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2018年3月28日水曜日

【2018年版】留学生が日本で携帯電話を使う一番いい方法は?

はじめに

文部科学省の方針もあり、日本へ来る留学生の数は増える一方です。筆者は現在、大学で留学生を受け入れる仕事もしていますが、その時によく問題になるのが、留学生の「携帯電話の契約」です。

なにが問題か

では、留学生が日本の携帯電話を使おうとする時に、何が問題となるのでしょうか。筆者の経験上、留学生受入の現場では、おおよそ次のようなことが発生してしまいます。
  1. 留学生が日本へ到着。携帯電話を使えるようにしたいので、とりあえず街の携帯電話ショップ(docomo、au、softbankとか)へ行く。
  2. 田舎のショップだと外国語を話せる店員がいないのでそもそも話が通じない。
  3. 幸い話が通じても、月額料金の高さと契約プランの複雑さ、違約金の高額さに衝撃を受ける。
  4. 結果、携帯電話の契約をあきらめて、自国から持ってきたスマホをWi-Fiのみで運用してなんとか過ごす。
  5. しかし大学から急ぎで何か連絡したいときに電話番号がなくて困る。 すごく困る。 本人も不便。
この流れ、留学生受入担当者にとっては、「あるある〜」といった感じではないでしょうか。

docomo、au、softbankなどの大手携帯キャリアで契約すると、スマホのデータ通信プランだと6,000円以上するのが普通です。「2年契約」がほとんどのため、半年や1年で帰国する留学生は高額な違約金を払わなければいけません。 しかも割引は本体とセットでの契約でなければ効かず、本体代は分割であっても高額・・・。 とならば、お金のない留学生は携帯電話をあきらめても不思議ではありません。

解決策

解決策としては、次の2つが考えられます。
  1. 中古ガラケー+SIM契約
  2. 自分のスマホ+「格安SIM」契約
  3. Softbankのプリペイド携帯「Simply」を契約 ← 追加(2018年版)

1. 中古ガラケー+SIM契約の方法

1つめは、日本にいる間はガラケー(注:日本でしか使えないフィーチャーフォン)を使う方法です。ガラケーは、大手のショップで新品で買うと、非常に高いです。本体代金で3万円以上します。

そこで、中古携帯電話ショップへ行って、ガラケーを購入します。 中古ショップでは、ものにもよりますが、安いものだと900円くらいからあります。

そして中古ショップで購入した端末を、docomo、au、softbankなどのショップへ持って行き、電話回線を契約します。 日本の携帯電話はSIMロックがかかっているのが普通なので、必ずその携帯電話が対応したキャリアへ持って行ってください。

データ通信を使わなければ、月700円台〜使えるプランがあります(注:解約金が必要)。 ただし通話料金は30秒で20円と高いので、なるべく自分からは電話をかけずに、かかってきた時だけ使うようにしましょう。 何回か電話をかけても、だいたい月1,000円~1,500円くらいで収まるはずです。

初期費用(端末代、契約事務手数料)で5,000円、月々1,000円×12ヶ月=12,000円、解約金10,000円とすると、1年でかかる費用は30,000円くらいだと思われます。

これくらいなら、まあまあ払えるんじゃないでしょうか。 インターネットは無料Wi-Fiで何とかするから電話だけでいい、という場合はこの方法でいいでしょう。

参考に、大手3社のガラケー料金プランのリンクを載せます。
あと、大手3社に次ぐY!mobileもガラケープランを提供しています。

補足:プリペイド携帯

日本の携帯は大抵ポストペイド(月額制)ですが、例外的にプリペイド携帯も存在します。ただし、通話料が普通のプランより割高になります。
auとsoftbankがプリペイド携帯を提供していますが、softbankの方が充実しています。

Softbankのプリペイドを使う場合、「Simply」がおすすめです。この記事の3. Softbankのプリペイド携帯「Simply」を契約するを参照してください。

2. 自分のスマホ+「格安SIM」契約

自分のスマホを持っていて、電話だけでなくデータ通信(インターネット)を使いたい、またはデータ通信だけ使いたいという場合は、格安SIMを契約することをおすすめします。

日本はフリーWi-Fiの環境が劣悪です。大都市は多少、フリーWi-Fiスポットは増えましたが、LineやWhats Appなどチャットアプリをよく使う人は、やはりデータ通信のできるSIMが必要でしょう。

格安SIMとは?

