日本ではあまり知名度の高くない、アゼルバイジャンという国について知ることができる本をまとめました。
私自身は、仕事で二度、アゼルバイジャンへ行っています。テレビ朝日「世界の街道をゆく」で特集が組まれていますが、非常に奥が深い国です。まず、こちらに紹介する本を読んで、基礎知識をつけましょう。
全般
定番ではありますが、明石書店のシリーズで「コーカサスを知るための60章」という本があるので、目を通してみましょう。アゼルバイジャンはコーカサス諸国(アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージア)の1つとして数えられるため、この地域全般の事情を、まず抑えておくと、アゼルバイジャンへの理解も深まります。とくにアルメニアとの関係は必ず知っておいてください。これを知らずにアゼルバイジャンへ行くと、いろいろな意味で危険です。
政治・国際関係
アゼルバイジャンの政治・国際関係について知るためには、慶応大学の廣瀬陽子先生の著作を読んでみるとよいでしょう。コーカサス全般や旧ソ連地域を扱った著作であっても、アゼルバイジャンに関する記述量が多い傾向にあります。かといってアゼルバイジャンびいきという訳でもなく、中立的な視点から書かれています。
経済・ビジネス
ビジネスに関しては、こちらの本を読むと事情が分かるでしょう。注意したいのは、この本が出版される少し前までは、石油価格が高値を維持しており、産油国であるアゼルバイジャンの経済も好調だったということです。その後、石油価格は大幅に下落し、アゼルバイジャン経済は苦境に立たされています。しかし、だからといってアゼルバイジャン経済が崩壊した訳でもなく、まだまだポテンシャルは高いと思います。その一端を垣間見たい方にはおすすめの一冊です。
言語
アゼルバイジャンでは、アゼルバイジャン 語という言語が話されています。「アゼリ語」、「アゼリ・トルコ語」と言われる場合もありますが、現在の公式な呼び方は「アゼルバイジャン語」です。アゼルバイジャン語はトルコ語、カザフ語、ウズベク語などが含まれるテュルク系の言語の中でも、特にトルコ語と非常に近く、通訳なしでほとんどお互いに理解できます。そこで、かつては「トルコ語」と公式に呼ばれていた時期もありました。そんなアゼルバイジャン語、日本でもいくつか教科書や辞典が出版されています。
また、言語政策に興味があれば、下記の論集を読むとよいでしょう。アゼルバイジャンの言語政策に関する論文が掲載されています。
岡洋樹編(2011)「歴史の再定義 : 旧ソ連圏アジア諸国における歴史認識と学術・教育」(東北アジア研究センター叢書:第45号)
まとめ
アゼルバイジャン人は長い間、トルコ民族とほぼ同じ民族として見られ、また彼ら自身でも「アゼルバイジャン人」としてのアイデンティティーが昔からあった訳ではありません。現在の形で「アゼルバイジャン人」のアイデンティティーが形成されたのは20世紀に入ってからです。かと言ってトルコと全てが一体なのかというと、そういう訳でもありません。重層的に色々なものが重なって出来上がっている国です。決して「産油国で金満なトルコ人国家」ではありません。一度は現地へ行ってみることをオススメします。
追記: 「アゼルバイジャン人」というアイデンティティー形成について、新刊が出たようです。内容は少し難しそうですが、ぜひ読んでみましょう。