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2017年4月25日火曜日

オルハン・パムク『僕の違和感』:現代トルコの半世紀を追体験する


「ロシア文学が好き」、「フランス文学が好き」という人は容易く見つかるが、「トルコ文学が好き」という人はあまり多くないでしょう。

今回紹介するのは、現代トルコで最も有名な作家オルハン・パムクの『僕の違和感』(2016)です。

オルハン・パムクとは

オルハン・パムクは、1952年トルコのイスタンブール生まれ。イスタンブール工科大学で建築を学び、イスタンブール大学でジャーナリズムの学位を取得。その後、コロンビア大学客員研究員としてアメリカに滞在。作家デビューは1982年の『ジェヴデット氏と息子たち』(オルハン・ケマル小説賞受賞)。その後も数々の 文学賞を受賞。2006年にはノーベル文学賞を受賞。代表作は『わたしの名は赤』、『雪』、『無垢の博物館』 など。

パムク氏の経歴は、公式サイト(英語)を見るのが一番でしょう。今の時代、小説家も自分のウェブサイトを持っているんですね。
日本語の場合は、Wikipedia、藤原書店の紹介が参考になります。
ノーベル賞受賞時に一気に知名度が高まりましたが、それから数年が経ち、日本での知名度は低くなっていると思います。ただ執筆意欲は旺盛で、2016年には最新作"Hatıraların Masumiyeti"(英題:The Red-Haired Woman)を刊行しました。

パムクは、トルコの特にイスタンブールを舞台とした作品を多く描いており、オスマン帝国時代〜現代まで、異なる時代のイスタンブールを登場させています。

2016年に和訳が刊行された『僕の違和感』も、イスタンブールを舞台にした作品です。それでは、作品について紹介します。

『僕の違和感』あらすじ

本書は上下巻の長編小説で、1950年代から2012年までのおよそ半世紀の間の、主人公メヴルト・カラタシュとその家族、親戚、友人たちの半生を描いた物語です。
主人公メヴルト・カラタシュは、12歳で故郷の村からイスタンブールへ移り住み、父と共にトルコの伝統飲料”ボザ”を売り歩くようになる。大都会の生活に馴染む中、同じく村から出てきたいとこの結婚披露宴で、美しい少女に一目惚れする。その後、熱烈な恋文を送り続け、ついには駆け落ちを実行するーー。
物語冒頭は、この駆け落ちの場面から始まります。駆け落ち自体は成功しましたが、その後とんでもない事実にメヴルトは気づきます。この駆け落ちした相手が、披露宴で一目惚れした少女ではなく、その姉だったのです。しかしメヴルトは、それに気づきながらも、一目惚れした少女の姉”ライハ”と、苦労しながらも幸せな家庭を築いていきます。

物語はその後、メヴルトの子供時代に戻り、イスタンブールへの移住、学校生活、ボザ売りの仕事、ライハとの駆け落ち・結婚、出産・・・と時代は冒頭に戻り、さらに先へと進んでいきます。その中で、メヴルトとメヴルトの周囲では様々な出来事が起こります。クルド人の親友フェルハトとの出会い、徴兵、仕事の失敗、住民同士の抗争・・・等々。こういったそれぞれの物語が、相互に絡まりながら、まるで舞台脚本のように様々な登場人物の口から語られていく形式になっています。

続いて感想を書きますが、先入観なく本作を読みたい場合はここで止めて、本を入手してください。


感想

圧巻、の一言です。主人公はごく平凡な、心優しい青年に過ぎません。何ら特別な存在ではなく、その時代に田舎から大都会へ出てきた何百万というトルコ人青年の一人です。大きな陰謀に巻き込まれるわけでもありません。確かに駆け落ちは劇的のように感じますが、許され難いものの実はよくある手段であり、主人公メヴルトが最初に恋した相手も別の男性と駆け落ちをしています。主人公以外の登場人物もそれぞれ、ごくありふれた人々です。それにも関わらず、緻密な構成と描写により、物語としても飽きることなく、トルコの半世紀を生きたそれぞれの人物の息遣いが活き活きと感じられます。

