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2019年8月4日日曜日

ウズベキスタンは「次なるベトナム」となるか

(ウズベキスタン・サマルカンドの「Tourist Police」)

アジアで経済が急成長し、日本との関係も活発な国といえば、まずベトナム、マレーシア、インドネシアといった国を挙げる人が多いでしょう。そんな中、もう1つ、ベトナム並…とまではいきませんが、今後経済の成長や日本との交流の活発化が予想される国、「ウズベキスタン」について考察します。

ウズベキスタンとは

ウズベキスタンは中央アジアに位置する国で、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンに囲まれた内陸国です。海に出るためには2つ以上の国を通過しなければならない「二重内陸国」です(二重内陸国は世界に2カ国しか存在しない)。

最近は前田敦子さん主演の映画「旅のおわり世界のはじまり」の舞台にもなり話題を読んでいます。

「旅のおわり世界のはじまり」公式サイト

ウズベキスタンのあたりは地理的に東西を結ぶシルクロードの交易の要塞として栄えた地域で、歴史を勉強した人であれば「サマルカンド」「ティムール朝」などといったキーワードを聞いた人も多いでしょう。この地域では、歴史上、多くの国が勃興していきました。

20世紀に入りロシア革命が起こると、ロシア帝国の支配を受けていたウズベキスタンでも共産党政権が成立し、ソビエト連邦の一共和国としてウズベク・ソビエト社会主義共和国が成立します。その後、1990年代に入るとソ連崩壊に伴い独立し、現在のウズベキスタンとなりました。

独立後のウズベキスタンでは、初代大統領のカリモフ氏が長らく強権的な政権を維持してきましたが、2016年にカリモフ氏の死去に伴い新大統領のミルジョエフ氏に変わると、社会・経済の改革が進められるようになりました。

ウズベキスタンの歴史や概要については、以下の書籍を読むと理解が進みます。


人口増加

ここからが本題です。ウズベキスタンの現状を、ベトナムなど東南アジア諸国と比較しながら考察していきましょう。

まずは人口です。ウズベキスタンは中央アジア諸国の中でも最大の人口規模を有し、現在の人口は約3,200万人(2018年)。ベトナムは9,000万人以上なので多くは見えませんが、マレーシアの人口も約3,200万人と同じくらいです。

 
ウズベキスタンでは人口増加が顕著で、合計特殊出生率は2.46(2016年)。これは、日本で第一次ベビーブームのなごりが残っていた1950年代の水準に近いです。いわゆる「人口ピラミッド」は日本の高度経済成長期のようなピラミッド型になります。なお世界人口基金によると、2050年にはウズベキスタンの人口は4,000万人を突破すると見込まれています。

経済成長

ウズベキスタンのGDP(国内総生産)は433億ドル(2018年)で、世界94位。経済規模は確かにそれほど大きくありません。ウズベキスタンよりも人口が少ない隣国カザフスタンのGDPよりも少ないです。人口規模が同じマレーシアにも到底敵いません。

当然、一人あたりGDPもさほど高くはありませんが、実はちょうどベトナムの一人あたりGDPと同じくらいです。そして一人あたりGDPの推移を時系列で比較すると、ウズベキスタンとベトナムはまさに同じような値を推移してきています。

 
今後、ウズベキスタンとベトナムのどちらが成長のピッチを速めるか、このグラフは見モノと密かに注目しています。

ウズベキスタンの経済で今後注目できるのは「観光」、「工業生産」だと考えています。ウズベキスタンは日本国籍者などの入国ビザを免除するなど観光立国を目指しており、観光客は2018年1~9月期で390万人で、2017年同時期に比べ2倍に増加しました(ジェトロ短信より)。

また、工業生産については、過去記事「ウズベキスタンではなぜシボレー車が多いのかでも紹介したように国内にGM系列、ISUZUなどの自動車工場を抱えています。ベトナムでは日本企業の工場が多数進出していますが、ウズベキスタンでも、中東やアフリカ、ヨーロッパへの供給地として、自動車、繊維などの工場を展開する余地があります。

