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2017年10月24日火曜日

Microsoft Teamsの研究1:タブ機能は地味だけどいろいろ使える!

以前の記事(教育現場でチャットツールを使うメリット・デメリット)で、大学でのチャットツール導入に悲観的な見解を書きましたが、職場でOffice365のチャットツール・Teamsが利用できるようになったので、早速いろいろと試しています。

利用できるといっても、職場全体で導入された訳でなく、あくまで「使いたい人が使える」状態にすぎません(そして使っている人はほとんどいないと思われます)。

正直、Microsoft Teamsは、有名なビジネスチャットアプリ「Slack」のパクリという認識しかなかったのですが、使ってみるとこれは全く別モノで、優れた点も多々あると思ったので、少しずつまとめてみます。

今回は、Teamsの「タブ」機能について紹介します。

※ 筆者の利用しているサービスはOffice365 Educationであり、ビジネス向けOffice365とは若干、仕様が異なります。

※ 関連記事
Zoom以外のオンライン授業用コミュニケーションツールを比べてみた(Google Meet / Microsoft Teams)

2020/4/8 追記
現在、新型コロナウィルスの感染拡大を受けた在宅勤務の増加で、この記事へのアクセス数が増えています。在宅勤務を増やす・また生産性を向上させるため、Teamsの使い方で気になる点があればお問合せフォームかコメント欄からご連絡ください。
可能な限りブログ記事にし、微力ながら在宅勤務の導入・効率化に貢献したく思います。

タブ機能とは

こちらがTeamsの画面です。Mac用のアプリケーションですが、Windowsでも大体同じです。


画面右上のほうに、「会話」「ファイル」といった文字があります。これをクリックすると、ブラウザのようにタブが切り替わります。

「ファイル」のタブにするとこんな感じ。



チャットグループ(Teamsでは「チャネル」という)内のファイル一覧を表示する機能はSlackなど他のチャットアプリでもよくある機能です。

Teamsの面白いところは、タブの一番右にある「+」を押して、自由にタブを追加できることです。

「+」を押すとこんな画面が出てきて、タブに追加できるサービス一覧が表示されます。Office365内のサービス(Excel、Word、Sharepointなど)はもちろん、Asana、Githubなどの外部サービスも「タブ」に追加できるようです。


ではこのタブ機能を使ってどんなことができるか、考えてみようと思います。

活用方法

Excelを貼り付けてプロジェクト管理・タスク管理に使う

多分、いちばん使われそうなものはこれ。チャットグループにアップロードしたExcelファイルを、タブに貼り付けます。


すると、会話画面からタブを「Project」に切り替えるとすぐにExcelファイルの内容が表示されます。


この画面上で直接編集もできるので、プロジェクトの進捗状況やタスクの追加などをスピーディーに行えます。

なお、こんな風にタブごとのチャットも作れるようです。


OneNoteで議事録をつける

タブには、Office365で提供されているノート共有アプリのOneNoteも貼り付けられます。

OneNoteではこの画像のように「目次」みたいなものを付けられるので、ミーティングごとに議事メモなどをつけるのにぴったりです。


ただ、タブを切り替えるたびに再読み込みするため、若干動作のモタつきを感じます。ここは改善してほしいところです。

OneNoteでは遅いという場合、Wikiというものも使えるようです。こちらはTeams内だけで使える簡易メモのようなものです。

PowerAppsアプリを貼り付けてTeams上から使う

PowerAppsについては、このブログでも何度か取り上げています。


簡単に言うと、「業務用アプリをプログラミングなしでさくっと作れちゃう」サービスです。PowerAppsで作ったアプリもタブに貼り付けられるため、わざわざPowerAppsを開かなくてもTeamsからすぐにアプリへアクセスし、利用できます。


ただし、PowerAppsも開くたびに再読み込みするため、若干もたつきます。

何でもいいから使っているウェブサービスを貼り付ける(例:Googleカレンダー)

最後に、タブ機能のすごいところは「ウェブサイト」を貼り付けられることです。ブラウザで表示できるサイトは何でも貼り付けられます

私の職場では、Office365を使えるものの、カレンダー機能が使えないという謎の仕様になっています。なので仕方なくGoogleカレンダーを使っているのですが、これをそのままタブに貼り付けられます。

まず、新規タブを作り、「ウェブサイト」を選択します。そして、GoogleカレンダーのURLを貼り付けます。


これで完了!1度ログインすれば、あとは常にカレンダーが表示されるようになります。


カレンダーを見るために、わざわざブラウザーを立ち上げる必要はありません。

Googleカレンダー以外にも、ウェブサイトなら何でも貼り付けられます。ブラウザで動作するチャットサービス(Chatworkとか)も貼り付けられます。チャットの中にチャットがあるという、奇妙な状況まで作り出せてしまいます。

まとめ

今回はTeamsの「タブ」機能を紹介しました。他のチャットアプリにありそうで無かった、とても優れた機能だと思います。Slackのパクリなんて思ってごめんなさい、Microsoftさん。

より便利にするために、タブを切り替えるたびに毎回再読み込みするのを、何とか改善してほしいなあと願います。

この辺の本が参考になりそうです。

2017年10月5日木曜日

Access App廃止でPowerAppsに一本化:2つの違いは?