何よりも素晴らしいのは、イスタンブールという都市の描写です。これまでに幾度となくイスタンブールを描いてきた作家だけあって、イスタンブールの半世紀の劇的な変化が、主人公メヴルトの視点から丁寧に描かれています。メヴルトは伝統飲料”ボザ”を売るために、イスタンブールの路地を日々歩き続けます。路地から見える、変わり続ける都市の風景を、時に喜び、時に寂しく思うメヴルト。私はイスタンブールの空港にしか行ったことがありませんが、本書を読み、イスタンブールが何年か暮らした街のように郷愁を感じられるようになりました。

また、イスタンブールだけではなく、トルコの半世紀を追体験できるといってもよいでしょう。周知の通り、現代トルコはケマル・アタチュルクが打ち建てた世俗主義の国家です。しかし最近のトルコを見てわかる通り、イスラム教はトルコ社会と不可分のもので、世俗主義と信仰心の間で揺れ動くメヴルトや社会の様子も描かれています。世俗主義に加えて社会主義が一部の支持を集めた時代もあり、作中の人物も関わりを持ちます。クルド人というキーワードもよく出ます。そして後半では、資本主義国家として急成長したトルコ社会も描かれます。こういった変化が、歴史として解説されるのではなく、登場人物の口から語られるのです。メヴルトは何かひとつの思想の熱心な信奉者ではなく、どちらかというと冷めた視点で、社会の変化と向き合っています。

トルコとイスタンブールの半世紀の描写、というのは本作の大きな魅力であることは確かです。それと同時に、決してこれはトルコ土着の文学ではなく、それぞれの人生を歩む全ての人に向けた文学だと、思います。私は、最後の一文でそのことを感じました。

まとめ

文学作品の評価が定まるまでは時間がかかりますが、オルハン・パムク『僕の違和感』は、間違いなく名作の一つとなると思います。日本ではあまり話題にされない海外文学の中の、さらにマイナーなトルコ文学で、この作品を知る人が少ないことが残念です。宮下遼さんの日本語訳は読みやすく、登場人物の相関図も載っているので、海外文学が苦手でも抵抗なく読めると思います。

そして本書を読んでパムクに興味を持ったら、他の作品も読んでみると良いでしょう。主な作品には日本語訳があります。



また、現代トルコの歴史に興味を持ったら、最近刊行された新書『トルコ現代史』に目を通してみましょう。

パムク作品については、また取り上げたいと思います。

2017年1月13日金曜日

モルドバ知るために読んだ方がよさそうな本

画像:wikipediaより

ウクライナを知るために読んだ方がよさそうな本を書きましたが、実は同じ出張でモルドバへも行きます。モルディブではなく、モルドバです。ウクライナの隣にある、ヨーロッパの国です。モルドバに関する本も、紹介します。

概要

  • 六鹿 茂夫 (2007)『ルーマニアを知るための60章 エリア・スタディーズ』明石書店
モルドバなのに何でルーマニアなのという感じですが、モルドバ人とルーマニア人は同じ民族といってもよいのです。言語もかつては「モルドバ語」と言われていましたが、今では「ルーマニア語」に統一されています。このため、ルーマニアとモルドバの統合論もたびたび浮上します(今のEUとロシアの関係を見ると、しばらくは実現しないと思いますが)。モルドバへ行くにあたっては、ルーマニアのことも知っておいたほうがいいです。


歴史

  • 柴 宜弘 編(1998)『バルカン史 (世界各国史)』山川出版
「バルカン」といえば、バルカン半島の 旧ユーゴスラビア(スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、マケドニア)あたりを思い浮かべるでしょう。この本ではルーマニア・モルドバもバルカンの歴史に組み込まれて語られています。ウクライナの記事で紹介した『ポーランド・ウクライナ・バルト史 (世界各国史) 』と同じシリーズですが構成はちょっと違っていて、各国ごと独立させた項目はほとんどなく、時代ごとに地域全体の歴史が語られています。「モルドバの歴史だけ読みたい」というニーズを満たすのは難しいですが、地域全体の歴史を俯瞰できることがメリットです。


