似ています。あるリストをもとに、別のシートで何かを一括入力したい時に便利です。

Office365

普通のOfficeソフトではなく、オンラインで使えるMicrosoftのサービス「Office365」を組織全体で契約している、というところも多いと思います。

Office365はWordやExcelをブラウザーで使えるほか、データをクラウドに保存できたり、アンケートフォームを作ったり、業務アプリを作ったり、といった機能があります。これらをうまく活用すれば、仕事をさくさく進めることができます。

まずはフォーム作成機能のFormsについて。フォーム作成はいまや、必須の事務スキルと思います。
Office365には、Skypeの発展版のような、チャットを使ったコミュニケーションツールのTeamsがあります。チームでの作業を迅速にできます。
ちょっと発展的ですが、PowerAppsというソフトを使えば、プログラミング不要で、オリジナルの業務用アプリを短時間で作ることができます。

メール

よくある「ファイルが重すぎてメール添付で送れない!」という場合の対処法。活用する機会があるはずです。これは特に、学生にも知ってほしいです。

ウェブサービス

オフィスワークでよくある、「画像をPDFにしたい!」「PDFを画像にしたい!」「PDFを圧縮したい!」などといった事が、ウェブブラウザだけで簡単にできちゃう、という話。
クラウドストレージのDropboxに、隠れた便利なサービスがあります。多数のひとから、ファイルをアップロードしてもらえるサービスです。レポートや写真の回収に利用できます。
ウェブサービスをたくさん使っていると、大量のパスワードを覚えなければなりません。その煩わしさから解放してくれる便利なサービスがあるのですが、果たして・・・。

小技

使う機会があるかわかりませんが、一応。

発展

本気で業務改善に取り組みたい場合は、次の記事が参考になるかもしれません。意欲のある方はどうぞ。

最後に

紹介した記事は、当ブログに掲載した記事だけなので、ITを使いこなすための心構えで書いたように、Googleで情報を調べたり、体系的に学ぶなどしてスキル向上を目指しましょう。

ここ最近、日本の大学教育や研究環境の危機が叫ばれています。
限られた資源を、研究力・教育力の向上に注ぐ為にも、大学に関わる個々人のスキルアップは欠かせないと考えています。私がこのブログで効率化の記事を色々と書いている理由もこれです。

やたらめったらITを導入すればいいわけではありませんが、こうした知識が少しでも課題解決に役立つことを願います。

最後に、愚痴の記事を一つ。
JASSOが指定するExcelフォーマットが非常に煩雑という件。この記事を書いたおかげか知りませんが、年々、少しずつ簡略化と改善が見られます。

参考文献:

2018年3月28日水曜日

【2018年版】留学生が日本で携帯電話を使う一番いい方法は?

はじめに

文部科学省の方針もあり、日本へ来る留学生の数は増える一方です。筆者は現在、大学で留学生を受け入れる仕事もしていますが、その時によく問題になるのが、留学生の「携帯電話の契約」です。

なにが問題か

では、留学生が日本の携帯電話を使おうとする時に、何が問題となるのでしょうか。筆者の経験上、留学生受入の現場では、おおよそ次のようなことが発生してしまいます。
  1. 留学生が日本へ到着。携帯電話を使えるようにしたいので、とりあえず街の携帯電話ショップ(docomo、au、softbankとか)へ行く。
  2. 田舎のショップだと外国語を話せる店員がいないのでそもそも話が通じない。
  3. 幸い話が通じても、月額料金の高さと契約プランの複雑さ、違約金の高額さに衝撃を受ける。
  4. 結果、携帯電話の契約をあきらめて、自国から持ってきたスマホをWi-Fiのみで運用してなんとか過ごす。
  5. しかし大学から急ぎで何か連絡したいときに電話番号がなくて困る。 すごく困る。 本人も不便。
この流れ、留学生受入担当者にとっては、「あるある〜」といった感じではないでしょうか。

docomo、au、softbankなどの大手携帯キャリアで契約すると、スマホのデータ通信プランだと6,000円以上するのが普通です。「2年契約」がほとんどのため、半年や1年で帰国する留学生は高額な違約金を払わなければいけません。 しかも割引は本体とセットでの契約でなければ効かず、本体代は分割であっても高額・・・。 とならば、お金のない留学生は携帯電話をあきらめても不思議ではありません。

解決策

解決策としては、次の2つが考えられます。
  1. 中古ガラケー+SIM契約
  2. 自分のスマホ+「格安SIM」契約
  3. Softbankのプリペイド携帯「Simply」を契約 ← 追加(2018年版)

1. 中古ガラケー+SIM契約の方法

1つめは、日本にいる間はガラケー(注:日本でしか使えないフィーチャーフォン)を使う方法です。ガラケーは、大手のショップで新品で買うと、非常に高いです。本体代金で3万円以上します。