Access Web Appとは?

Accessとは、Microsoftが提供しているデータベースアプリケーション作成ソフトです。Access Web App(以下、Access App)は、普通はデスクトップ(ローカル)で使われるAccessを、クラウドサービスのOffice365で利用できるようにしたサービスです。

普通のAccessは、基本的にローカルのパソコンで使うアプリケショーンのため、サーバー上で様々なパソコンやモバイルデバイスから利用するには厄介な仕様でした。それがAccess Appでは、はじめからクラウド上に簡単に設置できるようになりました。できること、機能は通常のAccessには劣りますが、クラウド化に合わせた進化と思われました。

しかし、そのAccess Appは、2018年4月をもってサービス停止が発表されました。そしてMicrosoftの提供するクラウドで使えるデータベースアプリケーションは、PowerAppsに一本化されることになりました。

Updating the Access Services in SharePoint Roadmap

PowerAppsとは?

PowerAppsについては、別の記事を書いています(業務用モバイルアプリが数分で作れるMicrosoftのPowerAppsを使ってみた)。PowerAppsとは、この記事で紹介しているように「モバイルアプリをプログラミングなしでさくっと作れてしまう」ウェブサービスです。モバイルアプリでは様々なデータベースに接続できるため、データベースアプリケーションの一種と言えます。

Microsoftは「マイクロソフトでは、多くのお客様が Access のカスタム Web アプリをご利用になっていることを認識しており、PowerApps への移行をできるだけスムーズに実施できるように努めています。」としています。しかしAccessとPowerAppsには、その設計思想や適正、特性に大きな違いがあり、そのまま置き換えることは容易ではないと思われます。それを次にまとめます。

Access AppとPowerAppsの違い

Access AppとPowerAppsを両方とも使って簡単なアプリを作った経験から、2つの違いをまとめてみます。

1. PCファーストとモバイルファースト

Access Appは基本的にPCのウェブブラウザで使うことをターゲットにしたアプリケーションでした。対してPowerAppsは、完全にモバイルファーストです。2つのアプリの画面を比べてみましょう。

まず、こちらがAccess App(ビデオ: Access Web アプリを作成する - Access - Office Supportからの引用)。



次に、こちらがPowerApps。


見た目からしてもPowerAppsがモバイル向けだとわかると思います。またPowerAppsにはAndroid、iOSアプリがあり、スマートフォン、タブレット上で動作させることができます。

一方でPC上でも動かすことはできますが、表示はスマートフォン、タブレットと同様で、PCの画面上、しかもマウスだと正直操作しづらいです。PCでの利用であればAccess Appの方が上でした。

2. データソース

Access Appでは、データソースは1つだけ、つまりAccess専用のデータベースしか使えませんでした。一方のPowerAppsは、様々な外部データベースと接続して利用ができます。SharePointリスト、SQLサーバー、Salesforce、さらにはDropboxやOneDriveに保存されたExcelシートまでデータソースとして使えます。

これにより、様々なデータソースと柔軟に組み合わせたアプリケーションを作れます。その点はPowerAppsの一番面白いところだと思います。Accessでアプリを作るには、「データベースとは何たるか」を多少はかじってないといけませんでした。ところがPowerAppsでは、Excelでリストさえ作れば、3分でアプリケーションができてしまうのです。

3. Office365内での連携

Access AppもOffice365で使うようになってましたが、あくまでAccessは個別の機能で、他のOffice365アプリとの連携はほぼありませんでした。PowerAppsはOffice365の中にしっかりと組み込まれ、様々なアプリと連携できます。

例えばFlow。Flowは、ワークフローを自動化「ハブサービス」の未来は?で紹介したZapier、IFTTTのような、ハブサービスです。これを使えば、PowerAppsと様々な外部アプリと連携して、「PowerAppsでSharePointリストにデータを追加したら、その内容をメールで○○へ送る」といった自動ワークフローを作成できます。

