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2019年8月4日日曜日

ウズベキスタンは「次なるベトナム」となるか

(ウズベキスタン・サマルカンドの「Tourist Police」)

アジアで経済が急成長し、日本との関係も活発な国といえば、まずベトナム、マレーシア、インドネシアといった国を挙げる人が多いでしょう。そんな中、もう1つ、ベトナム並…とまではいきませんが、今後経済の成長や日本との交流の活発化が予想される国、「ウズベキスタン」について考察します。

ウズベキスタンとは

ウズベキスタンは中央アジアに位置する国で、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンに囲まれた内陸国です。海に出るためには2つ以上の国を通過しなければならない「二重内陸国」です(二重内陸国は世界に2カ国しか存在しない)。

最近は前田敦子さん主演の映画「旅のおわり世界のはじまり」の舞台にもなり話題を読んでいます。

「旅のおわり世界のはじまり」公式サイト

ウズベキスタンのあたりは地理的に東西を結ぶシルクロードの交易の要塞として栄えた地域で、歴史を勉強した人であれば「サマルカンド」「ティムール朝」などといったキーワードを聞いた人も多いでしょう。この地域では、歴史上、多くの国が勃興していきました。

20世紀に入りロシア革命が起こると、ロシア帝国の支配を受けていたウズベキスタンでも共産党政権が成立し、ソビエト連邦の一共和国としてウズベク・ソビエト社会主義共和国が成立します。その後、1990年代に入るとソ連崩壊に伴い独立し、現在のウズベキスタンとなりました。

独立後のウズベキスタンでは、初代大統領のカリモフ氏が長らく強権的な政権を維持してきましたが、2016年にカリモフ氏の死去に伴い新大統領のミルジョエフ氏に変わると、社会・経済の改革が進められるようになりました。

ウズベキスタンの歴史や概要については、以下の書籍を読むと理解が進みます。


人口増加

ここからが本題です。ウズベキスタンの現状を、ベトナムなど東南アジア諸国と比較しながら考察していきましょう。

まずは人口です。ウズベキスタンは中央アジア諸国の中でも最大の人口規模を有し、現在の人口は約3,200万人(2018年)。ベトナムは9,000万人以上なので多くは見えませんが、マレーシアの人口も約3,200万人と同じくらいです。

 
ウズベキスタンでは人口増加が顕著で、合計特殊出生率は2.46(2016年)。これは、日本で第一次ベビーブームのなごりが残っていた1950年代の水準に近いです。いわゆる「人口ピラミッド」は日本の高度経済成長期のようなピラミッド型になります。なお世界人口基金によると、2050年にはウズベキスタンの人口は4,000万人を突破すると見込まれています。

経済成長

ウズベキスタンのGDP(国内総生産)は433億ドル(2018年)で、世界94位。経済規模は確かにそれほど大きくありません。ウズベキスタンよりも人口が少ない隣国カザフスタンのGDPよりも少ないです。人口規模が同じマレーシアにも到底敵いません。

当然、一人あたりGDPもさほど高くはありませんが、実はちょうどベトナムの一人あたりGDPと同じくらいです。そして一人あたりGDPの推移を時系列で比較すると、ウズベキスタンとベトナムはまさに同じような値を推移してきています。

 
今後、ウズベキスタンとベトナムのどちらが成長のピッチを速めるか、このグラフは見モノと密かに注目しています。

ウズベキスタンの経済で今後注目できるのは「観光」、「工業生産」だと考えています。ウズベキスタンは日本国籍者などの入国ビザを免除するなど観光立国を目指しており、観光客は2018年1~9月期で390万人で、2017年同時期に比べ2倍に増加しました(ジェトロ短信より)。

また、工業生産については、過去記事「ウズベキスタンではなぜシボレー車が多いのかでも紹介したように国内にGM系列、ISUZUなどの自動車工場を抱えています。ベトナムでは日本企業の工場が多数進出していますが、ウズベキスタンでも、中東やアフリカ、ヨーロッパへの供給地として、自動車、繊維などの工場を展開する余地があります。

工業生産の状況については、JETROのレポートが参考になるので、ご覧ください。 https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/b1866ca3b26e44f7.html

留学生の増加

次に、留学生の増加について考えます。ベトナムやネパールからの留学生が急増していることは数年前から言われていましたが、2017〜2018年頃から、ウズベキスタン出身の留学生が急増したことが関係者の間では話題になりました。

日本学生支援機構(JASSO)が公開している外国人留学生在籍者数のデータを見ると、ウズベキスタンから大学・大学院への留学生数は383人(2016年)、441人(2017年)ときて、2018年には705人と一気に増加しています。日本語学校への留学者数を合わせた総数は、1,047人(2017年)だったのが、2018年には2,132人を突破しており、日本語学校への留学者数の増加が顕著です。

ベトナム(留学生総数72,354人/2018年)と比べるとまだウズベキスタン出身留学生の割合は少ないですが、タイ(3,962人)やマレーシア(3,094人)と並ぶような日本留学の送り出し国となる可能性があります。

日本語学校への留学は、実質出稼ぎ労働の斡旋をしているような学校の問題もあり、なかなかビザが取りにくくなっていると言われているので、一時的に日本語学校への留学者数は減る可能性もあります。ただ、ウズベキスタン側は海外留学を支援する奨学金基金(El-yurt umidi)を創設するなどしており、日本への留学者数は今後も増え続けるでしょう。

まとめ(将来発生する「ウズベク人問題」に備えて)

ウズベキスタンを、ごく限られた視点ですが東南アジアとの比較で考察してみました。
今後、東南アジア諸国と同様に経済成長し、日本との関係も深まるとなればバラ色の未来があるような感じがしますが、一方で問題も発生してくるでしょう。

例えば、急増したベトナム人やネパール人の技能実習生の問題(受入企業の劣悪な労働環境や失踪)、東京福祉大学の外国人研究生「行方不明」問題などです。こういった外国人労働者、留学生の問題が起こった時に、これまでは中国、ベトナム、ネパールなどの国名が報道ではあがっていましたが、この中に「ウズベキスタン」が加わる日も近いでしょう(なお、ウズベキスタンも技能実習生の送り出し国です)。

実際に、日本に住むウズベキスタン国籍者が、不法滞在や窃盗で逮捕されるニュースもちらほらと聞くようになりました。

またこれはフィクションですが、ウズベキスタン出身の技能実習生らが主要な登場人物となるミステリーが「文芸カドカワ」連載されているようです。ミステリーなので設定上必要だったのかもしれませんが、ベトナム人でもネパール人でもなく、ウズベキスタン人というのが象徴的なような気がします。

移民国家・日本を舞台に新・直木賞作家が放つ壮大なミステリ!【新連載試し読み 真藤順丈「ビヘイビア」】 | カドブン

ウズベキスタンをよく知る人やネットワークのある人は、「かれらは親切でお互いよく助け合うから、日本でも穏やかに暮らすだろう」などとつい思ってしまいがちです。しかし、彼らだけ特別なんてことはありません。いつかどこかの地域で、「ウズベク人問題」が発生する日も来るでしょう。

そんな時に備えて、過去に学び、在日ウズベキスタン人が適切なサポートを受けられる体制ができることを願いますし、筆者もウズベキスタンに縁がある人間の一人として、できることがあれば力を尽くしたいと考えています。

2018年9月30日日曜日

”SDGs”(持続可能な開発目標)を知るためのリンク集

SDGsとは

SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略で、国連が2030年まで世界各国での達成を目指して掲げている目標リストのことです。

以前はミレニアル開発目標(MDGs)というものがあり、特に開発途上国が達成すべき目標として掲げられていました。MDGsは2015年までの目標であったため、その後継として作られたのがSDGsです。SDGsは、開発途上国だけでなく、先進国も含む各国が達成すべき目標として掲げられていることが大きな違いです。

SDGsは国際機関、各国政府、NGO、教育機関、企業までもが標語として据え、様々な取組を開始しています。

ここでは、SDGsをこれから知ろうとする時に参考になりそうなウェブの情報源を紹介します。

SDGsを知るためのウェブサイト

Sustainable Development Goals website

まずは本家本元、国連による公式ウェブサイト。とりあえず公式情報を見たい時はここを確認しましょう。残念ながら日本語版はありません。

Sustainable Development Goal indicators website

国連統計局によるSDGs関連のデータソースです。進捗状況を数値で見たいときにはこちらでしょう。

SDGs Index & Dashboard

学者らによる報告書を公開しているサイト。毎年発行される"SDG Index and Dashboards report"は、各地のSDGs達成状況についてのかなり詳細なレポートとなっているので、一度は見ておいた方がいいでしょう。

SDGs(持続可能な開発目標)17の目標&169ターゲット個別解説(イマココラボ)

SDGsの17目標とそれぞれの目標に関連するターゲットが日本語で解説されています。17の目標しか書かれていない情報ソースが多い中で、ターゲットまで書かれているのは便利です。

首相官邸 SDGs推進本部

SDGs推進本部は首相官邸に置かれているようです。日本政府のSDGsに関する方針や公式情報を確認したい時はこちらを見るといいでしょう。

Japan SDGs Action Platform(外務省)