そこで、中古携帯電話ショップへ行って、ガラケーを購入します。 中古ショップでは、ものにもよりますが、安いものだと900円くらいからあります。

そして中古ショップで購入した端末を、docomo、au、softbankなどのショップへ持って行き、電話回線を契約します。 日本の携帯電話はSIMロックがかかっているのが普通なので、必ずその携帯電話が対応したキャリアへ持って行ってください。

データ通信を使わなければ、月700円台〜使えるプランがあります(注:解約金が必要)。 ただし通話料金は30秒で20円と高いので、なるべく自分からは電話をかけずに、かかってきた時だけ使うようにしましょう。 何回か電話をかけても、だいたい月1,000円~1,500円くらいで収まるはずです。

初期費用(端末代、契約事務手数料)で5,000円、月々1,000円×12ヶ月=12,000円、解約金10,000円とすると、1年でかかる費用は30,000円くらいだと思われます。

これくらいなら、まあまあ払えるんじゃないでしょうか。 インターネットは無料Wi-Fiで何とかするから電話だけでいい、という場合はこの方法でいいでしょう。

参考に、大手3社のガラケー料金プランのリンクを載せます。
あと、大手3社に次ぐY!mobileもガラケープランを提供しています。

補足:プリペイド携帯

日本の携帯は大抵ポストペイド(月額制)ですが、例外的にプリペイド携帯も存在します。ただし、通話料が普通のプランより割高になります。
auとsoftbankがプリペイド携帯を提供していますが、softbankの方が充実しています。

Softbankのプリペイドを使う場合、「Simply」がおすすめです。この記事の3. Softbankのプリペイド携帯「Simply」を契約するを参照してください。

2. 自分のスマホ+「格安SIM」契約

自分のスマホを持っていて、電話だけでなくデータ通信(インターネット)を使いたい、またはデータ通信だけ使いたいという場合は、格安SIMを契約することをおすすめします。

日本はフリーWi-Fiの環境が劣悪です。大都市は多少、フリーWi-Fiスポットは増えましたが、LineやWhats Appなどチャットアプリをよく使う人は、やはりデータ通信のできるSIMが必要でしょう。

格安SIMとは?

格安SIMは、大手通信会社よりもかなり安価に携帯電話やデータ通信の契約ができるサービスのことです。「SIM」とは、携帯電話の通信に必要な小さなICチップのことで、格安SIM会社の多くは、この「SIMカード」単体で販売していることが多いです。

(画像)SIMカード

格安SIMは、大手通信会社の通信インフラを借り受けて、独自のサービスや料金プランを設定してそれぞれのお客さんに提供しています。格安SIMの会社は、ほとんど店舗を持たないかあってもほんの数店舗など、コストを極力抑えています。なので大手よりも格安で通信回線を提供できるのです。

どれくらい安いのか

どれくらい安いのか、比べてみましょう。
月額料金(通話+ネット) 契約期間 解約金 データ通信量 備考
大手通信会社 約6,900 円(機種代込み) 2年 9,500円 2GB ・電話かけ放題
・本体を分割払いで購入した場合は解約時に残債の支払いが必要
格安SIM A社 約1,900円 6ヶ月 8,000円 3GB ・これに電話料金がかかる(20円/30秒)
・電話機本体を用意する必要がある
※契約手数料は除く

上の表は、電話とネットをスマートフォンで利用する場合の料金比較です。前述のように、大手通信会社の契約プランが複雑怪奇なので、あくまで目安、例と思ってください。

大手通信会社と契約する場合は、機種を同時に購入するのが一般的です。上の月額料金は、Nexus5Xを同時購入した場合の料金です。SIMだけでも契約できるにはできますが、色々な割引プランが効かなくなります。ガラケーにすれば月額料金は安いのですが、最近のガラケーは本体料金がけっこう高いんですよ。

格安SIMでSIMだけを契約した場合、機種本体は自分で用意する必要がありますが、自国でスマートフォンを持っている場合もあるので、それが日本で使える機種の場合は、わざわざ新たに買う必要はありません。買う必要があっても、最近は1万円台でそれなりに使える機種が見つかります。

どうでしょうか。比べてみると、こんなに差があるんです。

なぜ安いのか

安さにはそれなりの理由があります。一般に、格安SIMのデメリットとしては次のようなことが言われています。
  1. 物理的な店舗の数が少ないので、申し込みやトラブルの相談が不便
  2. 設定を全部自分でやらなければいけない
  3. 通信速度が遅い
  4. 通話し放題プランがない
  5. クレジットカードがないと契約できない場合が多い
1 については、東京、大阪など大きな都市には、家電量販店(ヨドバシカメラやビッグカメラなど)に格安SIMの実店舗があるので、そういう所で契約すればよいでしょう。また、ネットでも契約できます。デジタルネイティブな若い留学生や日本の学生にとっては、ネットでの契約もお手の物でしょう。