違う例ではTeams。Teamsはチャットコミュニケーションのアプリですが、これに「タブ」という機能があります。チャネル(チャットグループのこと)に関連するアプリやファイルをタブにして埋め込めるという機能です。このタブに、PowerAppsアプリを埋め込めます。なので、チームでよく使うアプリにはすぐにアクセスできます(ただし、タブを切り替えるために再読み込みするので、若干イライラする)。

こんな風に、最初からOffice365での連携を前提に作られているのがPowerAppsです。

その他

この他にもAccess AppとPowerAppsには多くの違いがあるので、詳しいところは実際に使ってみるか、MicrosoftがAccess Appの開発者向けに作成したホワイトペーパーを参照してください。

Introduction to Microsoft PowerApps for Access web apps developers

PowerAppsは本当に使えるのか?

前回の記事でも問いましたが、PowerAppsは本当に「使える」のか?という疑問は、依然としてあります。

確かに面白い機能はいっぱいあり、ものの数分でモバイルアプリが作れる(しかもExcelをデータベース代わりにして…笑)のは驚きです。

しかし、だがしかし・・・動作が若干もっさりとしていることと、PCで扱いづらいこと、この2つが特にひっかかり、本当に「使える」サービスなのかどうか、微妙なところだと思います。少なくとも、AccessやAccess Appの置き換えにはならないでしょう。

モバイルで活用したく、またOffice365内での連携が不要であれば、Kintoneなどを使ってもいい気がします。Kintoneも、データベースアプリケーションを手軽に作れるサービスで、日本のサイボウズという会社が提供しています。

PowerAppsについてはまだ日本語情報が少なく、そのためか当ブログにもPowerAppsを調べて来る人がそれなりにいるようです。いまはまだ難ありですが、PowerAppsの今後の発展には期待したいところです。今後も動向を追ったり、サンプルアプリを作ったりしてみようと思います。

PowerAppsの入門書もぼちぼち登場しています。


【更新(2018.4.29)】サンプルアプリを紹介しています:
PowerAppsで作るアプリ例 (1):学生情報検索アプリ

2017年6月15日木曜日

ロシア発?「簡単に美しいウェブサイトが作れる系」サービス”Tilda”を使ってみた


ひと昔前は、見栄えの良いホームページ(ウェブサイト)を作ろうと思ったら、デザインを勉強したりHTMLやCSSといったコードを書けるようになる事が必要でした。

しかし、いまは違います。「簡単に美しいウェブサイトが作れる系」サービスがいくつも登場し、専門知識やセンスがなくても簡単に綺麗なウェブサイトが作れるようになりました。

日本で有名なのは、次のようなサービスでしょう。
今回は、主にロシア向けに展開されている「簡単に美しいウェブサイトが作れる系」サービス、Tilda(Tilda Publishing)を紹介します。

Tildaとは

Tildaは、ロシア出身のデザイナー、ニキータ・オブホフ氏が立ち上げたサービスです。

НИКИТА ОБУХОВ
オブホフ氏はロシア出身ですが、Tildaのオフィスがどこにあるのか、はっきりした情報がありません。Tilda公式Twitterの所在地はLondonになっています。このため、「ロシア発?」と一応はてなを付けておきました。

URLはTilda.ccとなっており、日本からアクセスすると、ひとまずロシア語のページへ飛ばされます。
英語でのページはこちらです。

英語でも十分にサービスを使えるようにはなっていますが、ロシアの大手検索エンジンYandexの決済サービスが使えるなど、基本的にはロシア重視のサービスになっています。

Tildaの特徴

「簡単に美しいウェブサイトが作れる系」サービスの特徴として、コードの事が全く分からなくてもサイトを作れる、基本機能は無料、テンプレートが豊富にある、スマホ対応している、などがありますが、これはTildaにも共通です。

この他に、Tildaのサービスの紹介を見て、面白いな〜と思った特徴を挙げてみます。

基本的に1カラムのインパクト重視デザイン

デザインテンプレートはこちらから見れます。なかなかスタイリッシュなデザインだと思います。

デザインの構成は1カラム、つまりサイドバーなどが付かないデザインになっています。画像を画面いっぱいに大胆に使い、印象的なページに仕上がるようなテンプレートが豊富です。

オンライン・ストアが簡単に作れる

決済サービスと連携し、オンラインストアが作れます。Paypal、Stripeと連携でき、ロシア向けではさらにЯндекс Деньги(ヤンデックス・ジェンギ)という決済サービスとも連携できます。

外部サービスとの連携が多い

訪問者とのコミュニケーションに使える外部サービスとの連携が豊富です。フォームサービスではGoogle Form、Typeform、チャットサービスではSlack、Telegramといった有名どころと連携ができます。