日本の外務省が運営するSDGsのページ。首相官邸のページよりは外向けで見やすくなっています。総務省や環境省、JICAなどによるSDGsのページにもここの「関連リンク」から飛べます。

外務省×SDGs Twitter

外務省のSDGs専用のTwitterアカウント。主に日本国内のSDGs関連イベントなどの情報発信がされています。

まとめ

以上、SDGsについて知ることができるリソースを紹介しました。筆者自身もまだまだ勉強中なので、他にいいソースを見つけたら随時更新していきます。

2018年5月14日月曜日

ウズベキスタンではなぜシボレー車が多いのか

中央アジアの国・ウズベキスタンへ入国して驚きを感じることの1つは、「走っている自動車のブランドが全然違う」ことではないでしょうか。日本とはもちろん、カザフスタンなど国境を接する隣国とも、走行している車の印象が全然違うのです。

その理由が、シボレー車の圧倒的シェアです。あくまで体感ですが、走っている車のうち、8割以上はシボレーブランドの自動車と思われます。トヨタやホンダなんてほとんど見かけません(隣国カザフスタンはトヨタだらけなのに)。しかも白い車体ばかりです。

首都タシケントの中心部。写っている車はすべてシボレー車


なぜシボレーはウズベキスタンで人気なのでしょうか。

気になったので、少し調べてみました。

シボレーとウズベキスタンの関係

シボレーは、アメリカの自動車メーカーGM(ゼネラル・モーターズ)が有するブランドです。日本ではあまり見かけませんが、全世界で展開されているブランドです。

GMがウズベキスタンへ進出したのは1996年。GM傘下の韓国の自動車メーカーGM大宇(Daewoo・デウ 、現在の韓国GM)が、ウズベキスタンの国策自動車会社(UZ Auto)との共同出資でUz-Daewoo-Autoという自動車ブランドを設立したことがきっかけです(公式サイトによると、登記自体は1993年、実際の稼働は1996年開始)。

半国有の自動車メーカーということで、輸入車よりも有利な条件で販売されていたと想像できます。ウズベキスタンはソ連からの独立後、漸進的に社会主義経済からの移行をしていたのです。

その後、GM大宇ブランドの廃止に伴い、2008年にUz-DaewooもウズベキスタンGMへと変わりました。いまでもDaewooのロゴ入りの車を見かけますが、多くはシボレーブランドのロゴに切り替わっています。

参考:http://gmuzbekistan.uz/companies/istoriya_razvitiya
https://en.wikipedia.org/wiki/GM_Uzbekistan

シボレー・ウズベキスタンのラインナップ

世界的ブランドのシボレーとはいえ、もともとがDaewooブランドだったこともあり、ラインナップもDaewooに準じています。現在のシボレー・ウズベキスタンが扱う車種は以下の通り。

Uzbekistan GM公式サイトより


基本カラーが白のためか、ほとんどが白い車体です。ときどき緑の車体を見ると「おっ」と思います。コンパクトからSUVまで、ひととおりそろっている感じです。

中でも面白いのが、Damas(ダマス)です。これは、かつてGMと提携関係にあったスズキのエブリィを基にした車種だそうで、その後DaewooおよびウズベキスタンGMで独自の進化を遂げました。

レトロというか、愛嬌がある顔立ちで、個人的には好きです。街中でも普通の乗用車や配達車として、よく見かけます。

ウズベキスタンのダマスについてレポートしている日本語記事(カーマニアでも走ってるクルマの名前が滅多にわからない! ウズベキスタンのクルマ事情 | 日刊SPA!)によると、現地のディーラーでも人気のようです。

さらに、GMウズベキスタンはRavonという新たなブランドを2015年に立ち上げました。これは特にCIS地域のローカルブランドだそうで、ロシアやウクライナ、カザフスタンなどに展開しています(UzDaily.com: New automobile brand Ravon presented in Moscow)。

まとめ

ウズベキスタンでシボレー車が多い理由についてまとめてみました。

前述のように、ウズベキスタンGMはRavonという独自ブランドで近隣地域に展開しようとしています。GM資本は入っていますが、独自ブランドで積極的に自動車生産・販売を行っているのは、中央アジアでもウズベキスタンだけでしょう。

なお、ウズベキスタンはISUZU のトラックやバスの生産も行っています。自動車生産は非常に盛んなのです。

ウズベキスタンは生産人口も多く、工場労働者の確保も容易でしょう。2016年に大統領が変わり、近隣諸国との関係改善を進めているところです。今後、ウズベキスタンの自動車産業がこの国の発展の鍵となる可能性が、大いにあります。

ウズベキスタンの今後の成長に関する考察は、別記事「ウズベキスタンは「次なるベトナム」となるか」をご覧ください。


2018年4月11日水曜日

日本でキルギス語を勉強するにはどうしたらよいか

この記事は以下のURLに移転しました。

2018年2月6日火曜日

カザフスタン初の仮想通貨「KZ CASH」とは


仮想通貨(暗号通貨)が580億円ぶん流出したり、大暴落したり、何かと話題になっています。そんな中、ほとんどの人が興味がないと思いますが、カザフスタンの仮想通貨事情について調べてみました。そこで見つけた「KZ CASH」について紹介します。

なお以前、仮想通貨について取り上げた記事はこちらです:野口悠紀雄『ブロックチェーン革命』:仮想通貨技術は世界を変えるか - Blog Da

この記事を書いてから、仮想通貨・ブロックチェーンについては、ぼんやりとウォッチし続けています。

KZ CASHとは

KZ CASH(KZC)は、「カザフスタンで開発された最初の仮想通貨」と謳われています。

公式サイト:https://kzcash.kz/

CEOは、Alibek Mahambetabiev (Алибек Махамбетабиев、アリベク・マハンベタビエフ)さん。

どんな素性か気になりましたが、英字表記で名前を検索しても、ほとんど情報は出てきません。ロシア語表記で調べたところ、次の記事が見つかりました。

В Казахстане запустили первую криптовалюту(カザフスタンで初めての暗号通貨が発行される)

写真に写っている人がアリベクさんです。

仮想通貨を発行する際には、開発の予定を示した「ロードマップ」が作成されるのが常とのことで、KZ CASHにもロードマップがあります。

Дорожная карта KZCash 2017-2018(KZ CASHのロードマップ)

これを見ると、2017年11月に取引所に上場し、2018年3月には世界TOP5の取引所に上場し、5月には世界100位、同6月には世界30位の仮想通貨を目指す、という野心的な計画が見て取れます。あまりに破竹の勢いすぎて、本気なのかどうか疑いたくなります。

KZ Cashの目的

仮想通貨には、それぞれ特性や作られた目的があります。例えば、Ripple(XRP)は、国際送金を媒介し、送金を低コスト・効率的にするのが大きな目的です。

KZ CASHについては、公式サイトのこちらのページに、その目的が書かれています。

https://kzcash.kz/en/17-introductuion

概要を書き出すと、次の通りです。
1.Crypto-ATMを作る
Bitcoin、Ethereum、Litecoin、そしてKZ CASHを購入、またはカザフスタンの通貨テンゲへ両替できるATMを作る。最初のATMはアスタナ・エキスポセンターに設置する。
2.中小ビジネスの決済に使う
中小ビジネス、特にサービス業の決済にKZ CASHを利用できるシステムを構築する。例えば、合法カジノなどの支払いに利用する。
ページ下段にも、補足的な説明がされています。ここを読むと、特に外国人観光客が使うことを想定していることが分かります。
Payment processing services will be provided in priority to hotels, restaurants and other companies in tourism, in order to make usage of KZ Cash overall and most comfortable for the guests of our Kazakhstan.
KZ CASH決済は、特にホテル、レストランや旅行会社によって使われる、とのこと。
前述の合法カジノの記述も合わせると、カザフスタン国民向けの通貨ではない、ということがよく分かります。

しかし、外国人観光客向けのホテルやレストランであれば、大抵クレジットカード決済で十分だし、もしBitcoinやLitecoinがカザフスタン国内で合法的に利用できれば、わざわざKZ CASHに変える必然性は少ないでしょう。

使われるとしたら、KZ CASHで支払いをすることによってホテルやレストランで割引サービスがあるだとか、地域通貨的な使い方のみとなるでしょう。それはそれで、観光振興に役立つので良いと思います。しかし、世界30位の仮想通貨になるだとかは、だいぶ大げさです。

購入方法

BTC Alphaというサイトで購入できるようです。

しかし、仮想通貨の相場の状況を確認できるCoinMarketCapというサイトで見ても、出来高はさっぱりのようですね。

https://coinmarketcap.com/currencies/kzcash/

時価総額ランキングでは1,315位(1,507通貨中)。1日の取引ボリュームは10,000~100,000USD(100万円~1,000万円)程度です。ビットコイン(BTC)は1日の取引が数千億円レベルなので、その足元にも及びません。

さすがに今年、世界30位の通貨となることは難しそうです。

買う人はいないと思いますが、購入は自己責任でお願いします。

まとめ

以上、カザフスタンの仮想通貨「KZ CASH」についてわかったことをまとめました。

KZ CASH自体は特にものすごい可能性を秘めた仮想通貨でもなさそうです。

ただ、カザフスタンは仮想通貨やブロックチェーンに対して非常に前向きな姿勢だというのは、現地メディアやロシア語メディアで度々取り上げられています。

最近では、カザフスタン・ブロックチェーン・暗号通貨協会という組織ができたようです。

КАЗАХСТАНСКАЯ АССОЦИАЦИЯ БЛОКЧЕЙНА И КРИПТОВАЛЮТ
(まだコンテンツは作成中らしいですが、近日中に公開されるとのこと。)