2 については、これも若い留学生にとってはさほど苦労しないでしょう。SIMを入れるときに「APN設定」というネットワークの設定をしないと使えません。説明書に書いてある通りに設定すれば大丈夫です。

3 大手通信会社に比べて、通信速度が遅い場合があります。時間帯によって著しく速度が下がる時もあると言われていますが、安いんだからあきらめなさいってことです。最近は、速度については改善されてきています。私も格安SIMを使っていますが、速度の点で不満に思うことはほとんどありません。

4 通話し放題プランが必要な留学生はいるのでしょうか?よほどアクティブなビジネスマンみたいな留学生以外は、それほど自分から電話はかけないでしょう。

5 これだけは問題になるかもしれません。クレジットカードを作って日本に来た学生はよいのですが、日本で留学生がクレジットカードを作ることは簡単ではありません。ただ、銀行振込も可能な格安SIMの会社もいくつかあるので、そういう会社を使うしかないでしょう。

格安SIMのデメリットを見てみましたが、ほとんどの留学生にとって1~4はほとんど問題にならないでしょう。とにかく、使えればよいのです。

格安SIMのサービス

有名な格安SIMのサービスは次のようなものがあります。
格安SIMの普及に伴い、だんだんと料金プランが複雑になってきました。長くなってしまうのでここで比較はしませんが、どのサービスも、データ通信は数百円〜、通話つきの場合は1,000円台後半から、プランがあります。

月々2,000~3,000円くらいは携帯電話に出費してもよいという場合は、こういった格安SIMを契約するといいでしょう。

大都市の家電量販店にはだいたい、これらのSIMカードが置いてあり、その場で契約できます。最近では、筆者の住んでいる田舎のケーズデンキやノジマなどにも、一部の格安SIM(楽天モバイルとか)が販売されています。最近は、取り扱い店舗も増えています。

とりあえず近くの電気やさんに行ってみてください。

3. Softbankのプリペイド携帯「Simply」を契約

日本の大手携帯会社は、一応プリペイド携帯のサービスも提供しています。Softbankとauが提供していますが、おすすめはSoftbankで、「simply」という携帯を契約する方法です。

Softbankの「simply」は、以下のページで紹介されています。

Simply | シンプルスタイル(プリペイド携帯電話) | 製品情報 | モバイル | ソフトバンク

Simplyは、Softbankから2017年12月に発売された、名前の通りシンプルな携帯電話です。できることは、電話、メール、SMS、簡単なインターネットブラウジングくらいです。一応、スマートフォンと同じAndroidがOSとして入っていますが、電話機能に特化されているため、新たなアプリのインストールなどはできません。

機種代金は6,458円で、4,000円分のチャージが付いてきます。契約事務手数料・機種変更手数料が3,000円かかるので、初期費用は1万円くらいと思っていいでしょう。

プリペイドなので、その都度チャージが必要です。通話料金などについてはこちら

通話料は8.58円/6秒です。30秒あたり約43円なので、よくある通話料金の2倍以上です。まあ、プリペイドなので仕方がないでしょう。

留学期間が終わったら、携帯電話本体はSIMロックを解除して、買取店やメルカリなどのフリマアプリで売ることができます。次に留学しにくる別の学生に譲ってもいいですね。

結論

以上、見てきたとおり、月々1,000円、2,000円くらいでも携帯電話が使えることを紹介しました。

日本の携帯電話契約はとにかく複雑なのですが、留学生をサポートする人たち(学校の教職員やまわりの学生)が、ガラケープランや格安SIMについて基本的な仕組みや主なサービスを覚えておいて、留学生におすすめするようにした方がいいと思います。

とにかく留学生には、電話番号くらいは持っていてほしいのです。

SIMカードはamazonから買うと、契約手数料(3,000円程度)が無料になるようです。表示価格が300円とか非常に安く見えますが、もちろん月額料金は別途かかります。また、購入したらすぐSIMが届くのではなく、パッケージの指示にしたがって、各会社のサイトから登録する必要があります。日本語がよくわかる人でも難易度高めかもしれません。

2017年9月10日日曜日

幻想を捨てて戦略を持とう:常見陽平『「就活」と日本社会ー平等幻想を超えて』


日本型就活は死ななくてもよい:海老原嗣生『お祈りメール来た、日本死ね』に引き続き、就活関係の本です。

常見陽平氏は現在、千葉商科大学専任講師。「若き老害」を自称し、様々なメディアで就活問題、労働問題などについて発信している方(そして時々、炎上している)なので、名前を知っている方も多いと思います。