ソースコードをエクスポートできる

これはちょっと驚きです。Tildaで作ったページのソースコード(プログラム)をファイルとして出力してダウンロードできるようです。このファイルを別のサーバーへアップロードすれば、そのままTildaで作ったサイトをコピーする事ができます。

これのどこが驚きかというと、例えば誰かから「ホームページ作って」と頼まれた時に、Tildaで作ってエクスポートし、そのファイルをちょっといじれば完成してしまう、という事も可能になってしまうのです。え、いいの?という感じです。他の類似サービスではあまり無い機能な気がします。

料金

基本無料ですが、料金プランがあります。

無料

  • 1サイト、50ページ、50MBまで
  • Key blocks collection使用

パーソナルプラン:10ドル/月(年間払いの場合)

  • 1サイト、500ページ、1GBまで
  • Full blocks collection利用 可能
  • 独自ドメインほか全ての機能を利用可

ビジネスプラン:20ドル/月(年間払いの場合)

  • 5サイト、各サイト500ページ、1GBまで
無料とパーソナルプランの大きな違いは、使えるブロック・コレクション(blocks collection)の種類の数です。Tildaでいうブロックは、ウェブサイトでよく使うパーツのテンプレートの事ですが、 このテンプレートの数が多ければ、それだけ様々なコンテンツ、デザインのサイトを簡単に作成することができます。無料の場合、ごく基本的なブロックテンプレートに制限されています。

その他、パーソナルプランではフルの機能を使え、ビジネスプランではサイト数が増やせる、という棲み分けになっています。

使ってみよう

それでは恒例・・・使ってみましょう!

まず、登録が必要です。英語ページへは、ロシア語ページの最下部のリンクから飛べます。
・・・が、せっかくなのでロシア語ページから登録してみましょう。


まず、右上の黒い四角Регистрацияが「Register」という意味なので、クリックします。


この画面に、ユーザー名、メールアドレス、パスワードを入力します。
そして下のボタンを押します。


すると、すぐに管理画面へ飛びます。最近よくある、メール認証は不要です。しかし、この管理画面・・・うわ!ロシア語じゃん!でも安心。左上のメニューПрофиль(Profile)から、言語の変更ができます。


Languageを、Englishに変更します。


これで英語メニューになりました!


そのあとは、割と直感で操作できると思います。まず、テンプレートを選びます。テンプレートのカテゴリは、大きく「Business」「Editorial」「Cover page」と分かれていますが、今回は「Editorial」を選択します。


使いたいテンプレートを見つけたら、Createを押します。すると編集画面になるので、あとは好きなように編集しましょう!

まとめ

以上、ロシア発「簡単に美しいウェブサイトが作れる系」サービス、Tildaを紹介しました。

実際のページ、編集画面とも非常にスタイリッシュなデザインで、操作性も悪く無いと思われます。ロシア向けサービスとの連携があるため、例えばロシア向けにスモールビジネスを行いたい場合などは良いかもしれません。

難点として、この手のデザインは、日本語テキストを使うとどうも見栄えが悪くなってしまいます。また、Tildaは世界的にそれほどメジャーなサービスとも思え無いため、ある日突然サービス終了、なんて事もあり得ます。

それは承知の上で、短期間で印象的なウェブサイト(特に海外、外国人向け)を低コストで作りたい場合、選択肢に加えてもいいのではと思います。

2017年5月23日火曜日

野口悠紀雄『ブロックチェーン革命』:仮想通貨技術は世界を変えるか

「ブロックチェーン」は、ビットコインなどの仮想通貨に用いられている技術のことです。このブロックチェーン技術を用いた社会変革の可能性をまとめたのが、野口悠紀雄『ブロックチェーン革命ー分散自立型社会の出現』です。

ブロックチェーンとは何か

ブロックチェーンは、仮想通貨に用いられている技術です。

仮想通貨というと、電子マネーの進化版のように捉えられがちですが、根本的に仕組みや理念が異なるものです。確かに、表面的に見える挙動は両者とも似通っています。両者とも 実物の紙幣や貨幣ではなく、デジタルの数字で商品を買う事ができます。

では、違いは何でしょうか。

電子マネー(SuicaやNanaco、Waonなど)は、日本円を入金して、それと等価のポイントを得る事ができます。客がそのポイントで商品を購入すると、代金を受け取った方もまた日本円に交換して売り上げとします。一方のビットコインは、ビットコインそのものが既に価値を持っているので、ビットコインで支払ったら、それがそのまま売り上げとなります。得たビットコインを他の人に渡すこともできますし、商品を買う事もできます。電子マネーは日本円などの通貨と交換してはじめて価値を持ちますが、ビットコインはそれ自身が価値を持ち、日本円やドルのように通貨としての役割を果たしているのです。