工業生産の状況については、JETROのレポートが参考になるので、ご覧ください。 https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/b1866ca3b26e44f7.html

留学生の増加

次に、留学生の増加について考えます。ベトナムやネパールからの留学生が急増していることは数年前から言われていましたが、2017〜2018年頃から、ウズベキスタン出身の留学生が急増したことが関係者の間では話題になりました。

日本学生支援機構(JASSO)が公開している外国人留学生在籍者数のデータを見ると、ウズベキスタンから大学・大学院への留学生数は383人(2016年)、441人(2017年)ときて、2018年には705人と一気に増加しています。日本語学校への留学者数を合わせた総数は、1,047人(2017年)だったのが、2018年には2,132人を突破しており、日本語学校への留学者数の増加が顕著です。

ベトナム(留学生総数72,354人/2018年)と比べるとまだウズベキスタン出身留学生の割合は少ないですが、タイ(3,962人)やマレーシア(3,094人)と並ぶような日本留学の送り出し国となる可能性があります。

日本語学校への留学は、実質出稼ぎ労働の斡旋をしているような学校の問題もあり、なかなかビザが取りにくくなっていると言われているので、一時的に日本語学校への留学者数は減る可能性もあります。ただ、ウズベキスタン側は海外留学を支援する奨学金基金(El-yurt umidi)を創設するなどしており、日本への留学者数は今後も増え続けるでしょう。

まとめ(将来発生する「ウズベク人問題」に備えて)

ウズベキスタンを、ごく限られた視点ですが東南アジアとの比較で考察してみました。
今後、東南アジア諸国と同様に経済成長し、日本との関係も深まるとなればバラ色の未来があるような感じがしますが、一方で問題も発生してくるでしょう。

例えば、急増したベトナム人やネパール人の技能実習生の問題(受入企業の劣悪な労働環境や失踪)、東京福祉大学の外国人研究生「行方不明」問題などです。こういった外国人労働者、留学生の問題が起こった時に、これまでは中国、ベトナム、ネパールなどの国名が報道ではあがっていましたが、この中に「ウズベキスタン」が加わる日も近いでしょう(なお、ウズベキスタンも技能実習生の送り出し国です)。

実際に、日本に住むウズベキスタン国籍者が、不法滞在や窃盗で逮捕されるニュースもちらほらと聞くようになりました。

またこれはフィクションですが、ウズベキスタン出身の技能実習生らが主要な登場人物となるミステリーが「文芸カドカワ」連載されているようです。ミステリーなので設定上必要だったのかもしれませんが、ベトナム人でもネパール人でもなく、ウズベキスタン人というのが象徴的なような気がします。

移民国家・日本を舞台に新・直木賞作家が放つ壮大なミステリ!【新連載試し読み 真藤順丈「ビヘイビア」】 | カドブン

ウズベキスタンをよく知る人やネットワークのある人は、「かれらは親切でお互いよく助け合うから、日本でも穏やかに暮らすだろう」などとつい思ってしまいがちです。しかし、彼らだけ特別なんてことはありません。いつかどこかの地域で、「ウズベク人問題」が発生する日も来るでしょう。

そんな時に備えて、過去に学び、在日ウズベキスタン人が適切なサポートを受けられる体制ができることを願いますし、筆者もウズベキスタンに縁がある人間の一人として、できることがあれば力を尽くしたいと考えています。

2018年9月30日日曜日

”SDGs”(持続可能な開発目標)を知るためのリンク集

SDGsとは

SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略で、国連が2030年まで世界各国での達成を目指して掲げている目標リストのことです。

以前はミレニアル開発目標(MDGs)というものがあり、特に開発途上国が達成すべき目標として掲げられていました。MDGsは2015年までの目標であったため、その後継として作られたのがSDGsです。SDGsは、開発途上国だけでなく、先進国も含む各国が達成すべき目標として掲げられていることが大きな違いです。