カザフスタンは2017年にアスタナ万博を開催し、万博の会場を金融センターとして活用することを計画しています。

先日、ロシアで仮想通貨の規制法が作られるという報道がありましたが、ロシアと関係の深いカザフスタンも、それにならって今年の早いうちに法整備がなされる見込みです。カザフスタンのような新興国家ほど、トップの意向次第で、こういった新しい技術の導入は早いということも言われます。

KZ CASHはともかくとして、カザフスタンでは今後、国家プロジェクトとして仮想通貨やブロックチェーンの領域で何らかの政策に取り組むものと見られます。この領域での、カザフスタンの今後には要注目です。

2017年11月28日火曜日

忘れられた「戦争」から100年:麻田雅文『シベリア出兵ー近代日本の忘れられた七年戦争』

2018年、日本が関係するとある「戦争」の開始からちょうど100年を迎えます。なぜカッコ書きの「戦争」か。その戦争は、公には「戦争」とは呼ばれませんでした。いまでも戦争とは呼ばれません。にも関わらず、異国の地で日本側だけでも3,000人を超える戦病死者を出し、かつソヴィエト連邦の成立という世界史の分岐点となったとも言える戦いだったのです。

そして今では、その「戦争」はそれほど顧みられることもないーそれが本書でまとめられている「シベリア出兵」です。


シベリア出兵とは

かつて存在した「極東共和国」の国旗

多くの人にとって「シベリア出兵」は、世界史、あるいは日本史の授業で聞いたことがある、くらいだと思います。有名な「シベリア抑留」とは全然別の話です。

本書では、シベリア出兵は次のように定義されています。
シベリア出兵は、ロシア革命の混乱に乗じ、1918(大正7)年に日本海に面したロシアの港町、ウラジオストクに日本を含む各国の軍隊が上陸して始まった。ウラジオストクからは、日本軍は22年に撤兵する。だが本書は、25年にサハリン島(樺太)の北部から日本軍が撤退するまで、足かけ7年に及んだ長期戦と定義する。
この経過を、おおざっぱにまとめます。

ロシア革命は、1917年の2月革命、10月革命を通じて、最終的にソヴィエト政権が樹立された一連の事件のことです。ここからかつてのロシア帝国の領土内では内戦が発生します。ソヴィエト側の赤軍と、その他の反革命勢力が争いを始めます。

その時、世界は第一次世界大戦の最中。連合国(イギリス、フランス、ロシアなど)と同盟国(ドイツ、オーストリアなど)が戦っていたところ、ソヴィエト新政府はドイツと単独講和(ブレスト=リトフスク条約)を結び、戦争を終えてしまいました。
イギリス、フランスはこれをよしとせず、ソヴィエト政府を倒して東部戦線を復活させることを狙います。そして日本とアメリカにも、ロシア内戦に介入し、ソヴィエト政府打倒の手助けをしてもらおうと頼みます。

日米はしばらく出兵を渋ったものの、結局、ウラジオストク上陸を皮切りに出兵を決行します。その後、日本は他の各国と協力して反革命勢力を支援したり、パルチザンと戦ったりし、結局バイカル湖周辺の地域まで進出します。

内戦はソヴィエト側が優位となり勝負の行方が見えた頃、他の各国は撤兵しますが、日本はなかなか撤兵せず止まっていました。それも22年には撤兵。日本軍の撤兵に合わせて、それまで日本軍との対決を避けるために存在していた極東共和国はソヴィエト政府に吸収され、その年の12月にソ連の成立が宣言される。

ただし、日本人の民間人が大量に殺害された「尼港事件」を口実に占領していた北サハリンについては、ソヴィエト政府との交渉がまとまるまでは留まり続け、25年に撤兵しました。

これがシベリア出兵のあらましです。

繰り返される「大義なき戦争」「内戦介入」

シベリア出兵は、「大義なき戦争」と言われています。

シベリア出兵での「大義」は、「チェコ軍団(※)の救出」というものでした。その大義はいつの間にか忘れ去られ、日本は極東でロシアの持っていた資源や権益奪取に走ります。そうしているうちに、だらだらと戦費をたれ流し、人命も失いつつも、当時入れ替わりの激しかった内閣は撤退を決断できず、結局7年間も戦争を続けてしまいました。

※チェコ軍団:第一次世界大戦時に、オーストリア=ハンガリー帝国からの独立を目指して組織されたチェコ人・スロヴァキア人からなる戦闘部隊。アメリカ経由で欧州へ向かうためウラジオストックへ向かっていたが、途中で反乱を起こしてソヴィエト政府と対立、シベリアで孤立する。

「大義なき戦争」は、現代まで幾度も繰り返されています。イラク戦争では、大量破壊兵器を持つフセイン政権の打倒が大義でしたが、結局大量破壊兵器は見つからず、大義はうやむやになっています。大義があれば戦争していいというものじゃないですが。またシベリア出兵の「内戦介入」という構図も、シリア内戦に見られるように、現代までも繰り返されています。

まとめ:再び極東に夢を見るか

一応ロシア関係の仕事をしている私も、本書を読んではじめてシベリア出兵の全体像をつかむことができました。

日本では、日本とロシアの争いの歴史を見る時、日露戦争、第二次大戦末期のソ連による侵攻やシベリア抑留ばかりが語られがちですが、その間にシベリア出兵があり、双方ともに多くの人命が失われたことを忘れるべきではありません(ロシア側の死者は8万人とも言われています)。

ここ数年、日露関係はやや改善の方向に動いており、平和条約の締結や北方領土問題の前進にわずかな希望が見えています。また極東地域の開発に、日本も及び腰ながらも乗り出そうとしています。

この動きに関わる人間は、シベリア出兵の歴史を抑えておく必要が、あると思います。

2017年9月20日水曜日

春秋戦国時代より面白い?:高口康太『現代中国経営者列伝』

上海
国民総生産(GDP)で中国が日本を抜き世界2位になったのが2010年。それから7年が過ぎ、日本では中国人観光客による「爆買い」が話題になるなど、経済の成長ぶりは誰もが知るところとなりました。

一方で、中国というと眉につばをつけて見る人も多いと思います。今の中国の成長は国の規模をバックにしたバブルでありハリボテであり、いつか必ず崩壊すると戦々恐々としている人もいるでしょう。

そうした中国 観を脇に置いて、読み物として楽しめるのが『現代中国経営者列伝』です。
本書は、急速に経済成長してきた中国で、その波に乗り成功を遂げた起業家8人の人物伝であり、そこから改革開放に始まり現代にいたる中国経済の躍動感が見えてきます。

紹介されている経営者

本書で紹介されている経営者は次の8人。
  • 柳傳志(レノボ)
  • 張瑞敏(ハイアール)
  • 宗慶後(ワハハ)
  • 任正非(ファーウェイ)
  • 王健林(ワンダ・グループ)
  • 馬雲(アリババ)
  • 古永鏘(ヨーク)
  • 雷軍(シャオミ)
この中で、日本でもよく知られているのは、レノボ、ファーウェイ、アリババでしょう。レノボは言わずと知れた世界的PCメーカーで、NECのPC部門を買収しました。ファーウェイはスマートフォンで日本市場でも勢いに乗っています。アリババは、2014年にニューヨーク証券取引所に世界最大規模の上場を果たし、またソフトバンクの孫正義氏と深い関係にあることでも経済紙を賑わせました。他の5社も、現代の中国経済を語る上では外せない存在となっています。

この8人が、いかにして起業し、その後の困難を乗り越えて今に至っているかが、一冊の中でコンパクトにまとめられています。 それぞれのエピソードは本で読んでいただくとして、ここでは面白かった点を1つ紹介します。

起業・事業スタートは40歳前後

彼らはいずれも、創業やメインとなる事業スタートは40歳前後のときでした。レノボの柳が前身となる北京計算機新技術発展公司の創業に加わったのは彼が40歳のとき。任がファーウェイを創業したのは43歳。馬によるアリババの創業は35歳の時です。

中国は社会主義国であったので、全てが国有企業でした。それが変わったのは1980年代から。こういった背景もあり、彼ら起業家は、もともとは国営企業や国立研究所、軍などに所属していました。そこから民間で企業し、急成長を遂げたのです。比較的若いシャオミの雷も、キングソフト勤務を経て、40歳で起業しています。

今では20代で起業する中国の若者もいるらしいですが、本書のストーリーを読んでいると、40前後になっても全く違う環境に挑戦できるという勇気がもらえるのではないでしょうか。

まとめ

彼らは今でも現役の経営者であり、現在進行形で困難・課題に直面しています。裏を返せば、まだそれだけ中国市場経済の歴史は浅く、今後も強烈なキャラクターでのし上がっていく経営者が現れる可能性が高いと言えるでしょう。

これからも現代中国の経営者から目が離せません。また、日本やアジアの若い世代が、こうした現代中国の辣腕経営者に「憧れ」、また参考にして起業することが増えてくるのではと思います。

2017年8月17日木曜日

ロシアに行ったら買っておきたい:何でも中東風の香りになる魔法の粉フメリ・スネリ

いつも真面目な記事ばかりだと退屈するので、夏休みだし、今回は調味料の話をしようと思います。

ロシアのスーパーには、様々な「カンタン」調味料が並べられています。日本でいう中華調味料的な存在で、例えば「ボルシチのもと」、「プロフのもと」など、定番料理がカンタンに作れる調味料がたくさんあります。また、ガーリックやディルの粉末などもあります。

そのうちの1つ、私がロシアへ行く度に買っている調味料が、まるで魔法の粉のように色々と使えるので紹介したいと思います。

その名もХмели-Сунели(フメリ・スネリ)

フメリ・スネリとは??

