出張でウクライナへ行くことになったので、その前に読んでおく本を探しました。amazonリンクも貼ったので、すぐに買えますよ(時々、リンクがうまく表示されないようです)。
歴史(全体)
ウクライナは世界史の教科書に出てくる「キエフ・ルーシ」の時代から長い歴史を持っています。ウクライナ史の全体像をつかめる本です。- 伊東 孝之・中井 和夫・井内 敏夫 編(1998)『ポーランド・ウクライナ・バルト史 (世界各国史) 』山川出版社
ポーランド、ウクライナ、バルト(エストニア、ラトビア、リトアニア)の歴史を合わせて叙述した一冊です。なぜこの地域を一冊でまとめたかは、読み進めると分かると思います。ウクライナ以外も同時に解説されていることで、各国の史観に偏らずに歴史を考えることができます(ただし、ウクライナだけで項目を立てている箇所も多いので、そこだけ読んでも勉強になります)。
- 黒川 祐次(2002)『物語 ウクライナの歴史―ヨーロッパ最後の大国』中公新書
まだ中身を見てませんが…新書なので手頃で読みやすいと思います。読んだら簡単にレビューします。
現代(現代史・政治)
最近のウクライナ紛争に見られるように、20世紀初頭から現在まで、ウクライナは激動の時代を送っています。その現在進行形の状況とその背景を学べる本を探しました。- ティモシー・スナイダー(2015)『ブラッドランド : ヒトラーとスターリン大虐殺の真実(上)(下)』(布施由紀子訳)筑摩書房
ウクライナ、ベラルーシ、ポーランド、バルト諸国(流血地帯=ブラッドランド)で起こったドイツとソ連による虐殺を扱ったノンフィクションです。この時代の虐殺というと、ガス室送りや銃殺を連想しがちですが、本書で特に扱われる殺害方法は「餓死」です。
p.19「本書が伝えたいこと」には次の記述があります。
ドイツとソ連の殺戮場で使われた殺害方法はむしろ原始的だった。1933年から45年までのあいだに流血地帯で殺された1400万人の民間人と戦争捕虜は、食料を絶たれたためになくなっている。ウクライナでは1930年代にひどい飢饉となり大量の餓死者が出たのですが、それがソ連による「人工的な飢饉」ではなかったかと言われています(これを「ホロドモール」という)。いくつかの政府や国際機関は、この飢饉を「ジェノサイド」または「人道に対する罪」と認定しています。
そして最近では、2014年の暴動に端を発するウクライナ紛争があります。その後のウクライナ情勢は非常に複雑で、偏向のない報道や書籍を探すのは至難のわざです。様々な書籍や報道を見比べていくのがいいと思います。
- 現代思想 2014年7月号 特集=ロシア -帝政からソ連崩壊、そしてウクライナ危機の向こう側 – 2014/6/27
言語
- 中澤 英彦 (2009)『ニューエクスプレス ウクライナ語』白水社
文学
- ゴーゴリ『鼻』
ロシア文学で有名な作家ゴーゴリですが、実はウクライナ出身なんですね。ただし当時はロシア帝国のいち地域でしたし、ウクライナ語ではなくロシア語で小説を書いていました。ウクライナ文学と言えるかは微妙ですが、ゴーゴリ作品に「ウクライナ性」を見出している文学研究者もいます。 ゴーゴリの作品はだいたい短く、ロシア文学特有の重々しさはあまりないので、ぜひ読みましょう。
ゴーゴリ「ディカーニカ近郷夜話」の神話論的分析. ―ゴーゴリのウクライナ性と. ウクライナをめぐるロシアのディスクール. 大野斉子.
- アンドレイ・クルコフ(2004)『ペンギンの憂鬱』(沼野 恭子 訳)新潮社
- アンドレイ・クルコフ(2015)『ウクライナ日記 国民的作家が綴った祖国激動の155日』(吉岡 ゆき訳)ホーム社
『ペンギンの憂鬱』のクルコフが、ウクライナ紛争による激動の日々を綴った作品です。
紹介したい「ウクライナを知るために読んだ方がよさそうな本」は現在のところ以上ですが、いろいろと読んでいくうちに追加、補足があれば修正していきます。
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