  • 黛 秋津(2013)『三つの世界の狭間で ―西欧・ロシア・オスマンとワラキア・モルドヴァ問題―』
未入手のため、中身を読めていません。本格的な歴史書のようです。amazonの紹介文には次のように書かれています。
世界史の「見えざる焦点」、そこでは何が起こっていたのか------。西欧・正教・イスラームの三つの世界が接する境域地帯に視点を定め、近代へと移行していく複雑な「世界の一体化」プロセスを、政治外交面から、多言語の一次史料に基づいてつぶさに描き出した、世界的にも稀有な労作。
中世から近代の歴史を深く掘り下げたい場合は、この本を読むとよいでしょう。


現代

現代のモルドバのみについてのまとまった本は、日本語では残念ながらありません。
ウクライナ・ベラルーシと併せて経済を解説した書籍はあります。
  • 服部 倫卓(2011)『ウクライナ・ベラルーシ・モルドバ経済図説』 ユーラシア・ブックレット, 東洋書店
amazonだと値段が跳ね上がっていますが、これは出版元の東洋書店が倒産して絶版になってしまったからです。もともとは定価1,000円もしない、薄い本ですのでご注意。著者のウェブサイト・ブログは非常に充実しているので、むしろモルドバ経済の最新情報はそちらを見たほうがいいかもしれません。


モルドバといえば、未承認国家「 沿ドニエストル共和国(トランスニストリア)」の問題があります。これはソ連末期に、ロシア人住民が多いこの地域がモルドバからの分離独立を宣言し、その後モルドバとの間で戦争となり、停戦となったものの現在まで事実上の独立状態が続いている、という問題です。
「 沿ドニエストル共和国」については、旧ソ連地域やロシアの国際関係を扱った本に記述があります。

例えば次の書籍。
  • 廣瀬 陽子(2008)『強権と不安の超大国・ロシア~旧ソ連諸国から見た「光と影」』光文社新書
アゼルバイジャンなどコーカサス地域の話がメインなのですが、沿ドニエストル問題についても書かれています(著者が当地に「入国」した話など)。
 あとは、本ではありませんが、次のニュース記事を読んでおくとよいでしょう。

モルドバ3銀行から10億ドル消失、受け手特定できず 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

モルドバの銀行から10億ドル(日本円だと1100億円以上ですか・・・)が消失したという、とんでもないニュース。

英語ですがこちらも。2015年の反政府運動の記事です。

BBC News - Moldova anger grows over banking scandal

私が2015年12月にモルドバへ行った時も、国会前にテント張って抗議運動やってましたね。近づきませんでしたが・・・。

こちらは、2016年に行われた大統領選を受けての記事。親ロシアの大統領が勝ちました。

欧州に取られた旧ソ連国をロシアに取り戻せ!-JBpress

言語

  • ニューエクスプレス ルーマニア語
前述のように、モルドバで話されているのはルーマニア語です。かつては「モルドバ語」と言われ、文字もキリル文字が使われていましたが、今は文字もルーマニア語と全く同じです。なのでルーマニア語ができればモルドバでも通じます。同じ言語ですから。


文化

  • 羽生 修二 (監修), 三宅 理一 (2009)『モルドヴァの世界遺産とその修復―ルーマニアの中世修道院美術と建築』西村書店
専門的な書籍ですが、遺産の保護や修復、教会美術に興味があれば読んでみるとよいでしょう。


 本当はモルドバ文学の本も紹介したかったのですが、日本語で読めるちょうどいいものが見つからなかったので断念。見つけ次第、掲載します。

2017年1月11日水曜日

ウクライナを知るために読んだ方がよさそうな本


出張でウクライナへ行くことになったので、その前に読んでおく本を探しました。amazonリンクも貼ったので、すぐに買えますよ(時々、リンクがうまく表示されないようです)。

歴史(全体)