パッケージはこんな感じです。



一言でいうと、「何でも中東風の料理っぽくなる粉」です。

原材料は、パッケージの裏に書いてあります。


これを日本語にすると、
コリアンダー、ディル、バジル、マジョラム、フェヌグリーク、塩、パセリ、ピンクペッパー、ミント、ローリエ
となります。見るからに香ばしい感じの香辛料で構成されているようですね。
パッケージの写真も食欲をそそります・・・。

ロシアのスーパーではだいたいどこでも売られており、1パック数十円で購入できます。

使い道は??

パッケージには、次のように説明がされています。
フメリ・スネリ:ジョージア(グルジア)とアルメニア、および他のコーカサスの民族に使われている有名な香辛料。フメリ・スネリは第一にハルチョー作りに使われる。また、肉料理やスープのユニバーサルな調味料でもある。
ハルチョーというのは、有名なジョージア料理です。赤いスープが特徴的で、ボルシチに似ていますが、ボルシチよりも濃厚で少し辛味があります。

そのジョージアをはじめとしたコーカサス地方で使われている調味料とのことですが、コーカサス料理以外にも様々な料理に使えます。

次に、個人的におすすめしたい、フメリ・スネリがよく合う料理を紹介します。

フメリ・スネリがぴったり!個人的おすすめ料理

ハンバーグ

通常のハンバーグのたねに、フメリ・スネリを入れればあら不思議!たちまち香ばしさが激増し、ケバブのような風味になります。

ハンバーグ以外にも、基本的に肉料理には何でもよく合うと思います。

マヨネーズ・タルタルソース

ドレッシングを作るときにも使えます。いつものマヨネーズやタルタルソースでは何か物足りない時、フメリ・スネリを1つまみ入れてください。

すると、あら不思議!ただのサラダやエビフライが、たちまちコーカサス料理に大変身します。

納豆

最後に、意外なんですが納豆にも使えます。

これは好みが分かれると思いますが、要するに納豆に山椒を入れるような感じと捉えてください。「納豆 山椒」で検索すると、「上品な香りになる」「大人な味になる」などおすすめする記事がたくさん出てきます。

ちょっぴり大人っぽい納豆ご飯!山椒トッピング

これと同じように、フメリ・スネリを入れても美味しくなります。納豆好きの方におすすめです。

まとめ

以上、ロシアで買える魔法の粉「フメリ・スネリ」を紹介しました。

ぜひロシアへお越しの際は近くのスーパーへ立ち寄り、この魔法の粉を手に入れて日本へ帰ってください!

(そして誰か、Cookpadにレシピを公開して、フメリ・スネリを日本に広めてください。)

2017年6月15日木曜日

ロシア発?「簡単に美しいウェブサイトが作れる系」サービス”Tilda”を使ってみた


ひと昔前は、見栄えの良いホームページ(ウェブサイト)を作ろうと思ったら、デザインを勉強したりHTMLやCSSといったコードを書けるようになる事が必要でした。

しかし、いまは違います。「簡単に美しいウェブサイトが作れる系」サービスがいくつも登場し、専門知識やセンスがなくても簡単に綺麗なウェブサイトが作れるようになりました。

日本で有名なのは、次のようなサービスでしょう。
今回は、主にロシア向けに展開されている「簡単に美しいウェブサイトが作れる系」サービス、Tilda(Tilda Publishing)を紹介します。

Tildaとは

Tildaは、ロシア出身のデザイナー、ニキータ・オブホフ氏が立ち上げたサービスです。

НИКИТА ОБУХОВ
オブホフ氏はロシア出身ですが、Tildaのオフィスがどこにあるのか、はっきりした情報がありません。Tilda公式Twitterの所在地はLondonになっています。このため、「ロシア発?」と一応はてなを付けておきました。

URLはTilda.ccとなっており、日本からアクセスすると、ひとまずロシア語のページへ飛ばされます。
英語でのページはこちらです。

英語でも十分にサービスを使えるようにはなっていますが、ロシアの大手検索エンジンYandexの決済サービスが使えるなど、基本的にはロシア重視のサービスになっています。

Tildaの特徴

「簡単に美しいウェブサイトが作れる系」サービスの特徴として、コードの事が全く分からなくてもサイトを作れる、基本機能は無料、テンプレートが豊富にある、スマホ対応している、などがありますが、これはTildaにも共通です。

この他に、Tildaのサービスの紹介を見て、面白いな〜と思った特徴を挙げてみます。

基本的に1カラムのインパクト重視デザイン

デザインテンプレートはこちらから見れます。なかなかスタイリッシュなデザインだと思います。

デザインの構成は1カラム、つまりサイドバーなどが付かないデザインになっています。画像を画面いっぱいに大胆に使い、印象的なページに仕上がるようなテンプレートが豊富です。

オンライン・ストアが簡単に作れる

決済サービスと連携し、オンラインストアが作れます。Paypal、Stripeと連携でき、ロシア向けではさらにЯндекс Деньги(ヤンデックス・ジェンギ)という決済サービスとも連携できます。

外部サービスとの連携が多い

訪問者とのコミュニケーションに使える外部サービスとの連携が豊富です。フォームサービスではGoogle Form、Typeform、チャットサービスではSlack、Telegramといった有名どころと連携ができます。

ソースコードをエクスポートできる

これはちょっと驚きです。Tildaで作ったページのソースコード(プログラム)をファイルとして出力してダウンロードできるようです。このファイルを別のサーバーへアップロードすれば、そのままTildaで作ったサイトをコピーする事ができます。

これのどこが驚きかというと、例えば誰かから「ホームページ作って」と頼まれた時に、Tildaで作ってエクスポートし、そのファイルをちょっといじれば完成してしまう、という事も可能になってしまうのです。え、いいの?という感じです。他の類似サービスではあまり無い機能な気がします。

料金

基本無料ですが、料金プランがあります。

無料

  • 1サイト、50ページ、50MBまで
  • Key blocks collection使用

パーソナルプラン:10ドル/月(年間払いの場合)

  • 1サイト、500ページ、1GBまで
  • Full blocks collection利用 可能
  • 独自ドメインほか全ての機能を利用可

ビジネスプラン:20ドル/月(年間払いの場合)

  • 5サイト、各サイト500ページ、1GBまで
無料とパーソナルプランの大きな違いは、使えるブロック・コレクション(blocks collection)の種類の数です。Tildaでいうブロックは、ウェブサイトでよく使うパーツのテンプレートの事ですが、 このテンプレートの数が多ければ、それだけ様々なコンテンツ、デザインのサイトを簡単に作成することができます。無料の場合、ごく基本的なブロックテンプレートに制限されています。

その他、パーソナルプランではフルの機能を使え、ビジネスプランではサイト数が増やせる、という棲み分けになっています。

使ってみよう

それでは恒例・・・使ってみましょう!

まず、登録が必要です。英語ページへは、ロシア語ページの最下部のリンクから飛べます。
・・・が、せっかくなのでロシア語ページから登録してみましょう。


まず、右上の黒い四角Регистрацияが「Register」という意味なので、クリックします。


この画面に、ユーザー名、メールアドレス、パスワードを入力します。
そして下のボタンを押します。


すると、すぐに管理画面へ飛びます。最近よくある、メール認証は不要です。しかし、この管理画面・・・うわ!ロシア語じゃん!でも安心。左上のメニューПрофиль(Profile)から、言語の変更ができます。


Languageを、Englishに変更します。


これで英語メニューになりました!


そのあとは、割と直感で操作できると思います。まず、テンプレートを選びます。テンプレートのカテゴリは、大きく「Business」「Editorial」「Cover page」と分かれていますが、今回は「Editorial」を選択します。


使いたいテンプレートを見つけたら、Createを押します。すると編集画面になるので、あとは好きなように編集しましょう!