著者本人のウェブサイトには、次のようなプロフィールが掲載されています。
プロフィール】常見陽平(つねみようへい) 身長175センチ 体重85キロ 千葉商科大学国際教養学部専任講師/いしかわUIターン応援団長 北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。 専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。
http://www.yo-hey.com/ より。

そんな常見氏による就活についての新書です。


本書の特徴

常見氏の就活に関する著作はたくさんあります。『くたばれ!就職氷河期  就活格差を乗り越えろ 』(2012)、『就活の神さま~自信のなかったボクを「納得内定」に導いた22の教え~』(2011)などです。

その中で本書の特徴は、「就活」を社会学的な視座からも捉えようとしていることにあるのではと思います。

というのも、もともと著者は学部卒後、企業勤務を経て言論活動を行っていましたが、それと並行して大学院へ入学し、修士号を取得しています。本書は、修士論文での研究成果の一部を取り入れて、学術的な視点とジャーナリズム的な視点を織り交ぜて書かれています。

そのため、多くの先行研究や統計データが参照され、印象論や経験談に頼らない内容となっています。一方、完全な学術書でもないので、ウェブ記事などで見かける著者の 持ち味が出ている面白さもあります。

「就活」を取り巻くデータと研究史

本書は4章構成となっています。
  • 序章 日本の「就活」をどう捉えるか
  • 第1章 「新卒一括採用」の特徴
  • 第2章 採用基準はなぜ不透明になるのか
  • 第3章 「新卒一括採用」の選抜システム
  • 第4章 「就活」の平等幻想を超えて
第1章〜第3章は、統計データや先行研究を参照しながら「就活」を取り巻く歴史と現状を明らかにしています。そして第4章が著者のオピニオン、という構成です。

就活を論じるマスメディアの記事や新書は多いものの、学術的な視点からまともに「就活」を取り上げたものはあまり見かけないため、第1章〜第3章まで目を通すだけでも、だいぶ参考になるのではと思います。

マスメディアで「通説」のように語られていることも、データを確認して検証しています。

例えば、「欧米では新卒一括採用なんて存在しないから、在学中に就活することはない」という通説があります。しかし実際のところは、欧州でも約4割が在学中に就職活動を行っていることが統計をもとに紹介されています(p.64)。

また、いわゆる「学歴フィルター」についても取り上げられています。「学歴フィルター」とは、企業が応募者の出身大学の入学難易度(偏差値)によって選考にフィルターをかける、と言われている仕組みのこと。企業への応募要件には出身大学の制限などは書かれておらず、どんな大学出身でも公平に選考されると思いきや、有名大学でなければ企業説明会にすら参加できない・・・ということも巷では言われています。

本書では、この「学歴フィルター」を先行研究に基づいて検証しています。 実は、大学によってその後の就職がどう左右されるかという研究は、「トランジション研究」(学校から職業への移行に関する研究)ということで、教育社会学や労働社会学の分野で繰り返し行われてきたとのこと(p.24)。

こうした研究から、大手企業が有名大学に対して採用枠を設けていたり、大学名を基準に採用活動を行っている面がある事実は確認されています。ただし採用には様々な類型があり、企業規模や採用時期によっては大学名の基準が変動する(よりオープンになる)ことがあると、第3章では指摘されています。

最後に:幻想を捨てて戦略を持とう

本書の副題「平等幻想を超えて」にある通り、日本の「就活」には誰もが大手優良企業に就職できる公平なチャンスがあるかのような平等幻想を描いてしまい、そのために求職者(学生)も企業も膨大な手間とコスト、精神的な負担がかかって消耗している現状を、著者は指摘しています。

そして、第4章の最後を、著者は次のように結んでいます。
もう、平等という幻想にしがみつくのはやめよう。競争が平等でないということに気づこうではないか。(中略)平等ではないことを受け入れることで、弱者は弱者なりの生存戦略を考えようではないか。(p.205)
確かに、その通りだと思います。

企業就職する場合は、どんな人でもこういった戦略的思考は持った方がいいでしょう。巨大な資本を抱えた大企業のマーケティング戦略と小資本の中小企業のマーケティング戦略が全く異なるように、自分の所属大学や持っているスキル(これから持ちうる、持ちたいスキル)をもとに、戦略的な思考で就職先を考えることは重要です。

ただ難しいのが、はじめから頭で考えることばかりしていると、自分で自分の可能性を狭めたり、チャンスを逃す可能性もあります。ひょんな縁から就職が決まるということもありますからね。