ウクライナは世界史の教科書に出てくる「キエフ・ルーシ」の時代から長い歴史を持っています。ウクライナ史の全体像をつかめる本です。
  • 伊東 孝之・中井 和夫・井内 敏夫 編(1998)『ポーランド・ウクライナ・バルト史 (世界各国史) 』山川出版社
 
ポーランド、ウクライナ、バルト(エストニア、ラトビア、リトアニア)の歴史を合わせて叙述した一冊です。なぜこの地域を一冊でまとめたかは、読み進めると分かると思います。ウクライナ以外も同時に解説されていることで、各国の史観に偏らずに歴史を考えることができます(ただし、ウクライナだけで項目を立てている箇所も多いので、そこだけ読んでも勉強になります)。

  • 黒川 祐次(2002)『物語 ウクライナの歴史―ヨーロッパ最後の大国』中公新書
 
まだ中身を見てませんが…新書なので手頃で読みやすいと思います。読んだら簡単にレビューします。

現代(現代史・政治)

最近のウクライナ紛争に見られるように、20世紀初頭から現在まで、ウクライナは激動の時代を送っています。その現在進行形の状況とその背景を学べる本を探しました。

  • ティモシー・スナイダー(2015)『ブラッドランド : ヒトラーとスターリン大虐殺の真実(上)(下)』(布施由紀子訳)筑摩書房
 
ウクライナ、ベラルーシ、ポーランド、バルト諸国(流血地帯=ブラッドランド)で起こったドイツとソ連による虐殺を扱ったノンフィクションです。この時代の虐殺というと、ガス室送りや銃殺を連想しがちですが、本書で特に扱われる殺害方法は「餓死」です。
p.19「本書が伝えたいこと」には次の記述があります。
ドイツとソ連の殺戮場で使われた殺害方法はむしろ原始的だった。1933年から45年までのあいだに流血地帯で殺された1400万人の民間人と戦争捕虜は、食料を絶たれたためになくなっている。
ウクライナでは1930年代にひどい飢饉となり大量の餓死者が出たのですが、それがソ連による「人工的な飢饉」ではなかったかと言われています(これを「ホロドモール」という)。いくつかの政府や国際機関は、この飢饉を「ジェノサイド」または「人道に対する罪」と認定しています。


そして最近では、2014年の暴動に端を発するウクライナ紛争があります。その後のウクライナ情勢は非常に複雑で、偏向のない報道や書籍を探すのは至難のわざです。様々な書籍や報道を見比べていくのがいいと思います。

  • 現代思想 2014年7月号 特集=ロシア -帝政からソ連崩壊、そしてウクライナ危機の向こう側 – 2014/6/27
ウクライナ情勢について、国際関係のみならず、思想方面からの解説や批評が掲載されています。ただし、ウクライナ情勢の流れについてはまとめられていないので、基本的な事項を報道で再確認してから読むとよいでしょう。

言語

  • 中澤 英彦 (2009)『ニューエクスプレス ウクライナ語』白水社
ウクライナ語はスラヴ系の言語で、文法はロシア語と似ています。ただ、「ありがとう」や「愛している」といった基本的な語彙が全く違っていたり、「呼格」というロシア語にはない格があるなど、違う点はたくさんあります。ロシア語が通じるだろうという考えで行ってしまってはまずいと思います。ロシア語ができる人ほど、基本単語は覚えていきましょう。

文学

  • ゴーゴリ『鼻』
 
ロシア文学で有名な作家ゴーゴリですが、実はウクライナ出身なんですね。ただし当時はロシア帝国のいち地域でしたし、ウクライナ語ではなくロシア語で小説を書いていました。ウクライナ文学と言えるかは微妙ですが、ゴーゴリ作品に「ウクライナ性」を見出している文学研究者もいます。 ゴーゴリの作品はだいたい短く、ロシア文学特有の重々しさはあまりないので、ぜひ読みましょう。