まとめ

以上、ロシア発「簡単に美しいウェブサイトが作れる系」サービス、Tildaを紹介しました。

実際のページ、編集画面とも非常にスタイリッシュなデザインで、操作性も悪く無いと思われます。ロシア向けサービスとの連携があるため、例えばロシア向けにスモールビジネスを行いたい場合などは良いかもしれません。

難点として、この手のデザインは、日本語テキストを使うとどうも見栄えが悪くなってしまいます。また、Tildaは世界的にそれほどメジャーなサービスとも思え無いため、ある日突然サービス終了、なんて事もあり得ます。

それは承知の上で、短期間で印象的なウェブサイト(特に海外、外国人向け)を低コストで作りたい場合、選択肢に加えてもいいのではと思います。

2017年6月10日土曜日

開幕!カザフスタン・アスタナ万博とカザフスタンのこれから

先日、大阪が2025年の万博開催地に立候補した事がニュースとなりましたが、今年の万博がどこで開催されるか、ご存知でしょうか。今年は、カザフスタン共和国の首都・アスタナで開催されています。6月9日に開会式が行われ、会期は6月10日から9月10日まで、3ヶ月間です。

カザフスタンとは?アスタナとは?

カザフスタンはソ連崩壊後に独立し、2017年で独立25年を迎えます。ロシアの南、中国の東に位置し、国土面積は世界第9位という広さに対し、人口は約1,700万人です。天然ガス、石油、レアメタルなどの天然資源が豊富で、2000年代に急激な経済発展を遂げました。ただ、ここ数年は資源価格の下落により、経済は少し減速しています。


 カザフスタンのGDP成長率

主要民族はカザフ人で、人口のおよそ7割を占めます。カザフ人はアジア系の顔立ちで、日本人ともよく似ています。最近だと、「美しすぎる女子バレー選手」として話題になったサビーナ選手が話題になりました。カザフ人以外にはロシア人や朝鮮人など多くの民族が暮らしています。 フィギュアスケートのデニス・テン選手も朝鮮系カザフスタン人です。
サビーナ・アルティンベコワ選手(instagramより)

そのカザフスタンの首都がアスタナです。もともとカザフスタンの首都は、南部のアルマティでしたが、1998年にアスタナへ遷都されました。アルマティでの大地震や、ロシア系住民の多い北部の分離独立を警戒したためなど、遷都の理由は様々あるようです。

遷都の前は、アクモラという名前の街でした。当時の人口は25万人程度で、遷都後に急速に街が整備され、現在は80万人を超えています。なお、アスタナの新都市を設計したのは、コンペで優勝した日本の建築家・黒川紀章氏です。

新たに作られた都市のため、市内には斬新な形状をした、近未来的な建築物が多々あります。

首都・アスタナ

アスタナ万博のテーマ

アスタナ万博のテーマは「Future Energy」。自然エネルギーの活用、エネルギー利用の効率化など、未来のエネルギーのあり方を考えることが焦点となっており、100以上の国・地域と国際機関のパビリオンにはそれぞれのアピールしたいテクノロジーや取り組みが紹介されているようです。

アスタナ万博の公式ページ(英語)はこちら

会場図もありますが、日本で行われた大阪万博や、数年前に行われた上海万博、ミラノ万博ほどの規模は無いように見えると思います。

それもそのはず。ひとくちに「万博」といっても、5年に1回程度開催される大規模な万博(登録博)と、専門的なテーマに絞った万博(認定博)があり、アスタナ万博は後者の認定博の方です。認定博は、会期や会場面積などに制限があり、分野も絞られた万博です。なので、規模もテーマも限定的です。

とはいえ、国際的な大規模イベントであることには変わりなく、かなりの労力と資金が投じられ、一般の人が楽しめるようになっています。

テーマに沿ったパビリオンのほか、シルク・ドゥ・ソレイユの公演など文化イベント、その他様々なイベントが開催されるようです。

なお、日本もパビリオンを出しています。日本館の特設サイトはこちら

カザフスタン国民の熱狂は?

日本では、かつての大阪万博が国民の熱狂を呼び、その後の高度成長期へと繋がった象徴的なイベントでした。前述のように「認定博」とはいえ、新興国であるカザフスタンでの万博開催となれば、さぞかし国民が熱狂していることでしょう・・・と思いきや、案外そうでもないようです。

東京オリンピックがいまいち盛り上がらず、開催に反対する都民が一定数いるように、アスタナ万博も冷めた目で見ているカザフスタン国民もいます。

これには理由があって、アスタナ万博は、プロジェクト開始から様々なスキャンダル、トラブルに見舞われてきました。




この記事によると、アスタナ万博をめぐって次のようなスキャンダル、トラブルがあったようです。関係者の自動車事故、アスタナ万博のための国策会社幹部による組織ぐるみの汚職、建設中のパビリオン内でバーベキューして(ネットが)炎上しちゃった問題、マスコットキャラクター変更論争、さらには吹雪による建設中パビリオンの倒壊・・・。
これはさすがのカザフスタン国民もゲンナリするはずです。

まあ東京五輪も、スタジアム問題、会場問題、ロゴ問題、費用負担問題、無償ボランティア・・・とこれまでも問題山積でまだまだ問題は出てきそうなので、よその国のことは言えませんけどね。今のところ、汚職が無いだけましでしょうか。

批判はさておき、多くのカザフスタン国民は「やるなら成功してほしい」とは思っているはずです。アスタナ万博の成功を祈ります。

万博後、カザフスタンはどこへ向かうのか

カザフスタンの向かう方向性は明確です。カザフスタン政府は「Kazakhstan 2050」という、2050年に向けた国家目標を定めています。

「Kazakhstan 2050」の特設サイトまであります。
これによると、カザフスタンは「2050年までに一人当たりGDPを60,000USドルまで増やす」という目標を掲げています。2016年の日本の一人当たりGDPが38,917ドル(世界22位)なので、かなり野心的な目標と言えます。なお、2016年のカザフスタンの一人当たりGDPは7,452ドルで、世界77位となっています(参考)。

また、経済成長だけではなく、「2025年までにカザフ語をキリル文字からラテン文字へ移行する」といったアイデンティティーに関わる目標や、「水問題の解決」など環境・国際関係に関わる目標も掲げています。

カザフスタンはいま、岐路に立たされていると思われます。しばらく経済成長を支えてきた天然資源価格の上昇は終わりました。また、独立から25年、大統領としてカザフスタンの成長をけん引してきたナザルバエフ大統領ですが、高齢となり世代交代の必要に迫られるでしょう。

アスタナ万博の遺産を活用し更なる発展へと舵を切れるか、それとも負の遺産として持て余し、停滞の時代を迎えるのか。カザフスタンの今後に要注目です。

2017年5月5日金曜日

最新 世界情勢地図:100枚の地図で理解する世界のいま



本屋で思わず手にとって衝動買いしてしまった一冊。

パスカル・ボニファス (著), ユベール・ヴェドリーヌ (著), 佐藤 絵里 (翻訳)『増補改訂版 最新 世界情勢地図』ディスカヴァー・トゥエンティワン,2016

本書では、およそ100枚の世界地図とそのテキストによって、世界情勢を解説しています。

どんな地図かというと、ヨーロッパが世界中に植民地を持っていた時代、世界の環境問題、人口分布、特定の国や集団から見た世界など、様々なテーマに基づき、カラフルで分かりやすく示された地図です。Amazonの商品ページにサンプルがあるので、そちらを見るのが早いでしょう。


この本の優れたところは、これまで気に留めていなかった世界の事実に、ビジュアルによって気づかせてくれるところです。

中でも面白いのは、「◯◯から見た世界」の章。米国、ヨーロッパの主要各国、トルコ、ロシア、中国、日本などの国々、あるいは「アラブ世界」、「イスラム主義者」など特定の集団の視点から世界情勢を見る、という試みです。

例えば、米国であれば、米国がどんな国と軍事的、経済的な同盟関係にあり、どんな国を警戒しているのかが一枚の世界地図でパッと分かるようになっています。これが「ロシアから見た世界」の場合、ロシア帝国時代の領土拡大の過程の地図が入ります。このように、国によって取り上げられる話題が異なります。各国はそれぞれの課題を抱えているからです。「日本から見た世界」は、中国などと比べると大分あっさりとしています(見れば分かります)。日本ってあんまり注目されてないんですかね。

なお国として取り上げられているのは主要な国のみで、全ての国の項目はありません。アフリカ諸国の中では、南アフリカとセネガルだけが取り上げられていました。南アフリカはいいとして、なぜセネガルなんだろう。国の規模や影響力からして今ならナイジェリアやエジプトの方がふさわしいのではと思いますが。著者がフランス人ということが関係しているのかもしれません。

このような多少の偏りはあるにせよ、カラフルな地図を眺めているだけでも楽しいです。「あ、ここの国々はこんな共同体作ってたんだ!」とか、「この地域ってこんな紛争があったのか」とか気づくことができます。

気づきを得たその後は、本文のテキストを読むと理解が進みます。しかしテキストは1つの項目につき1ページ。それほど深堀できている訳ではありません。あくまでテキストは参考程度で、気になった問題はネットや他の本で調べるなりしましょう。

気づきのきっかけとしては、素晴らしく楽しい一冊だと思います。

(統計データについて気になったら、公開データを調べてみてください。参考記事:Google Public Dataを使ってグラフで遊ぼう

2017年4月25日火曜日

オルハン・パムク『僕の違和感』:現代トルコの半世紀を追体験する


「ロシア文学が好き」、「フランス文学が好き」という人は容易く見つかるが、「トルコ文学が好き」という人はあまり多くないでしょう。

今回紹介するのは、現代トルコで最も有名な作家オルハン・パムクの『僕の違和感』(2016)です。

オルハン・パムクとは

オルハン・パムクは、1952年トルコのイスタンブール生まれ。イスタンブール工科大学で建築を学び、イスタンブール大学でジャーナリズムの学位を取得。その後、コロンビア大学客員研究員としてアメリカに滞在。作家デビューは1982年の『ジェヴデット氏と息子たち』(オルハン・ケマル小説賞受賞)。その後も数々の 文学賞を受賞。2006年にはノーベル文学賞を受賞。代表作は『わたしの名は赤』、『雪』、『無垢の博物館』 など。