日本円やドルは、単なる紙切れではありますが、政府という信頼できる機関が保証してくれているのでみんなが使っています。一方のビットコインは、誰が作ったかも分からない電子データです。なぜそんなモノが価値を持つのか。その裏にある技術が「ブロックチェーン」です。

本書では、ブロックチェーンについて次のような説明がされています。
ブロックチェーンとは、公開分散台帳だ。誰もが参加できるコンピューターの集まり(P2P)によって運営され、公開される。データの改竄ができないように、PoWという仕組みが導入される。これにより、組織の信頼に頼らずに、信頼できる事業を運営できる。
これだけではなんの事だか分からないので、本書では、続けてさらに丁寧な説明がされています。

私なりの理解で、噛み砕いて説明してみます。

日本国内で日本円が通貨として使えるのは、皆が通貨として信頼しているからです。 商品の売り買いやお金の貸し借りといった取引は、商店、企業、銀行、日銀で記録されています。多少の抜け道はあるにしろ、企業などは取引の成果(利益)を国に報告して税金を納めています。その税金によって政府は公共事業を行っています。銀行は銀行間でのお金のやりとりを記録しています。このようにちゃんと取引が記録されていることが信頼の源泉となって、お金は天下で回っていきます。

一方のビットコイン。ビットコインは、サトシ・ナカモトという正体不明の人物が2009年に発表した論文をもとにして作られた通貨とされています。ビットコインはコンピューターを使った採掘(マイニング)により生み出され、それが流通しています。採掘量には上限があるので、金(きん)のようなものです。ただ、これだけでは怪しすぎて通貨として信頼できませんよね。そこで登場するのがブロックチェーン技術です。

ブロックチェーンは、その名の通り、ブロックの鎖(連なり)です。電子的なブロックがあり、そのブロックには取引の情報を記録できます。記録されるといっても、情報は暗号化されているので個人情報がそのまま全世界へ公開されることはありません(これが「暗号通貨」とも呼ばれる理由)。それで、このブロックが取引のたびに鎖のように連なっていきます。そのため「ブロックチェーン」と言われるのです。ビットコインの場合、取引の記録はどこか1つのサーバーに集約されるのではなく、P2Pと呼ばれる、誰もが参加できるコンピューターの集まりによって行われます。政府や中央銀行といった信頼できる管理者がいない代わりに、「みんな」がお互いに信頼しあって台帳を共同でつけていく。これが、野口氏の言う「公開分散台帳」のイメージです。

どのような社会変革が可能なのか

では、このブロックチェーン技術を使い、どのような社会変革が可能となるのでしょう。

一般的に知られているのが、決済・送金の大幅な効率化・低コスト化です。例えば日本のA銀行から他国のB銀行に送金する場合、複数の銀行を経由したりするため数日の時間がかかり、高額な手数料が必要です。ブロックチェーン技術を使う仮想通貨であれば、数秒で送金することが可能となるのです。もちろんコストも格段に下がります。

しかし、これは本書が力点をおいている事ではありません。送金を効率化するだけなら現状の改善であって、革命とまでは言えないでしょう。主眼は、書名にある通り「分散自立型社会の出現」にあります。

ブロックチェーンに記録できるのは、商品との交換に必要な「お金」だけではありません。様々な事実をチェーンの上に記録する事ができます。

応用例として紹介されているのが、オートバックスの実験です。カー用品販売のオートバックス社は、Ethereumというブロックチェーン技術を使い、カー用品を個人間で売買できる仕組みの構築を行いました。決済手段に仮想通貨を取り入れたのではありません。ブロックチェーンに記録したのは売買の履歴です。これにより、個人間の取引であってもちゃんとした商品であるという担保ができ、かつ「高性能、大容量なデータベースの構築・保守運用が不要なため、5 年間のシステム TCO(Total Cost of Ownership)で、約 10%のコスト削減効果」が見られたとのことです。

参考:http://www.baycurrent.co.jp/news/pdf/NewsRelease_20161115.pdf

他にも、行政手続きや学習、医療データの記録に活用するアイデアも紹介されています。
さらに踏み込んだ事が、第9章で紹介されている「DAO」です。DAOはDecentralized Autonomous Organizationの略で、日本語に訳すとしたら「分散型自立組織」となります。