また、こういった就活の戦略を、就業経験のない学生が就活時期になってから考え始めるなんて、無茶なことです(だから極度に消耗する)。大学入学後の早い時期から、戦略を考えるチャンスを、大学や周囲が作ってサポートする必要があると思います。

逆に企業側も、平等を装って採用活動を行うのは、大きなコストになっています。余裕のある大手企業はともかく、中小企業や無名な企業は、就職ナビなどに頼って応募者を集めるよりは、有名大学よりも質の高い教育を行っている大学を狙い撃ちにするとか、地方自治体と連携して既卒者にアプローチするとか、様々な手法があります。

最後に、本書でいう「就活」は、日本での企業就職を目指す健康な大卒者(おそらく主に学部卒者が中心)が行う求職活動のことを指しています。この他にも求職活動、労働の形には様々な立場に立ったものがあるため、今後の研究で、現状では範疇外になっている点も含めて「就活」問題を追求してくれることを願います。

2017年7月31日月曜日

日本型就活は死ななくてもよい:海老原嗣生『お祈りメール来た、日本死ね』



「2018年卒の就職活動も終盤になってきた」ーなんていう表現は、極めて日本的なものでしょう。2018年春に卒業する学生は、おおよそ2017年の3月から会社説明会へ参加して志望する企業へエントリーし、6月ころから選考が始まり、8月、9月には内定を得て、進路を決める。10月には内定式、2018年4月には入社・・・これが、日本的就職活動の模範的なスケジュールとなっています。

徹底解説! 2018卒 就活スケジュール - 就活支援 - マイナビ2018

こうした就職活動は、日本型新卒一括採用の特徴(大概において「弊害」)として語られることが多くあります。

本書、『お祈りメール来た、日本死ね ー「日本型新卒一括採用」を考える』は、その日本の大卒者の就職活動と日本型新卒一括採用の「光と陰」を取り扱った新書です。


タイトルにある通り、2016年にネットの書き込みから話題となった「保育園落ちた、日本死ね」をもじっています。文体はあえて軽く書かれているのだと思いますが、扱っている内容は至って真面目です。

内容を、かいつまんでお話します。

就活の悩みは戦前からの100年論争

「就活」に関しては、様々な問題がメディアでクローズアップされています。非個性的なリクルートスーツ、画一的な面接ノウハウ、既卒者の不利な扱い、圧迫面接、就活による学業への影響・・・等々。

これだけの問題が報じられていることから、就活問題というのは最近の現代的な問題のように感じられますが、歴史をひもとくと100年近く前、戦前からも続く、歴史の長い問題なのです。

それが、冒頭の第1章から解説されています。

特に問題となってきたのが「就活時期」の問題で、1928年にはじめての「就職協定」が当時の大手企業によって作られて以後、景気状況によって破られたり、ころころと時期が変わったりを繰り返して今に至っています(p.27参照)。

かつては、大学進学率は今ほど高くなかったので、大卒者の就活というのはごく限られた人の問題だったのでしょう。しかし、大学進学率が50%を超えた今、就活は多くの人が直面する問題となっています。また、グローバル化が進む中で、企業経営の観点からも新卒一括採用が見直されつつあります。そのためメディアでも大きく取り上げられ、「現代特有の」問題というように認識されているのだと思われます。

欧米型採用の闇

タイトルから想像すると、本書は日本型一括採用とそれに合わせた就活を批判する内容かと考えがちですが、それは違います。

欧米型採用の光と闇、特に闇の部分を紹介し、その上で日本型採用と比較しています。
欧米では日本のような新卒一括採用ではなく、在学中から長期インターンシップなどに取り組み、卒業後も期限付きのポジションなどで実務経験を積んだ上で採用されるというのが大半です。

この形式だと、新卒も既卒も関係なく公平に実力で採用される、採用されるために高いモチベーションで専門性を身につけられそうだ、企業にとっても即戦力を採用できる・・・といったメリットが思い浮かびます。

では欧米型採用の闇とは何なのでしょうか。

一例として紹介されているのが、インターンシップが「雇用の調整弁」として、つまり格安の労働力として使われているという点です。

本書で紹介されているのはフランスの例。一部のエリートにはそれなりの給料が支払われるようですが、ノンエリートがインターンシップ(実習期間)で手にできる給料は、なんと最低賃金の3分の1程度。日本円でいうと月5万円程度だそうです。

欧米では解雇がしやすい、というイメージがありますが、実際のところは日本以上に解雇規制が厳しい所もあります。なので、格安で短期間雇えるインターン生は、企業にとって都合の良い存在なのです。

著者は次のように言い切っています。
そう、欧州のインターンシップは、企業にとって使い勝手の良い雇用調整弁という側面がある。だから企業はインターン生を重用する。あちらの国でも、決して社会貢献や企業の社会的責任のみで受け入れているわけではない。(p.127)
それでも大半はインターンで実務経験を積まないと望むような職につけないため、みなインターンシップに取り組むわけです。なお日本によくあるような職業体験的なインターンシップではなく、普通の業務に取り組みます。

まとめ:日本型就活はこれでいいの・・・か?