パムク氏の経歴は、公式サイト(英語)を見るのが一番でしょう。今の時代、小説家も自分のウェブサイトを持っているんですね。
日本語の場合は、Wikipedia、藤原書店の紹介が参考になります。
ノーベル賞受賞時に一気に知名度が高まりましたが、それから数年が経ち、日本での知名度は低くなっていると思います。ただ執筆意欲は旺盛で、2016年には最新作"Hatıraların Masumiyeti"(英題:The Red-Haired Woman)を刊行しました。

パムクは、トルコの特にイスタンブールを舞台とした作品を多く描いており、オスマン帝国時代〜現代まで、異なる時代のイスタンブールを登場させています。

2016年に和訳が刊行された『僕の違和感』も、イスタンブールを舞台にした作品です。それでは、作品について紹介します。

『僕の違和感』あらすじ

本書は上下巻の長編小説で、1950年代から2012年までのおよそ半世紀の間の、主人公メヴルト・カラタシュとその家族、親戚、友人たちの半生を描いた物語です。
主人公メヴルト・カラタシュは、12歳で故郷の村からイスタンブールへ移り住み、父と共にトルコの伝統飲料”ボザ”を売り歩くようになる。大都会の生活に馴染む中、同じく村から出てきたいとこの結婚披露宴で、美しい少女に一目惚れする。その後、熱烈な恋文を送り続け、ついには駆け落ちを実行するーー。
物語冒頭は、この駆け落ちの場面から始まります。駆け落ち自体は成功しましたが、その後とんでもない事実にメヴルトは気づきます。この駆け落ちした相手が、披露宴で一目惚れした少女ではなく、その姉だったのです。しかしメヴルトは、それに気づきながらも、一目惚れした少女の姉”ライハ”と、苦労しながらも幸せな家庭を築いていきます。

物語はその後、メヴルトの子供時代に戻り、イスタンブールへの移住、学校生活、ボザ売りの仕事、ライハとの駆け落ち・結婚、出産・・・と時代は冒頭に戻り、さらに先へと進んでいきます。その中で、メヴルトとメヴルトの周囲では様々な出来事が起こります。クルド人の親友フェルハトとの出会い、徴兵、仕事の失敗、住民同士の抗争・・・等々。こういったそれぞれの物語が、相互に絡まりながら、まるで舞台脚本のように様々な登場人物の口から語られていく形式になっています。

続いて感想を書きますが、先入観なく本作を読みたい場合はここで止めて、本を入手してください。


感想

圧巻、の一言です。主人公はごく平凡な、心優しい青年に過ぎません。何ら特別な存在ではなく、その時代に田舎から大都会へ出てきた何百万というトルコ人青年の一人です。大きな陰謀に巻き込まれるわけでもありません。確かに駆け落ちは劇的のように感じますが、許され難いものの実はよくある手段であり、主人公メヴルトが最初に恋した相手も別の男性と駆け落ちをしています。主人公以外の登場人物もそれぞれ、ごくありふれた人々です。それにも関わらず、緻密な構成と描写により、物語としても飽きることなく、トルコの半世紀を生きたそれぞれの人物の息遣いが活き活きと感じられます。

何よりも素晴らしいのは、イスタンブールという都市の描写です。これまでに幾度となくイスタンブールを描いてきた作家だけあって、イスタンブールの半世紀の劇的な変化が、主人公メヴルトの視点から丁寧に描かれています。メヴルトは伝統飲料”ボザ”を売るために、イスタンブールの路地を日々歩き続けます。路地から見える、変わり続ける都市の風景を、時に喜び、時に寂しく思うメヴルト。私はイスタンブールの空港にしか行ったことがありませんが、本書を読み、イスタンブールが何年か暮らした街のように郷愁を感じられるようになりました。

また、イスタンブールだけではなく、トルコの半世紀を追体験できるといってもよいでしょう。周知の通り、現代トルコはケマル・アタチュルクが打ち建てた世俗主義の国家です。しかし最近のトルコを見てわかる通り、イスラム教はトルコ社会と不可分のもので、世俗主義と信仰心の間で揺れ動くメヴルトや社会の様子も描かれています。世俗主義に加えて社会主義が一部の支持を集めた時代もあり、作中の人物も関わりを持ちます。クルド人というキーワードもよく出ます。そして後半では、資本主義国家として急成長したトルコ社会も描かれます。こういった変化が、歴史として解説されるのではなく、登場人物の口から語られるのです。メヴルトは何かひとつの思想の熱心な信奉者ではなく、どちらかというと冷めた視点で、社会の変化と向き合っています。

トルコとイスタンブールの半世紀の描写、というのは本作の大きな魅力であることは確かです。それと同時に、決してこれはトルコ土着の文学ではなく、それぞれの人生を歩む全ての人に向けた文学だと、思います。私は、最後の一文でそのことを感じました。

まとめ

文学作品の評価が定まるまでは時間がかかりますが、オルハン・パムク『僕の違和感』は、間違いなく名作の一つとなると思います。日本ではあまり話題にされない海外文学の中の、さらにマイナーなトルコ文学で、この作品を知る人が少ないことが残念です。宮下遼さんの日本語訳は読みやすく、登場人物の相関図も載っているので、海外文学が苦手でも抵抗なく読めると思います。

そして本書を読んでパムクに興味を持ったら、他の作品も読んでみると良いでしょう。主な作品には日本語訳があります。



また、現代トルコの歴史に興味を持ったら、最近刊行された新書『トルコ現代史』に目を通してみましょう。

パムク作品については、また取り上げたいと思います。

2017年3月23日木曜日

アゼルバイジャンについて知るために読んだ方がよさそうな本



日本ではあまり知名度の高くない、アゼルバイジャンという国について知ることができる本をまとめました。

私自身は、仕事で二度、アゼルバイジャンへ行っています。テレビ朝日「世界の街道をゆく」で特集が組まれていますが、非常に奥が深い国です。まず、こちらに紹介する本を読んで、基礎知識をつけましょう。

全般

定番ではありますが、明石書店のシリーズで「コーカサスを知るための60章」という本があるので、目を通してみましょう。

アゼルバイジャンはコーカサス諸国(アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージア)の1つとして数えられるため、この地域全般の事情を、まず抑えておくと、アゼルバイジャンへの理解も深まります。とくにアルメニアとの関係は必ず知っておいてください。これを知らずにアゼルバイジャンへ行くと、いろいろな意味で危険です。


政治・国際関係

アゼルバイジャンの政治・国際関係について知るためには、慶応大学の廣瀬陽子先生の著作を読んでみるとよいでしょう。

コーカサス全般や旧ソ連地域を扱った著作であっても、アゼルバイジャンに関する記述量が多い傾向にあります。かといってアゼルバイジャンびいきという訳でもなく、中立的な視点から書かれています。


経済・ビジネス

ビジネスに関しては、こちらの本を読むと事情が分かるでしょう。注意したいのは、この本が出版される少し前までは、石油価格が高値を維持しており、産油国であるアゼルバイジャンの経済も好調だったということです。その後、石油価格は大幅に下落し、アゼルバイジャン経済は苦境に立たされています。

しかし、だからといってアゼルバイジャン経済が崩壊した訳でもなく、まだまだポテンシャルは高いと思います。その一端を垣間見たい方にはおすすめの一冊です。

言語

アゼルバイジャンでは、アゼルバイジャン 語という言語が話されています。「アゼリ語」、「アゼリ・トルコ語」と言われる場合もありますが、現在の公式な呼び方は「アゼルバイジャン語」です。アゼルバイジャン語はトルコ語、カザフ語、ウズベク語などが含まれるテュルク系の言語の中でも、特にトルコ語と非常に近く、通訳なしでほとんどお互いに理解できます。そこで、かつては「トルコ語」と公式に呼ばれていた時期もありました。

そんなアゼルバイジャン語、日本でもいくつか教科書や辞典が出版されています。


また、言語政策に興味があれば、下記の論集を読むとよいでしょう。アゼルバイジャンの言語政策に関する論文が掲載されています。

岡洋樹編(2011)「歴史の再定義 : 旧ソ連圏アジア諸国における歴史認識と学術・教育」(東北アジア研究センター叢書:第45号)

まとめ

アゼルバイジャン人は長い間、トルコ民族とほぼ同じ民族として見られ、また彼ら自身でも「アゼルバイジャン人」としてのアイデンティティーが昔からあった訳ではありません。現在の形で「アゼルバイジャン人」のアイデンティティーが形成されたのは20世紀に入ってからです。

かと言ってトルコと全てが一体なのかというと、そういう訳でもありません。重層的に色々なものが重なって出来上がっている国です。決して「産油国で金満なトルコ人国家」ではありません。一度は現地へ行ってみることをオススメします。