格安SIMは、大手通信会社よりもかなり安価に携帯電話やデータ通信の契約ができるサービスのことです。「SIM」とは、携帯電話の通信に必要な小さなICチップのことで、格安SIM会社の多くは、この「SIMカード」単体で販売していることが多いです。

(画像)SIMカード

格安SIMは、大手通信会社の通信インフラを借り受けて、独自のサービスや料金プランを設定してそれぞれのお客さんに提供しています。格安SIMの会社は、ほとんど店舗を持たないかあってもほんの数店舗など、コストを極力抑えています。なので大手よりも格安で通信回線を提供できるのです。

どれくらい安いのか

どれくらい安いのか、比べてみましょう。
月額料金(通話+ネット) 契約期間 解約金 データ通信量 備考
大手通信会社 約6,900 円(機種代込み) 2年 9,500円 2GB ・電話かけ放題
・本体を分割払いで購入した場合は解約時に残債の支払いが必要
格安SIM A社 約1,900円 6ヶ月 8,000円 3GB ・これに電話料金がかかる(20円/30秒)
・電話機本体を用意する必要がある
※契約手数料は除く

上の表は、電話とネットをスマートフォンで利用する場合の料金比較です。前述のように、大手通信会社の契約プランが複雑怪奇なので、あくまで目安、例と思ってください。

大手通信会社と契約する場合は、機種を同時に購入するのが一般的です。上の月額料金は、Nexus5Xを同時購入した場合の料金です。SIMだけでも契約できるにはできますが、色々な割引プランが効かなくなります。ガラケーにすれば月額料金は安いのですが、最近のガラケーは本体料金がけっこう高いんですよ。

格安SIMでSIMだけを契約した場合、機種本体は自分で用意する必要がありますが、自国でスマートフォンを持っている場合もあるので、それが日本で使える機種の場合は、わざわざ新たに買う必要はありません。買う必要があっても、最近は1万円台でそれなりに使える機種が見つかります。

どうでしょうか。比べてみると、こんなに差があるんです。

なぜ安いのか

安さにはそれなりの理由があります。一般に、格安SIMのデメリットとしては次のようなことが言われています。
  1. 物理的な店舗の数が少ないので、申し込みやトラブルの相談が不便
  2. 設定を全部自分でやらなければいけない
  3. 通信速度が遅い
  4. 通話し放題プランがない
  5. クレジットカードがないと契約できない場合が多い
1 については、東京、大阪など大きな都市には、家電量販店(ヨドバシカメラやビッグカメラなど)に格安SIMの実店舗があるので、そういう所で契約すればよいでしょう。また、ネットでも契約できます。デジタルネイティブな若い留学生や日本の学生にとっては、ネットでの契約もお手の物でしょう。

2 については、これも若い留学生にとってはさほど苦労しないでしょう。SIMを入れるときに「APN設定」というネットワークの設定をしないと使えません。説明書に書いてある通りに設定すれば大丈夫です。

3 大手通信会社に比べて、通信速度が遅い場合があります。時間帯によって著しく速度が下がる時もあると言われていますが、安いんだからあきらめなさいってことです。最近は、速度については改善されてきています。私も格安SIMを使っていますが、速度の点で不満に思うことはほとんどありません。

4 通話し放題プランが必要な留学生はいるのでしょうか?よほどアクティブなビジネスマンみたいな留学生以外は、それほど自分から電話はかけないでしょう。

5 これだけは問題になるかもしれません。クレジットカードを作って日本に来た学生はよいのですが、日本で留学生がクレジットカードを作ることは簡単ではありません。ただ、銀行振込も可能な格安SIMの会社もいくつかあるので、そういう会社を使うしかないでしょう。

格安SIMのデメリットを見てみましたが、ほとんどの留学生にとって1~4はほとんど問題にならないでしょう。とにかく、使えればよいのです。

格安SIMのサービス

有名な格安SIMのサービスは次のようなものがあります。
格安SIMの普及に伴い、だんだんと料金プランが複雑になってきました。長くなってしまうのでここで比較はしませんが、どのサービスも、データ通信は数百円〜、通話つきの場合は1,000円台後半から、プランがあります。