ゴーゴリ「ディカーニカ近郷夜話」の神話論的分析. ―ゴーゴリのウクライナ性と. ウクライナをめぐるロシアのディスクール. 大野斉子.
  • アンドレイ・クルコフ(2004)『ペンギンの憂鬱』(沼野 恭子 訳)新潮社
ウクライナのロシア語作家が書いた作品です。「売れない短編小説家と憂鬱症のペンギンが同居する」という設定の、日常に不思議な、そして不条理な非日常が溶け込んだような作品です。

  • アンドレイ・クルコフ(2015)『ウクライナ日記 国民的作家が綴った祖国激動の155日』(吉岡 ゆき訳)ホーム社

『ペンギンの憂鬱』のクルコフが、ウクライナ紛争による激動の日々を綴った作品です。


紹介したい「ウクライナを知るために読んだ方がよさそうな本」は現在のところ以上ですが、いろいろと読んでいくうちに追加、補足があれば修正していきます。

2016年12月27日火曜日

JASSO留学支援奨学金のネ申エクセル問題について

自民党の河野太郎議員が、科研費の申請書などで使われている、非常に扱いづらく煩雑なエクセルファイル、通称「ネ申エクセル(または神エクセル、以下「神エクセル」)」を廃止するよう提言したことが話題となっています。

データとして役立たない「神エクセル」問題に解決の兆し 河野太郎議員が文科省へ全廃を指示

これに似た問題が、JASSO(日本学生支援機構)留学支援奨学金関係の神エクセル問題です。すでにどなたかが問題提起されているかもしれませんが、大学で国際交流に携わっている私からも、問題提起させてください。

※ネ申(神)Excelについては三重大学の奥村先生が書かれた論文に詳しいので、そちらを参照してください:「ネ申Excel」問題

JASSO留学支援奨学金とは

JASSO(日本学生支援機構)は、経済的に支援が必要な学生を対象に奨学金を提供している独立行政法人です。JASSOの奨学金は返済が必要であり、実質は学生ローン。奨学金の返済ができずに破産する例が相次ぐなど社会問題となり、平成29年度からは返済不要の奨学金が始まります。

実はこのJASSO、通常の奨学金の他に、海外留学をする学生、また海外から日本へ受け入れる学生に対して返済不要の奨学金も支給しています。今回取り上げたいのは、大学間協定に基づく交換留学を支援する奨学金にまつわる書類についてです。

JASSOが提供する神Excelについて

まずは、日本人学生の海外留学を支援する、JASSO(日本学生支援機構)協定派遣のページをご覧ください。

http://www.jasso.go.jp/ryugaku/tantosha/study_a/short_term_h/2016.html

平成28年度海外留学支援制度(協定派遣)事務手続きについて>「1.事務手続きの手引き・様式等」のところに、大学の海外派遣担当者が提出しなければいけない書類が掲載されています。

ぜひ、1つ1つ、Excelファイルをダウンロードして中身を見てみてください。

例えば、平成28年度海外留学支援制度(協定派遣)登録データ
留学期間を数値で入力すると、右の 月別に別れた列に、自動で ○ が入力されていきます。高機能です。「開始月と終了月の合算日数(BF)」列が閏年で計算される不具合」があったようですが、つい先日、修正されたようです。


・・・めまいがしてきませんか?

この他にも、提出すべきExcelファイルは盛りだくさんです。非常に神々しいExcelファイルの数々です。あまりの煩雑さに、毎年、毎月、留学担当者たちは悲鳴をあげているのです。しかも様式が年度によって変わったりするのがまた大変で・・・。

職員だけでなく、学生も大変です。奨学金を受給した学生は、受給期間終了後にいくつかの書類を出す必要がありますが、そのうちの一つがこれ:平成28年度海外留学支援制度(協定派遣)報告書関係様式(様式G~J) 。「様式H-3」というシートをご覧ください。Excelで、横にずーーーっと続くアンケートに回答しなければいけません。小さな正方形の中に回答を入力しないといけないのです。学生はお金をもらっている側なので、文句は言えません。粛々と回答して提出してくれます。