追記: 「アゼルバイジャン人」というアイデンティティー形成について、新刊が出たようです。内容は少し難しそうですが、ぜひ読んでみましょう。

2017年1月13日金曜日

モルドバ知るために読んだ方がよさそうな本

画像:wikipediaより

ウクライナを知るために読んだ方がよさそうな本を書きましたが、実は同じ出張でモルドバへも行きます。モルディブではなく、モルドバです。ウクライナの隣にある、ヨーロッパの国です。モルドバに関する本も、紹介します。

概要

  • 六鹿 茂夫 (2007)『ルーマニアを知るための60章 エリア・スタディーズ』明石書店
モルドバなのに何でルーマニアなのという感じですが、モルドバ人とルーマニア人は同じ民族といってもよいのです。言語もかつては「モルドバ語」と言われていましたが、今では「ルーマニア語」に統一されています。このため、ルーマニアとモルドバの統合論もたびたび浮上します(今のEUとロシアの関係を見ると、しばらくは実現しないと思いますが)。モルドバへ行くにあたっては、ルーマニアのことも知っておいたほうがいいです。


歴史

  • 柴 宜弘 編(1998)『バルカン史 (世界各国史)』山川出版
「バルカン」といえば、バルカン半島の 旧ユーゴスラビア(スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、マケドニア)あたりを思い浮かべるでしょう。この本ではルーマニア・モルドバもバルカンの歴史に組み込まれて語られています。ウクライナの記事で紹介した『ポーランド・ウクライナ・バルト史 (世界各国史) 』と同じシリーズですが構成はちょっと違っていて、各国ごと独立させた項目はほとんどなく、時代ごとに地域全体の歴史が語られています。「モルドバの歴史だけ読みたい」というニーズを満たすのは難しいですが、地域全体の歴史を俯瞰できることがメリットです。


  • 黛 秋津(2013)『三つの世界の狭間で ―西欧・ロシア・オスマンとワラキア・モルドヴァ問題―』
未入手のため、中身を読めていません。本格的な歴史書のようです。amazonの紹介文には次のように書かれています。
世界史の「見えざる焦点」、そこでは何が起こっていたのか------。西欧・正教・イスラームの三つの世界が接する境域地帯に視点を定め、近代へと移行していく複雑な「世界の一体化」プロセスを、政治外交面から、多言語の一次史料に基づいてつぶさに描き出した、世界的にも稀有な労作。
中世から近代の歴史を深く掘り下げたい場合は、この本を読むとよいでしょう。


現代

現代のモルドバのみについてのまとまった本は、日本語では残念ながらありません。
ウクライナ・ベラルーシと併せて経済を解説した書籍はあります。
  • 服部 倫卓(2011)『ウクライナ・ベラルーシ・モルドバ経済図説』 ユーラシア・ブックレット, 東洋書店
amazonだと値段が跳ね上がっていますが、これは出版元の東洋書店が倒産して絶版になってしまったからです。もともとは定価1,000円もしない、薄い本ですのでご注意。著者のウェブサイト・ブログは非常に充実しているので、むしろモルドバ経済の最新情報はそちらを見たほうがいいかもしれません。


モルドバといえば、未承認国家「 沿ドニエストル共和国(トランスニストリア)」の問題があります。これはソ連末期に、ロシア人住民が多いこの地域がモルドバからの分離独立を宣言し、その後モルドバとの間で戦争となり、停戦となったものの現在まで事実上の独立状態が続いている、という問題です。
「 沿ドニエストル共和国」については、旧ソ連地域やロシアの国際関係を扱った本に記述があります。

例えば次の書籍。
  • 廣瀬 陽子(2008)『強権と不安の超大国・ロシア~旧ソ連諸国から見た「光と影」』光文社新書
アゼルバイジャンなどコーカサス地域の話がメインなのですが、沿ドニエストル問題についても書かれています(著者が当地に「入国」した話など)。
 あとは、本ではありませんが、次のニュース記事を読んでおくとよいでしょう。

モルドバ3銀行から10億ドル消失、受け手特定できず 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

モルドバの銀行から10億ドル(日本円だと1100億円以上ですか・・・)が消失したという、とんでもないニュース。

英語ですがこちらも。2015年の反政府運動の記事です。

BBC News - Moldova anger grows over banking scandal

私が2015年12月にモルドバへ行った時も、国会前にテント張って抗議運動やってましたね。近づきませんでしたが・・・。

こちらは、2016年に行われた大統領選を受けての記事。親ロシアの大統領が勝ちました。

欧州に取られた旧ソ連国をロシアに取り戻せ!-JBpress

言語

  • ニューエクスプレス ルーマニア語
前述のように、モルドバで話されているのはルーマニア語です。かつては「モルドバ語」と言われ、文字もキリル文字が使われていましたが、今は文字もルーマニア語と全く同じです。なのでルーマニア語ができればモルドバでも通じます。同じ言語ですから。


文化

  • 羽生 修二 (監修), 三宅 理一 (2009)『モルドヴァの世界遺産とその修復―ルーマニアの中世修道院美術と建築』西村書店
専門的な書籍ですが、遺産の保護や修復、教会美術に興味があれば読んでみるとよいでしょう。


 本当はモルドバ文学の本も紹介したかったのですが、日本語で読めるちょうどいいものが見つからなかったので断念。見つけ次第、掲載します。

2017年1月11日水曜日

ウクライナを知るために読んだ方がよさそうな本


出張でウクライナへ行くことになったので、その前に読んでおく本を探しました。amazonリンクも貼ったので、すぐに買えますよ(時々、リンクがうまく表示されないようです)。

歴史(全体)

ウクライナは世界史の教科書に出てくる「キエフ・ルーシ」の時代から長い歴史を持っています。ウクライナ史の全体像をつかめる本です。
  • 伊東 孝之・中井 和夫・井内 敏夫 編(1998)『ポーランド・ウクライナ・バルト史 (世界各国史) 』山川出版社
 
ポーランド、ウクライナ、バルト(エストニア、ラトビア、リトアニア)の歴史を合わせて叙述した一冊です。なぜこの地域を一冊でまとめたかは、読み進めると分かると思います。ウクライナ以外も同時に解説されていることで、各国の史観に偏らずに歴史を考えることができます(ただし、ウクライナだけで項目を立てている箇所も多いので、そこだけ読んでも勉強になります)。

  • 黒川 祐次(2002)『物語 ウクライナの歴史―ヨーロッパ最後の大国』中公新書
 
まだ中身を見てませんが…新書なので手頃で読みやすいと思います。読んだら簡単にレビューします。

現代(現代史・政治)

最近のウクライナ紛争に見られるように、20世紀初頭から現在まで、ウクライナは激動の時代を送っています。その現在進行形の状況とその背景を学べる本を探しました。

  • ティモシー・スナイダー(2015)『ブラッドランド : ヒトラーとスターリン大虐殺の真実(上)(下)』(布施由紀子訳)筑摩書房
 
ウクライナ、ベラルーシ、ポーランド、バルト諸国(流血地帯=ブラッドランド)で起こったドイツとソ連による虐殺を扱ったノンフィクションです。この時代の虐殺というと、ガス室送りや銃殺を連想しがちですが、本書で特に扱われる殺害方法は「餓死」です。
p.19「本書が伝えたいこと」には次の記述があります。
ドイツとソ連の殺戮場で使われた殺害方法はむしろ原始的だった。1933年から45年までのあいだに流血地帯で殺された1400万人の民間人と戦争捕虜は、食料を絶たれたためになくなっている。
ウクライナでは1930年代にひどい飢饉となり大量の餓死者が出たのですが、それがソ連による「人工的な飢饉」ではなかったかと言われています(これを「ホロドモール」という)。いくつかの政府や国際機関は、この飢饉を「ジェノサイド」または「人道に対する罪」と認定しています。


そして最近では、2014年の暴動に端を発するウクライナ紛争があります。その後のウクライナ情勢は非常に複雑で、偏向のない報道や書籍を探すのは至難のわざです。様々な書籍や報道を見比べていくのがいいと思います。

  • 現代思想 2014年7月号 特集=ロシア -帝政からソ連崩壊、そしてウクライナ危機の向こう側 – 2014/6/27
ウクライナ情勢について、国際関係のみならず、思想方面からの解説や批評が掲載されています。ただし、ウクライナ情勢の流れについてはまとめられていないので、基本的な事項を報道で再確認してから読むとよいでしょう。

言語

  • 中澤 英彦 (2009)『ニューエクスプレス ウクライナ語』白水社
ウクライナ語はスラヴ系の言語で、文法はロシア語と似ています。ただ、「ありがとう」や「愛している」といった基本的な語彙が全く違っていたり、「呼格」というロシア語にはない格があるなど、違う点はたくさんあります。ロシア語が通じるだろうという考えで行ってしまってはまずいと思います。ロシア語ができる人ほど、基本単語は覚えていきましょう。

文学

  • ゴーゴリ『鼻』
 
ロシア文学で有名な作家ゴーゴリですが、実はウクライナ出身なんですね。ただし当時はロシア帝国のいち地域でしたし、ウクライナ語ではなくロシア語で小説を書いていました。ウクライナ文学と言えるかは微妙ですが、ゴーゴリ作品に「ウクライナ性」を見出している文学研究者もいます。 ゴーゴリの作品はだいたい短く、ロシア文学特有の重々しさはあまりないので、ぜひ読みましょう。

