2017年1月9日月曜日

manabaはなぜダメなのか

突然、煽るようなタイトルですみません。
manabaは株式会社朝日ネットが提供するLMS(Learning Management System)、ポートフォリオシステムです。ここ10年以内くらいに大学や専門学校を卒業した方であれば、何らかのシステムにログインして課題を提出したり、出席を記録したりしたことがあるかもしれません。manabaもそんなシステムの一種です。どんなシステムかは、公式サイトの紹介をご覧ください。

教育支援サービス 「manaba」|株式会社朝日ネット


manabaの画面イメージ(公式サイトより)


慶応義塾大学、中央大学、国際基督教大学など、多くの大学がこのmanabaを導入しています。私の勤務先も導入しています。日本では、moodleと並んで最もよく使われるLMSの1つではないかと思われます。

このmanabaを使うことで、学習の成果を1箇所にまとめることができる(ポートフォリオ)、学生同士・または教員との授業前後のインタラクティブな学習が可能になる、などといった効果が期待できます。

manabaのがっかりなところ

さて、そんなmanaba。私も活用しています。ないよりはあった方がいいのですが、個人的にがっかりな点がいくつかあるので、あえて指摘します。

1. スマートフォンアプリがない

manabah「モバイル対応」をうたっていますが、あくまでスマートフォンのブラウザから閲覧できる、という意味です。iOS、Androidアプリはありません。スマートフォンのブラウザでmanabaへアクセスすると、スマートフォン用のmanabaページが表示されます。これをショートカットとしてスタート画面にアイコンを配置すれば、あたかもアプリのように使えます。が、誰もがその方法を知っているとは思えませんし、単なるショートカットなのでアプリのようなプッシュ通知はありません。やはり今の時代、モバイルアプリは必須だと思います(もしかしたら開発中かもしれませんね)。

2. インターフェイスがひと昔まえ

決して分かりづらいわけではないですが、ユーザーインターフェイスとデザインがひと昔前のウェブを彷彿とさせます。例えるなら、mixi的なインターフェイス、デザインです(皆さん、mixiって覚えていますか?そもそも知っていますか?)。manabaがリリースされた年代からいって、mixiを意識していたんじゃないかと思います。ただ、時代は進みましたので、FacebookやTwitter、LINEなんかに慣れた学生世代からすると、直感的に使いづらく、ややとっつきにくいインターフェイスではないでしょうか。

3. コメントのやりとりが気軽にできない

LMSを導入する狙いとして、学生同士または教員とのインタラクティブなコミュニケーションを促進し、学生の主体的な学習を促すことが挙げられます。しかしmanabaでの交流は、私が見る限り活発に行われている例はあまりありません。manabaでのコメントのやりとりは「掲示板」形式です。話題ごとにスレッドを立てて、それに返信を書いていく、という形です。スレッドはツリー状になっていきます。この形式もやはり、最近のフィード に次々と投稿が流れてくるSNSに慣れた世代には使いづらく、どうやって使ったらいいのか躊躇するレベルだと思います。mixi世代にとっても、もはや使いづらいです。せっかくのLMSの狙いが実現できていません。

1~3の理由があってか、いまいちmanabaは定着していません。定着させるには、教員、学生ともにかなりの努力が必要になります。

manabaをやり玉にあげたような形ですが、他のLMSも似たり寄ったりの状況か、manabaよりも悪いかもしれません。manabaはモバイルアプリは無いとはいえ、ブラウザでのスマートフォン対応はしています。私は他のLMSでは数年前のmoodleしか使ったことはありませんが、当時はスマートフォン対応なんて皆無でしたね。moodle、今はスマートフォン対応されているのでしょうか?

manabaへの要望

がっかりなところ1~3を踏まえて、個人的なmanabaへの要望をまとめてみました。

1. モバイルアプリ(iOS、Android)の開発

朝日ネット社は、関連サービスとしてモバイルアプリのmanaba +responをリリースしているくらいなので、モバイルアプリを作る技術力は確かにあるはずです。あくまで推測ですが、manaba本体にモバイルアプリがない理由は、導入先の学校ごとに微妙なカスタマイズがされていたりして、モバイルアプリの仕様を統一するのが難しいからじゃないでしょうか?逆に、そのような障壁がなければ、モバイルアプリは一刻も早く開発した方がいいと思います。今なら、国産LMSとして不動の地位を築けます。

2. コメント形式をフィード式に&「いいね」ボタンの導入

がっかり3で指摘した点に関して。フィードバックを促進するためにも、FacebookやTwitterなどを参考に、フィード上にコメントが流れてきてその場ですぐに返信できる形式にすべきです。また「いいね(Like)」ボタンを導入し、もっと簡単にポジティブなフィードバックをできるようにすることを提案します。発言や課題提出に対して、無反応よりも「いいね」を押された方が、学生のモチベーションはぐっと上がるのではないでしょうか。

3. ユーザーインターフェイスやデザインの見直し

manabaにはmanabaなりの「設計思想」があると思いますが、モバイルアプリのリリースに合わせて、モバイル優先の設計思想に変えてはどうでしょう。現在のmanabaは明らかにPCでの利用を前提としています。しかしmanabaで出来ることを考えると、今のタブレットやスマートフォンで出来ないことはほとんどありません。スマートフォンでレポートを書く学生がいる時代です。モバイル優先で直感的に操作できるインターフェイスにすれば、利用率は大幅に上がるのではないでしょうか。

4. APIの開放

ちょっと専門的な話ですが、APIを開放して欲しいな、と思います。APIとは、システムの機能を外部からのアクセスで活用できるようにする仕組みのことです。例えば、Twitterに何か投稿したら同じ内容をFacebookにも投稿する、といった機能を使ったことがあるかもしれませんが、これもAPIです。TwitterとFacebookがAPIを開放することで、相互連携が可能になっているのです。

この仕組みをmanabaにも導入したら、多くの可能性が開けると思います。例えば、レポートの提出締切を登録したらそれがGoogleカレンダーにも自動で同期されるとか、コースの掲示板に書き込んだら外部のメーリングリストに流してくれるだとか、そういった連携が可能になります。さらにAPIを活用すれば、独自の教育アプリケーションも開発できるようになります。

さいごに

manabaに対して苦言を呈す形になってしまいました。しかしこれも、manabaに大きな期待を持っているがゆえの提言です。素晴らしいLMSに成長し、日本の教育を伸ばすツールとなってほしいと、心から願っています。


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