これを提出されて集計する方のJASSO職員の方々も、おそらく相当な苦労をされているはずです。ちなみに大学からJASSOへの提出は、一部は紙で、一部はExcelで、となっているみたいです。

その背景について推測

なぜこのような 神エクセルが誕生してしまったのか。私はJASSO内部の者ではないので、その背景は分かりませんが、推測はできます。

JASSOの留学支援奨学金は、借り手からの返済で成り立っている通常の奨学金と違い、国の予算から直接支出されているものです。なので、きちんと目的に適った利用がされているという証拠を残さねいけません。よって、誰に対して奨学金が支給され、どのような効果があって、という情報を、できるだけ細かく蓄積しておかないとならないのでしょう。

しかし、このような煩雑な書類作成ばかり求められるとなると、大学ではそれなりの数の事務スタッフが必要ですし、JASSOでもスタッフが必要となります。その人件費や、掛けられている膨大な時間をもっと有意義なことに使えるのではと思います。

解決策は?

エクセルを廃止して全てをウェブシステム化…というのが理想かもしれませんが、システム化にはデメリットがつきものです。下手なシステムを作ってしまうと、エクセルよりも作業が煩雑になってしまい、かつ莫大な制作コスト、運用コストがかかります。まずは現状の運用方式での簡素化・合理化、業務フローの見直し、一部のシステム化などから始めてもよいのではと思います。

私は末端のいち担当者なので何の力もありませんが、とにかく、ここにも「 神エクセル問題」があることを知っていただけたら幸いです。

2016年10月27日木曜日

簡単!スケジュール自動共有&リマインドサービスをZapierで作る

Zapierとは

Zapierは、いろいろなウェブサービスを連携させて処理を自動化するサービスです。例えば、Twitterにメンションが届いたらSlack(チャットアプリ)に知らせてくれる、instagramで新しい写真を投稿したらDropboxに追加する、Evernoteに新しいノートを作ったらGoogleスプレッドシート行を追加する・・・などの自動処理が、難しい知識なしで簡単に実現できます。連携できるサービスは728種類(2016年10月22日時点。筆者が指で数えた(笑))もあるので、いく通りもの組み合わせで自動処理が実現できます。

似たようなサービスにはiftttやMythingsなどがあります。もともとiftttが有名でしたが、最近はZapierが目立って台頭してきました。My thingsは日本のyahooが運営しているサービスなので、日本発サービス(はてな!など)との連携に強みがありますね。

見本

このZapierを使ってどんなものができるか、具体的に紹介します。

紹介したいのは、私が運営している「ユーラシアイベントガイド」です。これは、ロシア、中央アジアなど旧ソ連圏に関するイベント(講演会など)をFacebookやTwitter で紹介し、かつTwitterでは開催前日になるとリマインドのツイートをするという、イベント共有サービスのようなものです。こういったイベントの情報は、これまでは様々な情報ソース(メーリングリスト、ウェブサイト、個人のFacebookフィードなど)で紹介されていましたが、それを一元化してより広い層に情報を届けようと狙ったものです。
このサービスの仕組みですが、次のようになっています。
  1. Google カレンダーにイベント情報を登録する
  2. Facebook、Twitterでイベント情報が自動で投稿される
  3. イベント前日になるとTwitterでリマインドの投稿が自動でされる
図で書くとこんな感じです。


今回は、これとほぼ同じ機能を持った自動連携機能(「Zap(ザップ)」と言います)をZapierで作ってみましょう。

作ってみよう

準備するもの

  • Zapierアカウント
  • Facebookページアカウント(無ければ個人のFacebookアカウント)
  • Twitterアカウント
  • Googleアカウント

おおまかな流れ

おおまかな流れは、次の3ステップです。
  1. Triggerを設定
  2. Actionを設定
  3. ZAPをON!
それでは、開始しましょう。

Zapierにログイン

新規登録し、ログインするとこのような画面になりますが、右上の「MAKE A ZAP!」をクリックします。

Triggerを設定する

まずどのサービスでどういったイベントが発生したら処理を開始するかを設定します。ここではGoogleカレンダーを選びます。


アカウントと連携する

自分のGoogleアカウントとZapierを連携させる設定を行います。Zapierとの連携を許可してください。

Trigger イベントを決める

どんな動作があったら処理を開始するか決めます。New Event Searchの場合は、条件にあったイベントが登録された場合、Event Startはイベント開始の一定期間前になったら、New Eventは新規イベントが登録されたら、という意味です。