これまで、なんらかの組織には必ず経営者のようなリーダーが不可欠でした。UberやAirbnb、メルカリのように個人と個人が直接繋がれるようになったとはいえ、まだなお仲介し管理するための企業が不可欠です。それが、ブロックチェーンを活用すれば、管理者がいなくてもコミュニティに参加する個人同士が直接取引をできるようになる、というのです(もちろん、取引のための場や技術は誰かが開発しなければいけないが)。本書では、クラウドソーシングのColony、シェアリングサービスのSlock.itなどが紹介されています。

最後に

『ブロックチェーン革命』は、注目を集める「ブロックチェーン」の概要をつかむには良い一冊だと思います。ただ、これまで仮想通貨やフィンテックなどに全く興味を持っていなかった人が読むと、途中でつまずくかもしれません。仮想通貨関係のウェブ記事やブログをざっと読んだり、また実際に少し仮想通貨を買ってみると、実感を持って読めると思います。野口氏の前著『仮想通貨革命ービットコインは始まりにすぎない』もおすすめです。

なおブロックチェーンの技術ではなく思想的部分に興味を抱いた方は、『現代思想』2月号がブロックチェーンを特集しているので読んでみるとよいでしょう。

個人的には、コーカサスの国ジョージアがブロックチェーンの活用を目指していることに興味を持っています(『ブロックチェーン革命』にも少しだけ紹介されていました)。

Bitfury, Republic of Georgia Push Ahead With Blockchain Land-Titling Project

土地の登記に活用する、とうことかな。日本のような図体の大きな国より、小国の方がこういう技術をいち早く取り入れるのでしょう。そのうち調査してみます。

2017年3月16日木曜日

ITを使いこなすための心構え

「若者のパソコン離れが進んでいる」と言われている昨今ですが、何らかのデスクワークに少しでも関わる仕事であれば、パソコンやウェブサービスを使いこなすことは必須です。

このブログでITのことを色々と書いている通り、私はどちらかというと、パソコンを使うのが得意な方でした。中学生くらいの頃から、自宅で開業していた母に、パソコンの使い方を質問されたら答えて小遣いをもらう、ということもしていました。

いまでも、職場の方にソフトの使い方などを聞かれます。職場にこんなような便利屋さんがいればいいのですが、どこにでもいるとも限りませんし、分からない事を聞いてばかりでは全体の生産性が上がりません。

そこで、誰もがITを使いこなせるようになるためには、どんな意識付けやコツが必要なのか、3つのポイントを考えてみました。

1.「楽をしよう」と思うこと

まず、「楽をしよう」という意識が必要です。パソコンは道具です。道具は、人がより効率的に、楽に仕事をするために作られたものです。なので、目の前にあるパソコンが自分を苦しめるのではなくて、より楽ができると考えてみてください。そして、この考え方は重要です。プログラマーの「三大美徳」の1つは「怠惰」とも言われているぐらいです。

ただし、「すぐに楽をしよう」と思うのはやめてください。パソコンの操作方法を覚えるのには、最初は時間がかかります。別の記事で紹介したショートカットキーにしてもそうです。最初はショートカットを覚えるのに時間がかかります。しかし、ひとたび覚えてしまえば、ショートカットを使う前よりもより素早く操作ができ、長い目で考えるとより楽になるのです。

まるで蟻とキリギリスの話みたいですが、あとで楽できることを願って、最初の苦しみをなんとか乗り越えましょう。(「楽できる」の部分は、別の報酬に変えてもいいと思います。給料アップ、スキルアップ、楽しい、よりたくさん仕事ができる、などなど。)

2. Googleで調べる

ググレカスというネットスラングを聞いたことはあるでしょうか。「ググれ」というのは「Googleで調べろ」という意味で、大抵のことはGoogleで調べれば分かるのだから、いちいち質問してくるな、という意味あいで使われます。

確かにGoogle先生に聞けばだいたいのことは教えてくれますが、その答えに行き着くのに時間がかかり、面倒な時もあります。何ページも見ても、まったく理解できない場合もあるでしょう。そんな場合の対処法をいくつか挙げてみます。

動画を調べる

普通の検索だと、ほとんど文字での解説しか出てきません。これだと操作方法もよくわかりませんよね。そんな時は動画を調べます。

例えば、「Excel 集計」とGoogleの動画検索で調べると、youtubeなどの動画サイトや、Microsoftのヘルプページにアップロードされている解説動画が大量にヒットします。

Google動画検索の結果

OSやバージョン名を入れてしらべる

いくつか情報を読んでもうまくいかない場合は、OSやバージョン名といった細かいキーワードも入れて検索してみてください。WordやExcelは、バージョン(2011、2016など)によって画面や操作方法が違います。またWindowsとMacでも違いがあります。
検索キーワードには、できるだけ具体的なワードを含めましょう。