欧米的な採用環境で、厳しい条件でインターンシップをし、必死で実務経験を積んで職につく・・・そしてその先も、エリート候補以外は一定以上には出世できず、より良い条件の仕事に就くためには転職や学び直しを繰り返す。

そういった環境と、日本型就活を経て新卒入社し、企業研修で育ててもらい、熾烈ではあるが誰もにチャンスがある(ように見える)出世レースに参加するか。

そのどちらが良い・悪いというのは著者は述べていません。2つを比較した上で、日本型新卒一括採用と日本型就活に対する改善策を提案しています(その内容は本書内でお読みください)。

私も、どちらが良い悪いという問題ではないと思います。それに、就活を経て企業就職する以外に、公務員、教員、起業、家業を継ぐ・・・など、キャリアの選択は色々あります。

1つ言いたいのは、日本型就活のメリットは活用できる余地がある ということです。

何の実務経験もない学生を、専門性もさほど問われずに正社員として採用してもらえるだなんて、ノンエリートの欧米の学生からみたら垂涎ものでしょう。

実際に私も、人文系が専門だったにも関わらず、新卒エンジニアとして採用してもらえました。欧米であれば、履歴書だけで完全に門前払いだったでしょう。

日本型就活は確かにプレッシャーも大きく大変だと思いますが、その幸運な環境を活かしたい人にとっては絶好の機会ではあるので、自分自身のために 「就活とやらを大いに利用してやるぞ」ぐらいの大きな気持ちで望んでもよいのではないでしょうか。

2017年3月28日火曜日

「21世紀型スキル」はしんどい

画像は21世紀型スキルとは関係ありません。

「21世紀型スキル」という用語が、ここ数年、教育関係の中でもバズワード(流行語)のようにして広まっています。これについて、思ったことをまとめてみました。タイトルの通り「21世紀型スキルはしんどい」のでは、という話です。

「21世紀型スキル」とは

21世紀型スキルとは、「21世紀を生き抜くために育むべき能力」のことです。
21世紀型スキルには唯一絶対の定義があるわけではなく、様々な団体が定義付けを試みています。

よく引用されるのは、国際団体ACT21sが定義している「21世紀型スキル」です。
思考の方法
  • 創造力とイノベーション
  • 批判的思考、問題解決、意思決定
  • 学びの学習、メタ認知
仕事の方法
  • 情報リテラシー
  • ICTリテラシー
仕事のツール
  • コミュニケーション
  • コラボレーション(チームワーク)
社会生活
  • 地域とグローバルのよい市民であること
  • 人生のキャリア発達
  • 個人の責任と社会的責任
(上記訳は、人工知能に負けない子ども、どう教育するかより。)
(ところでこれを提唱したACT21sのウェブサイトは閲覧できない状態になっていますし、2015年ころ以降の情報がネット上では見当たりません。解散したのでしょうか。)
また、OECDは、非常に分厚い報告書で「21世紀に必要なスキル」を詳述しています。

Chapter 1: The skills needed for the 21st century

アメリカのウォルト・ディズニー社やフォード社がメンバーとなっているP21(Pertnership for 21st century learning)という組織にも定義付けがあります。

FRAMEWORK FOR 21ST CENTURY LEARNING

おおよそどこの団体も、ACT21sと同様のことを提唱しています。つまり、単純に教科の知識を得るだけでなく、個人の高度な思考能力(批判的思考能力など)、さらに価値観の異なる人々と協働し、情報技術を活用して、イノベーションを起こす能力・・・などが求められているのです。

これらのスキルが「21世紀型」と言われているように、20世紀を生きるためには、多くの人にとって必ずしも必要でない能力でした。20世紀は、言わば「やる気・元気・思いやり」とテストでそこそこいい点数を取る能力があれば、なんとか生きてこれた時代でした。学校教育もそのようにデザインされていました。

しかし21世紀は違う、と。グローバル化の進展により、様々な思想・背景の人たちと仕事をしなければいけない。さらに技術革新で多くの仕事はAI(人工知能)、ロボットに置き換えられてしまう・・・。