使用するカレンダーをきめる

Googleカレンダーでは、プライベート用、仕事用、複数のカレンダーを作ることができます。連携に使用する、公開してよいカレンダーを選びましょう。

テストする

ちゃんとGoogleカレンダーの情報が取得できるか、テストしてみましょう。この時、カレンダーになんらかのイベントが登録されていないとうまくいきません。テストができたら、Triggerの設定は終わりです。


Action を設定する

「カレンダーに予定が登録されたらTwitterでツイートする」という設定をしましょう。

アカウントと連携する

この画面でTwitterを選択し、アカウントと連携させます。


Action イベントを決める

「カレンダーに予定が登録されたらTwitterで・・・する」の・・・の部分を決めます。Twitterは、ツイートする、画像付きツイートをする、ユーザーをリストへ追加する、ユーザーを検索する、などのActionができます。ここでは「Create Tweet」を選びましょう。


テンプレートを作る

次に、Tweetでどんな投稿をするか、テンプレートの文章を作りましょう。Googleカレンダーと連携した場合、日付、場所、開始時間、件名などを自動で取得できます。それを枠内に並べ、間や冒頭、末尾に文章を加えることができます。


テストする

カレンダーから予定を取り込み、ツイートできるかテストしてみましょう。


ONにする

Dashboardへ行くと、自分の作った「Zap」一覧があるので、いま作ったZapをONにしましょう。すると、カレンダーに予定を登録すると数分後に自動的にツイートが投稿されるようになります。



他の連携

Facebookと連携する場合、新しくZapを設定し、Action の部分をFacebookに変えればいいだけです。

Twitterでイベント前日にツイートする場合、はじめのTrigger設定でEvent Startを選び、何日前(または時間単位でも設定できる)にリマインドするか設定しましょう。あとは上記のTwitterの設定と同じです。

注意

無料だと、Zapを3つまでしか実行できない、処理は150回まで、などの制限があります。大量に処理を行う場合は有料プランを契約しましょう。ちなみに「ユーラシアイベントガイド」は無料プランで使えています。

まとめ:何ができるか考えてみよう

今回は自動イベント共有サービスの作り方を紹介しましたが、いかがでしょうか?意外と簡単なのではないでしょうか?

ZapierではGoogleカレンダー、Facebook、Twitter以外にも色々なアプリと連携しているので、どんな自動処理ができ、そして日々の生活や仕事をどう効率よくできるか、考えてみましょう。何かいい「Zap」を思いついたらぜひ教えてください。

2016年10月3日月曜日

海外出張の準備でよく使うウェブサービス

いまの仕事ではよく海外出張に行きます。1年間で10カ国くらいは行っています。何度も海外出張に行って、コツのようなものも掴んできました。
そこで、今回は海外出張の準備でよく使うウェブサービスをまとめてみます。

フライト

フライトスケジュールを調べたり、予約したりするには次のサービスをよく使います。

Skyscanner


フライト検索のサービスはいくつもありますが、ここが一番使いやすいと感じています。往復、片道だけではなくMulti way(複数の経由地)を検索できるところですね。

Flyteam

フライトスケジュールを旅行会社に丸投げや予約サイトで最初に出てきたもので決める場合は必要ないです。ただ、それでは理想のスケジュールが立てられないというときに、こちらを使って時刻表から調べます。分厚い時刻表を見ながら鉄道旅行のスケジュールを考えるような楽しさもあります。

宿泊

Booking.com

海外の宿泊予約には、これさえあれば何もいらない…というほど掲載件数が充実していますし、何より直感的で使いやすいです。一度登録すれば、3クリックくらいで予約が完了するようになっています。最近は国内出張・旅行の予約にもついつい使ってしまいます。
他には次のホテル予約サイトが有名です。