月々2,000~3,000円くらいは携帯電話に出費してもよいという場合は、こういった格安SIMを契約するといいでしょう。

大都市の家電量販店にはだいたい、これらのSIMカードが置いてあり、その場で契約できます。最近では、筆者の住んでいる田舎のケーズデンキやノジマなどにも、一部の格安SIM(楽天モバイルとか)が販売されています。最近は、取り扱い店舗も増えています。

とりあえず近くの電気やさんに行ってみてください。

3. Softbankのプリペイド携帯「Simply」を契約

日本の大手携帯会社は、一応プリペイド携帯のサービスも提供しています。Softbankとauが提供していますが、おすすめはSoftbankで、「simply」という携帯を契約する方法です。

Softbankの「simply」は、以下のページで紹介されています。

Simply | シンプルスタイル(プリペイド携帯電話) | 製品情報 | モバイル | ソフトバンク

Simplyは、Softbankから2017年12月に発売された、名前の通りシンプルな携帯電話です。できることは、電話、メール、SMS、簡単なインターネットブラウジングくらいです。一応、スマートフォンと同じAndroidがOSとして入っていますが、電話機能に特化されているため、新たなアプリのインストールなどはできません。

機種代金は6,458円で、4,000円分のチャージが付いてきます。契約事務手数料・機種変更手数料が3,000円かかるので、初期費用は1万円くらいと思っていいでしょう。

プリペイドなので、その都度チャージが必要です。通話料金などについてはこちら

通話料は8.58円/6秒です。30秒あたり約43円なので、よくある通話料金の2倍以上です。まあ、プリペイドなので仕方がないでしょう。

留学期間が終わったら、携帯電話本体はSIMロックを解除して、買取店やメルカリなどのフリマアプリで売ることができます。次に留学しにくる別の学生に譲ってもいいですね。

結論

以上、見てきたとおり、月々1,000円、2,000円くらいでも携帯電話が使えることを紹介しました。

日本の携帯電話契約はとにかく複雑なのですが、留学生をサポートする人たち(学校の教職員やまわりの学生)が、ガラケープランや格安SIMについて基本的な仕組みや主なサービスを覚えておいて、留学生におすすめするようにした方がいいと思います。

とにかく留学生には、電話番号くらいは持っていてほしいのです。

SIMカードはamazonから買うと、契約手数料(3,000円程度)が無料になるようです。表示価格が300円とか非常に安く見えますが、もちろん月額料金は別途かかります。また、購入したらすぐSIMが届くのではなく、パッケージの指示にしたがって、各会社のサイトから登録する必要があります。日本語がよくわかる人でも難易度高めかもしれません。

2017年7月31日月曜日

日本型就活は死ななくてもよい:海老原嗣生『お祈りメール来た、日本死ね』



「2018年卒の就職活動も終盤になってきた」ーなんていう表現は、極めて日本的なものでしょう。2018年春に卒業する学生は、おおよそ2017年の3月から会社説明会へ参加して志望する企業へエントリーし、6月ころから選考が始まり、8月、9月には内定を得て、進路を決める。10月には内定式、2018年4月には入社・・・これが、日本的就職活動の模範的なスケジュールとなっています。

徹底解説! 2018卒 就活スケジュール - 就活支援 - マイナビ2018

こうした就職活動は、日本型新卒一括採用の特徴(大概において「弊害」)として語られることが多くあります。

本書、『お祈りメール来た、日本死ね ー「日本型新卒一括採用」を考える』は、その日本の大卒者の就職活動と日本型新卒一括採用の「光と陰」を取り扱った新書です。


タイトルにある通り、2016年にネットの書き込みから話題となった「保育園落ちた、日本死ね」をもじっています。文体はあえて軽く書かれているのだと思いますが、扱っている内容は至って真面目です。

内容を、かいつまんでお話します。

就活の悩みは戦前からの100年論争

「就活」に関しては、様々な問題がメディアでクローズアップされています。非個性的なリクルートスーツ、画一的な面接ノウハウ、既卒者の不利な扱い、圧迫面接、就活による学業への影響・・・等々。