そんな時代を生き抜くためには、上述のような「21世紀型スキル」が必要だと言うのです。

21世紀型スキルはしんどくないか?ー「自己再生力」の必要性

教育に携わっている人間が言っていいことか分かりませんが、正直、「21世紀型スキルを身につけるってしんどくないか?」と思ってしまいます。求められる要素が非常に多く、レベルが高いです。「22世紀スキル」は、いったいどんな風になってしまうのでしょうか。気になります。教える方もしんどいです。というよりも、教える側が21世紀型スキルなんて十分に身につけていない場合が多いのです。

しかし、現代〜何年か先の社会が「21世紀型スキル」を求めているというのも現実です。そして、21世紀型スキル(のようなもの)が求められる社会というのは、やはりしんどい社会になりそうです。

そんな時に、どう対処したらいいのでしょうか。

示唆的なのは、リンダ・グラットン氏が未来の働き方について書いた著書『WORK SHIFT』の中で提唱している「自己再生のコミュニティ」の必要性です。


未来の働き方は、今以上に時間の使い方が細切れとなり、バーチャルな空間での仕事が多くを占めるようになる。そうなると、必然的に孤独感と強いストレスが蓄積されていきます。グラットンは、そのことを前提として、バーチャルなコミュニティに頼らない、リアルな場で幸福感を高めてくれるつながりが必要だ、ということを主張しています。
自己再生のコミュニティのメンバーとは、現実の世界で頻繁に会い、一緒に食事をしたり、冗談を言って笑い合ったり、プライベートなことを語り合ったりして、くつろいで時間を過ごす。生活の質を高め、心の幸福を感じるために、このような人間関係が重要になる。
リンダ・グラットン著(池村千秋 ・訳)『WORK SHIFT』p.309-p.310

一見、「友達は大切だ」「家族は大切だ」というような、当たり前のことのように感じます。しかし、その当たり前のことが、未来の働き方をしていると、どんどん自明のことではなくなっていくのです。グラットンは次のように書いています。
重要なのは、自分で選択して、そういう人間関係を築くことだ。この種の温かい人間関係が当たり前のように手に入る時代が終わり、意識的に自己再生のコミュニティを築く必要が増すのだ。
前掲書 p.310

話を21世紀型スキルへ戻すと、21世紀型スキルが求められるような職業というのは、『WORK SHIFT』に書かれているような、高い能力が求められ、時間に追われ、放っておくと心身を消耗するような仕事のはずです。

それを前提として、グラットンの言うような「自己再生のコミュニティ」、あるいは個人としての「自己再生力」の必要性についても、21世紀型スキルとの関連で教えるべきだと思います。

具体的にどう教えるべきかというのは別の機会に考えたいのですが、ともかく、一方的に能力の伸長を求めるばかりではしんどいので、そのしんどさを乗り越えるための方策も、今後の学校教育と家庭教育の中に意識的に取り入れていかなければならないはずです。

まとめ

21世紀型スキルの概念と、それに関連して自己再生力の必要性について書きました。

グローバル人材育成系のプログラムに多少関わっている身としては、21世紀型スキルについて事例など調べて掘り下げるとともに、自己再生というキーワードも考えていきたいと思います。

2017年1月9日月曜日

manabaはなぜダメなのか

突然、煽るようなタイトルですみません。
manabaは株式会社朝日ネットが提供するLMS(Learning Management System)、ポートフォリオシステムです。ここ10年以内くらいに大学や専門学校を卒業した方であれば、何らかのシステムにログインして課題を提出したり、出席を記録したりしたことがあるかもしれません。manabaもそんなシステムの一種です。どんなシステムかは、公式サイトの紹介をご覧ください。

教育支援サービス 「manaba」|株式会社朝日ネット


manabaの画面イメージ(公式サイトより)


慶応義塾大学、中央大学、国際基督教大学など、多くの大学がこのmanabaを導入しています。私の勤務先も導入しています。日本では、moodleと並んで最もよく使われるLMSの1つではないかと思われます。

このmanabaを使うことで、学習の成果を1箇所にまとめることができる(ポートフォリオ)、学生同士・または教員との授業前後のインタラクティブな学習が可能になる、などといった効果が期待できます。

manabaのがっかりなところ

さて、そんなmanaba。私も活用しています。ないよりはあった方がいいのですが、個人的にがっかりな点がいくつかあるので、あえて指摘します。

1. スマートフォンアプリがない

manabah「モバイル対応」をうたっていますが、あくまでスマートフォンのブラウザから閲覧できる、という意味です。iOS、Androidアプリはありません。スマートフォンのブラウザでmanabaへアクセスすると、スマートフォン用のmanabaページが表示されます。これをショートカットとしてスタート画面にアイコンを配置すれば、あたかもアプリのように使えます。が、誰もがその方法を知っているとは思えませんし、単なるショートカットなのでアプリのようなプッシュ通知はありません。やはり今の時代、モバイルアプリは必須だと思います(もしかしたら開発中かもしれませんね)。