ゴーゴリ「ディカーニカ近郷夜話」の神話論的分析. ―ゴーゴリのウクライナ性と. ウクライナをめぐるロシアのディスクール. 大野斉子.
  • アンドレイ・クルコフ(2004)『ペンギンの憂鬱』(沼野 恭子 訳)新潮社
ウクライナのロシア語作家が書いた作品です。「売れない短編小説家と憂鬱症のペンギンが同居する」という設定の、日常に不思議な、そして不条理な非日常が溶け込んだような作品です。

  • アンドレイ・クルコフ(2015)『ウクライナ日記 国民的作家が綴った祖国激動の155日』(吉岡 ゆき訳)ホーム社

『ペンギンの憂鬱』のクルコフが、ウクライナ紛争による激動の日々を綴った作品です。


紹介したい「ウクライナを知るために読んだ方がよさそうな本」は現在のところ以上ですが、いろいろと読んでいくうちに追加、補足があれば修正していきます。

2016年10月3日月曜日

海外出張の準備でよく使うウェブサービス

いまの仕事ではよく海外出張に行きます。1年間で10カ国くらいは行っています。何度も海外出張に行って、コツのようなものも掴んできました。
そこで、今回は海外出張の準備でよく使うウェブサービスをまとめてみます。

フライト

フライトスケジュールを調べたり、予約したりするには次のサービスをよく使います。

Skyscanner


フライト検索のサービスはいくつもありますが、ここが一番使いやすいと感じています。往復、片道だけではなくMulti way(複数の経由地)を検索できるところですね。

Flyteam

フライトスケジュールを旅行会社に丸投げや予約サイトで最初に出てきたもので決める場合は必要ないです。ただ、それでは理想のスケジュールが立てられないというときに、こちらを使って時刻表から調べます。分厚い時刻表を見ながら鉄道旅行のスケジュールを考えるような楽しさもあります。

宿泊

Booking.com

海外の宿泊予約には、これさえあれば何もいらない…というほど掲載件数が充実していますし、何より直感的で使いやすいです。一度登録すれば、3クリックくらいで予約が完了するようになっています。最近は国内出張・旅行の予約にもついつい使ってしまいます。
他には次のホテル予約サイトが有名です。

為替

ドルユーロ

宅配で外貨両替をしてくれるサービスです。ウェブサイトから申し込み、指定の口座に日本円を入金すると、ドルやユーロなど外貨が郵送される、という仕組みです。郵便局や銀行で両替するよりも手数料が安いです。時間に余裕があるときは使ってもいいかもしれませんね。お金が宅配で送られてくるのが不安かもしれませんが、筆者は今まで何度か使っていてトラブルはありません。

地図

Google Map (My Map)

訪問する場所を「マイマップ」機能を使って保存しておくと便利です。現地では、コピーして持って行き、タクシーの運転手に見せたりできます。さらに組織内でも共有すれば、今後同じ場所に行く人がわざわざもう一度訪問先の住所を調べる必要はなくなりますね。

まとめ

海外出張前は色々とバタバタとするので、こういった便利なサービスを使ってサクッと準備を終わらせたいですね。

2013年5月3日金曜日

ビシュケク(キルギス)の本屋事情

はじめに

キルギス共和国の首都・ビシュケク。 カザフスタンのアルマティと違い、本屋の数は非常に少ないです。 しかも、なかなか見つけづらいし、天候にも左右されます。
……天候?
どういうことか気になる方は、ぜひ読み進めてくださいね。 以下、ビシュケク市内の本屋情報です。
(情報は記事投稿時点のものです。状況の変化は大いに考えられるので、ご注意ください)

Раритет(ラリチェット)

市内に何店舗かある本屋さんです。 ロシア語の本がほとんどですが、キルギス語の本も僅かに置いてあります。
ロシア語の本については品揃えが豊富です。 デパートのテナントとしても出店していますが、 独立型の主要な店舗は次の2つです。

チュイ通り店(?)

住所:г. Бишкек, пр. Чуй, 271
チュイド大通り沿い、オシュバザール付近にあります。 看板は出ていますが、すぐには見つけられないかもしれません。 写真がなくて申し訳ありません(><)。 ここの特徴は、新品本と共に中古本も扱っているところです。 2階の、レジに向かって左側の小部屋に、古本が置いてあります。
状態のいい本や貴重な本があるので、大変重宝しました。

センター店(?)

住所:г. Бишкек, ул. Пушкина, 78
中心部・アラトー広場のすぐ脇にあります。 お店の看板付近の階段を少し下りた所が入り口となります。 「ここ、本当に本屋さんなの?」という感じの入り口ですが、 中に入ると意外と広い。 こちらもロシア語の本がメインです。 キルギス語の本、現地のロシア語出版物は本棚2つ分くらい。

Одиссей(オディッセイ)

住所:г. Бишкек, пр. Манаса, 40
多目的ホール「フィラルモーニア」の近くにあり、看板も出ており目につきやすい。 ここもロシア語の本が多いが、Раритетより現地出版物の品揃えは豊富な印象です。 Дом русской книги(ドーム・ルスコイ・クニーギ)

Нуска(ヌスカ)

住所:Эркиндик бульвар, 56(google mapで検索しても出ないので注意)
ビシュケク市内で、唯一キルギス語の本・現地出版物を専門に扱っている本屋さんです。 その意味で非常に貴重。店内はあまり広くないが、所狭しと本が積まれている…
とはいえ、「え、これだけ?」と思ってしまう程度の量ではある。 一度は行ってみよう。

露天

さて、以上が店舗なのですが、ビシュケクの面白い所は、 露天の本屋さんが割と充実しているところです。
私が知る限り、次の場所でよく露天の本屋さんを見かけます。

アラトー映画館前

いつも2つくらい島があり、それぞれ全く別の店なのか、 それとも提携しているのかよくわからない。
ロシア語の本とキルギス語の本をわりといい塩梅で揃えています。 新品の本が多いですが、すこし汚れていたりします(だからといって安い訳ではないです)。 他の店では扱っていないような、珍しい本を見かけることもあります。

キエフスカヤ・ソヴィエツカヤ

ツム(中央百貨店)付近、キエフスカヤ通り・ソヴィエツカヤ通り交差点のあたりに、 露天の古本屋さんが大小いくつかあります。
道端に本を広げているだけの店は、居るときと居ない時がありますが、 倉庫を持っているお店は、倉庫の前でいつも本を広げています。
それがこちら。
…犬が店番している(笑)
これは盗めませんね。
ちなみに、店主(?)は、とても気さくなおじさんです(右手前)。

まとめ

以上、ビシュケクの本屋さんを紹介しました。 冒頭で「充実していない」と言った割には、 書き出してみるとなかなか豊富にあるんじゃないかと思い直しました。 ビシュケクへお越しの際は、ぜひ現地でしか買えない本をお土産にしてみてはどうでしょう。

2013年4月5日金曜日

アルマティ(カザフスタン)の本屋事情

はじめに

筆者は、2013年の3月に中央アジア・カザフスタンの最大都市アルマティに行って参りました。 その時に、現地大学の教員からお勧めの本屋を教えていただいたので、その情報を投稿します! 何件かは実際に足を運んだので、店の様子も簡単に紹介します。

(情報は記事投稿時点のものです。ご注意ください)

Книжный город(クニージュニー ゴーラット:本の町)

http://www.bookcity.kz/ (住所:ул. Розыбакиева, 281, выше ТРК "Mega center Alma-Ata".)

アルマティで一番大きな本屋さんらしいです。 今回は時間が無くて行けませんでした…残念!

Гулянда(グリャンダ)

写真の通り、緑に黄色の文字が目印の、かわいらしい外見のお店です。 公式サイトによると、市内に4店舗あるらしいですね。 私は、トレ・ビ(Тле-би)通りの店舗に行きました。 1階は子供向けの本、2、3階に小説や専門書がありました。 私はここで、カザフの法律関係の小冊子を何冊か買いました。 カザフ語の書籍も充実しています。

Эрудит (エルジット)

(住所:Байтурсынова 79)

カザフ国立大東洋学部キャンパスの近くにあります。 市内に何店舗かあるようですが、このお店は小ぢんまりとしていました。 子供向けの本と、教科書、ビジネス書が多いという印象でした。

Никольский базар(ニコリスキー バザール)

カザフ国立大東洋学部キャンパスの近くにあるニコライ・バザールの中に、古本屋さんがあります。 売り子のおばちゃんが流暢な英語を話すので、びっくりしました。 古本は安くていいですね。一冊100テンゲ(約60円)くらいからありました。

ニコライ・バザールは「地球の歩き方」の地図にも載っているので、分かりやすいと思います。 古本屋は、交差点近くの、写真の入り口を入ってすぐのところにあります。

まとめ

アルマティは、隣国キルギスのビシュケクと比べると本屋が充実しているなあ、と感じました。 上に紹介したお店以外もたくさんあると思うので、 他のお店をご存知の方がいましたら、ぜひ情報をお寄せください。