これだけの問題が報じられていることから、就活問題というのは最近の現代的な問題のように感じられますが、歴史をひもとくと100年近く前、戦前からも続く、歴史の長い問題なのです。

それが、冒頭の第1章から解説されています。

特に問題となってきたのが「就活時期」の問題で、1928年にはじめての「就職協定」が当時の大手企業によって作られて以後、景気状況によって破られたり、ころころと時期が変わったりを繰り返して今に至っています(p.27参照)。

かつては、大学進学率は今ほど高くなかったので、大卒者の就活というのはごく限られた人の問題だったのでしょう。しかし、大学進学率が50%を超えた今、就活は多くの人が直面する問題となっています。また、グローバル化が進む中で、企業経営の観点からも新卒一括採用が見直されつつあります。そのためメディアでも大きく取り上げられ、「現代特有の」問題というように認識されているのだと思われます。

欧米型採用の闇

タイトルから想像すると、本書は日本型一括採用とそれに合わせた就活を批判する内容かと考えがちですが、それは違います。

欧米型採用の光と闇、特に闇の部分を紹介し、その上で日本型採用と比較しています。
欧米では日本のような新卒一括採用ではなく、在学中から長期インターンシップなどに取り組み、卒業後も期限付きのポジションなどで実務経験を積んだ上で採用されるというのが大半です。

この形式だと、新卒も既卒も関係なく公平に実力で採用される、採用されるために高いモチベーションで専門性を身につけられそうだ、企業にとっても即戦力を採用できる・・・といったメリットが思い浮かびます。

では欧米型採用の闇とは何なのでしょうか。

一例として紹介されているのが、インターンシップが「雇用の調整弁」として、つまり格安の労働力として使われているという点です。

本書で紹介されているのはフランスの例。一部のエリートにはそれなりの給料が支払われるようですが、ノンエリートがインターンシップ(実習期間)で手にできる給料は、なんと最低賃金の3分の1程度。日本円でいうと月5万円程度だそうです。

欧米では解雇がしやすい、というイメージがありますが、実際のところは日本以上に解雇規制が厳しい所もあります。なので、格安で短期間雇えるインターン生は、企業にとって都合の良い存在なのです。

著者は次のように言い切っています。
そう、欧州のインターンシップは、企業にとって使い勝手の良い雇用調整弁という側面がある。だから企業はインターン生を重用する。あちらの国でも、決して社会貢献や企業の社会的責任のみで受け入れているわけではない。(p.127)
それでも大半はインターンで実務経験を積まないと望むような職につけないため、みなインターンシップに取り組むわけです。なお日本によくあるような職業体験的なインターンシップではなく、普通の業務に取り組みます。

まとめ:日本型就活はこれでいいの・・・か?

欧米的な採用環境で、厳しい条件でインターンシップをし、必死で実務経験を積んで職につく・・・そしてその先も、エリート候補以外は一定以上には出世できず、より良い条件の仕事に就くためには転職や学び直しを繰り返す。

そういった環境と、日本型就活を経て新卒入社し、企業研修で育ててもらい、熾烈ではあるが誰もにチャンスがある(ように見える)出世レースに参加するか。

そのどちらが良い・悪いというのは著者は述べていません。2つを比較した上で、日本型新卒一括採用と日本型就活に対する改善策を提案しています(その内容は本書内でお読みください)。

私も、どちらが良い悪いという問題ではないと思います。それに、就活を経て企業就職する以外に、公務員、教員、起業、家業を継ぐ・・・など、キャリアの選択は色々あります。

1つ言いたいのは、日本型就活のメリットは活用できる余地がある ということです。

何の実務経験もない学生を、専門性もさほど問われずに正社員として採用してもらえるだなんて、ノンエリートの欧米の学生からみたら垂涎ものでしょう。

実際に私も、人文系が専門だったにも関わらず、新卒エンジニアとして採用してもらえました。欧米であれば、履歴書だけで完全に門前払いだったでしょう。

日本型就活は確かにプレッシャーも大きく大変だと思いますが、その幸運な環境を活かしたい人にとっては絶好の機会ではあるので、自分自身のために 「就活とやらを大いに利用してやるぞ」ぐらいの大きな気持ちで望んでもよいのではないでしょうか。