自分で調べるのは面倒で、ついできる人に聞きたくなるかもしれません。しかし、自分で調べるメリットもあります。第一に、自分でしらべれば自分ごととして、よく覚えられます。また、調べていく中で関係する情報にも自然と目がいき、どんどん知識は増えていくはずです。

3. 体系的に学ぶ

最後に。Googleの浸透により無視されがちなのですが、体系的に学ぶのが習得の近道なのは今も変わりません。

本屋で一冊、ExcelやWordの入門書を買ってみるのもいいでしょう。入門サイトや個人ブログをじっくりと読んでみるのもいいでしょう。

たとえ流し読みでも、体系的に学ぶことで、「このソフトでこんなこともできるのか!」と、気づきがたくさんあるはずです。「たかがExcel」とあなどってはいけません。枠線をつけるとか、合計を出すとか、それくらいは誰もが直感的にできてしまいますが、Excelは奥が深いのです・・・(私もよくわかりません)。

また、学ぶ時に、全てを覚える必要はありません。分からなければGoogleで調べればよいのです。ただ、調べる前に、そもそも「何ができるのか」だとか、調べるのに必要なキーワードくらいは覚えておいたほうがいいでしょう。

まとめ

ITを使いこなすための心構えを、自分なりにまとめてみました。

この3つのコツは、オフィスワークに必要なソフトを覚える時だけではなく、プログラミングでソフトを開発するなど、さらに発展的な事に取り組む際にも、重要になります。
少しでも意識が変わり、ITを使いこなす事によってオフィスの生産性が上がる事を願っています。

2017年2月14日火曜日

スクリーンショット(画面キャプチャ)の撮り方

スクリーンショットとは、パソコンやスマートフォンに表示されている画面の全体または一部を切り取って画像にして保存することです。最近では略して「スクショ」と言わています。また「スクリーンキャプチャ(キャプチャ)」とも言われます。

スクショをすれば、画面に表示されている情報をそのまま、メモ代わりに保存できて便利ですよね。

しかし、スマホでのスクショは分かるけどパソコンでのスクショの撮り方が分からない、という人がけっこういるようなので、まとめてみます。

ショートカットキーを使って撮る

Windows、Macとも、もとからショートカットキーでスクショを撮る機能が備わっています。特にMacのスクショ機能は非常に便利です。

Windowsの場合

キーボードの右端の方に「PrintScreen」または「PrtScreen」というキーがあるはずです。これを使います。機種によって設定が違ったりしますが、
  • Print Screenのみを押す
  • Fn + Print Screen を押す
このいずれかの操作で、現在の画面全体をクリップボードにコピーできます。これをペイントなどのソフトに貼り付け、画像として保存すればOKです。
現在アクティブな(=操作中の)ウィンドウの画像が欲しい場合、次のキーを押します。
  • Alt + Print Screen

Macの場合

次のショートカットキーでスクリーンショットを撮れます。
  • Command + Shift + 3 : 現在のスクリーン全部を撮る
  • Command + Shift + 4 : スクリーンの一部を四角形で切り取る
  • Command + Shift + 4 + スペース → ウィンドウをクリック : 選択したウィンドウを撮る
「カシャ」っと音が鳴って、画像が自動的にどこかに保存されます。デスクトップか「ピクチャ」フォルダにファイルがあるはずです。

ソフトを使って撮る

Windowsの場合、ショートカットキーではスクリーンショットを保存するのが面倒です。そこでソフトを使います。

Snipping Tool

最近のWindowsに標準装備されているソフトです。画面全体、現在アクティブなスクリーンのスクリーンショットが撮れるほか、スクリーンの一部を四角または自由な形で切り取ることができます。

四角形だけではなく自由な形で切り取れるのはいいですね。

ブラウザの機能を使って撮る

ウェブページのスクショを撮りたい時に使えるのが、ブラウザのスクショ機能です。これはデフォルトでは備わっていない場合が多く、新たに拡張機能としてブラウザにインストールする必要があります。ここでは、Chromeの場合を例に説明します。

Chromeウェブストアを開きます。「ストアを検索」にScreenshotと入力して検索します。

すると、スクリーンショットを撮るための拡張機能アプリがたくさん出てきます。この中で評価が良いもの、最近までアップデートされているものを選んでインストールしましょう。私はWebpage Screenshotを使っています。

インストールすると、ブラウザの右上にアイコンが表示されるようになります。表示されない場合はもう一度、設定>拡張機能を開き、機能を有効化しましょう。

スクリーンショットを撮りたいページを開いたら、拡張機能のアイコンをクリックします。
Chrome拡張機能を使っている様子。まさにこれがスクリーンショット。

あとはアプリによって挙動が違いますが、四角で切り取れたり、注釈を入れたり、ダウンロードできたりもします。Webpage Screenshotの場合はこんな画面です。