2. インターフェイスがひと昔まえ

決して分かりづらいわけではないですが、ユーザーインターフェイスとデザインがひと昔前のウェブを彷彿とさせます。例えるなら、mixi的なインターフェイス、デザインです(皆さん、mixiって覚えていますか?そもそも知っていますか?)。manabaがリリースされた年代からいって、mixiを意識していたんじゃないかと思います。ただ、時代は進みましたので、FacebookやTwitter、LINEなんかに慣れた学生世代からすると、直感的に使いづらく、ややとっつきにくいインターフェイスではないでしょうか。

3. コメントのやりとりが気軽にできない

LMSを導入する狙いとして、学生同士または教員とのインタラクティブなコミュニケーションを促進し、学生の主体的な学習を促すことが挙げられます。しかしmanabaでの交流は、私が見る限り活発に行われている例はあまりありません。manabaでのコメントのやりとりは「掲示板」形式です。話題ごとにスレッドを立てて、それに返信を書いていく、という形です。スレッドはツリー状になっていきます。この形式もやはり、最近のフィード に次々と投稿が流れてくるSNSに慣れた世代には使いづらく、どうやって使ったらいいのか躊躇するレベルだと思います。mixi世代にとっても、もはや使いづらいです。せっかくのLMSの狙いが実現できていません。

1~3の理由があってか、いまいちmanabaは定着していません。定着させるには、教員、学生ともにかなりの努力が必要になります。

manabaをやり玉にあげたような形ですが、他のLMSも似たり寄ったりの状況か、manabaよりも悪いかもしれません。manabaはモバイルアプリは無いとはいえ、ブラウザでのスマートフォン対応はしています。私は他のLMSでは数年前のmoodleしか使ったことはありませんが、当時はスマートフォン対応なんて皆無でしたね。moodle、今はスマートフォン対応されているのでしょうか?

manabaへの要望

がっかりなところ1~3を踏まえて、個人的なmanabaへの要望をまとめてみました。

1. モバイルアプリ(iOS、Android)の開発

朝日ネット社は、関連サービスとしてモバイルアプリのmanaba +responをリリースしているくらいなので、モバイルアプリを作る技術力は確かにあるはずです。あくまで推測ですが、manaba本体にモバイルアプリがない理由は、導入先の学校ごとに微妙なカスタマイズがされていたりして、モバイルアプリの仕様を統一するのが難しいからじゃないでしょうか?逆に、そのような障壁がなければ、モバイルアプリは一刻も早く開発した方がいいと思います。今なら、国産LMSとして不動の地位を築けます。

2. コメント形式をフィード式に&「いいね」ボタンの導入

がっかり3で指摘した点に関して。フィードバックを促進するためにも、FacebookやTwitterなどを参考に、フィード上にコメントが流れてきてその場ですぐに返信できる形式にすべきです。また「いいね(Like)」ボタンを導入し、もっと簡単にポジティブなフィードバックをできるようにすることを提案します。発言や課題提出に対して、無反応よりも「いいね」を押された方が、学生のモチベーションはぐっと上がるのではないでしょうか。

3. ユーザーインターフェイスやデザインの見直し

manabaにはmanabaなりの「設計思想」があると思いますが、モバイルアプリのリリースに合わせて、モバイル優先の設計思想に変えてはどうでしょう。現在のmanabaは明らかにPCでの利用を前提としています。しかしmanabaで出来ることを考えると、今のタブレットやスマートフォンで出来ないことはほとんどありません。スマートフォンでレポートを書く学生がいる時代です。モバイル優先で直感的に操作できるインターフェイスにすれば、利用率は大幅に上がるのではないでしょうか。

4. APIの開放

ちょっと専門的な話ですが、APIを開放して欲しいな、と思います。APIとは、システムの機能を外部からのアクセスで活用できるようにする仕組みのことです。例えば、Twitterに何か投稿したら同じ内容をFacebookにも投稿する、といった機能を使ったことがあるかもしれませんが、これもAPIです。TwitterとFacebookがAPIを開放することで、相互連携が可能になっているのです。

この仕組みをmanabaにも導入したら、多くの可能性が開けると思います。例えば、レポートの提出締切を登録したらそれがGoogleカレンダーにも自動で同期されるとか、コースの掲示板に書き込んだら外部のメーリングリストに流してくれるだとか、そういった連携が可能になります。さらにAPIを活用すれば、独自の教育アプリケーションも開発できるようになります。

さいごに

manabaに対して苦言を呈す形になってしまいました。しかしこれも、manabaに大きな期待を持っているがゆえの提言です。素晴らしいLMSに成長し、日本の教育を伸ばすツールとなってほしいと、心から願っています。