為替

ドルユーロ

宅配で外貨両替をしてくれるサービスです。ウェブサイトから申し込み、指定の口座に日本円を入金すると、ドルやユーロなど外貨が郵送される、という仕組みです。郵便局や銀行で両替するよりも手数料が安いです。時間に余裕があるときは使ってもいいかもしれませんね。お金が宅配で送られてくるのが不安かもしれませんが、筆者は今まで何度か使っていてトラブルはありません。

地図

Google Map (My Map)

訪問する場所を「マイマップ」機能を使って保存しておくと便利です。現地では、コピーして持って行き、タクシーの運転手に見せたりできます。さらに組織内でも共有すれば、今後同じ場所に行く人がわざわざもう一度訪問先の住所を調べる必要はなくなりますね。

まとめ

海外出張前は色々とバタバタとするので、こういった便利なサービスを使ってサクッと準備を終わらせたいですね。

2014年10月30日木曜日

第1回日本人キルギス語スピーチコンテスト 開催される

※過去に「ユーラシアイベントガイド」で公開した記事の転載です。

※第2回キルギス語スピーチコンテストが開催されるようです。詳細はこちらから

10月26日(日)、東京都目黒区の在日キルギス共和国大使館にて、第1回日本人キルギス語スピーチコンテストが開催された。
日本人の出場者は6名。第1回ということで、スピーチの時間に厳しい制限は無く、原稿を見ながらの発表も許されていた。

ゆるやかなルールではあったが、参加者は、主催者が想定した以上に十分な準備をして望んだ。
まず、キルギスの伝統楽器「コムズ」奏者の池田さんは、コムズの特徴や魅力を分かりやすく語った。

次に、青年海外協力隊員として2年間キルギスに滞在した桑山さんは、キルギス語・日本語辞書を作るに至った経緯を、ユーモアたっぷりに話した。続いて、東北大4年の永野さんは、東北の古代史についてのアカデミックなスピーチをキルギス語で行った。ロシア語教師の杉原さんは、キルギスで参加した結婚式の思い出を楽しげに話した。永野さんと同じく東北大4年の笹川さんは、東日本大震災の記憶と、復興の様子を真剣な眼差しで語った。最後に、キルギスで働いた経験のある檜垣さんは、キルギスでの生活を原稿を見ずに語り、最後にキルギス語、ロシア語、日本語の3言語での歌も披露した。
発表する参加者の様子(駐日キルギス共和国大使館Facebookページより)

実力者揃いの中、優勝を決めたのは桑山さん。

優勝商品のキルギスの民族衣装(上着と帽子)を身につけた桑山さんは「優勝どうこうよりも、こういう機会に集まれるのがうれしい。トルコ語をやっていてキルギス語も始めた学生さん、コムズからキルギスに興味を持った人など、いろいろなご縁の方と出会うことができた」と語り、キルギス語を通じて生まれた繋がりを喜んだ。
審査委員長を務めた駐日キルギス大使のモロドガジエフ・リスベク氏は、スピーチコンテスト開催の目的について、1つ目は「キルギスのことをもっと知ってもらうこと」とし、2つめの目的については「最近はキルギス語を話せる、キルギスのことを深く理解している日本人がますます増えている。そういった人たちを励ましたかった」と語った。
審査委員は、モロドガジエフ大使のほか、来日中のキルギス共和国文部科学省「キルギステストシステム」代表のバトマ・トポエヴァ・スタヴィンスカヤ氏など、あわせて4名。
モロドガジエフ大使は「今年は一回めだが、これからも毎年開催したい」と、今後のキルギス語スピーチコンテストの継続に意欲を示した。
※キルギス共和国は中央アジアの独立国家。中国やカザフスタンと国境を接する。人口約550万人。憲法により、国家語がキルギス語、公用語がロシア語と規定されている。

結果発表を聞く参加者(左)、コメントを発表する審査員(右奥)