同じような拡張機能が、FirefoxやInternet Explorerなど他のブラウザでも利用できます。Chromeだと「拡張機能」ですが、他のブラウザだと「アドオン」などと言われます。

まとめ:スクリーンショットの使い道

スクリーンショットは画面に写ったものをそのまま保存できるので、便利です。私がよく使うのは、乗り換え案内や地図を保存しておきたい時などです。また、パソコンに何か問題が発生した時も、その画面をそのまま撮っておけば、詳しい人が問題を解決してくれるかもしれません。

最後に裏技的な使い方を紹介します。

PDFやパワーポイントファイルの一部を切り取って画像にしたい時も、スクリーンショットを使えば一発で画像化できます。画像の質はオリジナルより悪くなりますが、素早く画像を入手できます。

また、テキストをスクリーンショットで撮れば、140字の制限があるTwitterにそれ以上の文字数を投稿できます。写真SNSのinstagramにテキストを投稿することもできます。いろいろな使い方があるわけです。

二次利用は著作権等に留意する必要がありますが、個人 利用であれば気にせず、スクショをどんどん活用しましょう。

2017年2月7日火曜日

パスワード管理サービスは使ってもいいのか

Gmailのログイン画面

ウェブサービスをいろいろ使っていると、IDとパスワードがどんどん増えていきます。私はGoogleのアカウントだけでも5、6個管理しており、SNSや通販サイト、予約サイトなど全て合わせると50個以上のID・パスワードを持っています(数えたこともありません・・・)。

同じパスワードを使い回すことはセキュリティ上、非常に危険なので、それぞれパスワードを変えなければいけません。

50個、100個もパスワードを覚えるなんて、不可能な話ですね。ブラウザーに保存したり、紙にメモしておくのも、それはそれで危険です。付箋に書いてディスプレイに貼っておくなんて論外です。

そこで登場するのが、自分でパスワードを覚えなくても済む、パスワード管理サービスです。

どんなサービスがあるのか

パスワード管理ソフトは、インターネットが登場した当初からあったと思います。要するにセキュリティーの厳重なメモ帳みたいなものです。そういったソフトでは、パスワードのデータはパソコンの中に収まっていました。

それが、ここ数年はパスワード情報をクラウドに預けてしまう、というサービスが次々と出て来ました。

マスターキー(1つのパスワード)さえ覚えておけば、ブラウザの拡張機能を使って、ID・パスワード入力フォームへ自動的に情報を入力してくれる、という仕組みです。

これによって、オフィスのPC、家のPC、スマホ、タブレットなど、どんな端末からでも自分のパスワード情報に簡単にアクセスできるようになりました。まさに今の時代にあったサービスです。

また、パスワード自動生成機能もついており、セキュリティー効果が高い複雑なパスワードを生成し、そのまま使用し保存できるようになっています。
この手のサービスには、次のようなものがあります。

1password

URL: https://1password.com 価格:
  • $2.99~(個人プラン)
  • $4.99~(ファミリープラン) 他に、ビジネス向けプランあり。

Lastpass

URL: https://www.lastpass.com/ja 価格:
  • 無料
  • $1~(プレミアムプラン) 他に、ビジネス向けプランあり。

True Key

URL: https://www.truekey.com/?locale=ja 価格:
  • 無料
  • $19.99年

パスワードマネージャー

URL: http://safe.trendmicro.jp/products/pwmgr.aspx 価格:
  • 120円/年〜
それぞれ、無料や安い方のプランには、登録できるパスワードの数や共有できる人数、使用できるデバイスなどに制限があります。

まとめ:これは使ってもよいのか

「便利なのは分かった。でも、パスワードを他人のサーバーに預けるんでしょ、危険じゃないの?」と思うかもしれません。それはもっともです。

これは価値判断の問題だと思われます。同じパスワードを使いまわしたり、紙にメモして置いたりして自分で管理するのと、プロフェッショナルな会社が何千万、何億もかけて構築した、厳重なセキュリティー管理下に置かれたサーバーに預けておくのとどちらが安全なのか、という問題です。True Key はCPUで有名なインテル、パスワードマネージャーは「ウィルスバスター」で有名なトレンドマイクロ社が提供しています。

ただし、職場の規定によってはこういったサービスの利用が禁止されている場合もあるので、仕事で使う場合はよく確認してください。

ちなみに私は、プライベートではLastpassを使っています。もうこれなしではインターネットを使えません。それくらい便利です(仕事で使っているかどうかはノーコメントでお願いします)。