SDGsは国際機関、各国政府、NGO、教育機関、企業までもが標語として据え、様々な取組を開始しています。

ここでは、SDGsをこれから知ろうとする時に参考になりそうなウェブの情報源を紹介します。

SDGsを知るためのウェブサイト

Sustainable Development Goals website

まずは本家本元、国連による公式ウェブサイト。とりあえず公式情報を見たい時はここを確認しましょう。残念ながら日本語版はありません。

Sustainable Development Goal indicators website

国連統計局によるSDGs関連のデータソースです。進捗状況を数値で見たいときにはこちらでしょう。

SDGs Index & Dashboard

学者らによる報告書を公開しているサイト。毎年発行される"SDG Index and Dashboards report"は、各地のSDGs達成状況についてのかなり詳細なレポートとなっているので、一度は見ておいた方がいいでしょう。

SDGs(持続可能な開発目標)17の目標&169ターゲット個別解説(イマココラボ)

SDGsの17目標とそれぞれの目標に関連するターゲットが日本語で解説されています。17の目標しか書かれていない情報ソースが多い中で、ターゲットまで書かれているのは便利です。

首相官邸 SDGs推進本部

SDGs推進本部は首相官邸に置かれているようです。日本政府のSDGsに関する方針や公式情報を確認したい時はこちらを見るといいでしょう。

Japan SDGs Action Platform(外務省)

日本の外務省が運営するSDGsのページ。首相官邸のページよりは外向けで見やすくなっています。総務省や環境省、JICAなどによるSDGsのページにもここの「関連リンク」から飛べます。

外務省×SDGs Twitter

外務省のSDGs専用のTwitterアカウント。主に日本国内のSDGs関連イベントなどの情報発信がされています。

まとめ

以上、SDGsについて知ることができるリソースを紹介しました。筆者自身もまだまだ勉強中なので、他にいいソースを見つけたら随時更新していきます。

2018年5月14日月曜日

ウズベキスタンではなぜシボレー車が多いのか

中央アジアの国・ウズベキスタンへ入国して驚きを感じることの1つは、「走っている自動車のブランドが全然違う」ことではないでしょうか。日本とはもちろん、カザフスタンなど国境を接する隣国とも、走行している車の印象が全然違うのです。

その理由が、シボレー車の圧倒的シェアです。あくまで体感ですが、走っている車のうち、8割以上はシボレーブランドの自動車と思われます。トヨタやホンダなんてほとんど見かけません(隣国カザフスタンはトヨタだらけなのに)。しかも白い車体ばかりです。

首都タシケントの中心部。写っている車はすべてシボレー車


なぜシボレーはウズベキスタンで人気なのでしょうか。

気になったので、少し調べてみました。

シボレーとウズベキスタンの関係

シボレーは、アメリカの自動車メーカーGM(ゼネラル・モーターズ)が有するブランドです。日本ではあまり見かけませんが、全世界で展開されているブランドです。

GMがウズベキスタンへ進出したのは1996年。GM傘下の韓国の自動車メーカーGM大宇(Daewoo・デウ 、現在の韓国GM)が、ウズベキスタンの国策自動車会社(UZ Auto)との共同出資でUz-Daewoo-Autoという自動車ブランドを設立したことがきっかけです(公式サイトによると、登記自体は1993年、実際の稼働は1996年開始)。

半国有の自動車メーカーということで、輸入車よりも有利な条件で販売されていたと想像できます。ウズベキスタンはソ連からの独立後、漸進的に社会主義経済からの移行をしていたのです。

その後、GM大宇ブランドの廃止に伴い、2008年にUz-DaewooもウズベキスタンGMへと変わりました。いまでもDaewooのロゴ入りの車を見かけますが、多くはシボレーブランドのロゴに切り替わっています。

参考:http://gmuzbekistan.uz/companies/istoriya_razvitiya
https://en.wikipedia.org/wiki/GM_Uzbekistan

シボレー・ウズベキスタンのラインナップ

世界的ブランドのシボレーとはいえ、もともとがDaewooブランドだったこともあり、ラインナップもDaewooに準じています。現在のシボレー・ウズベキスタンが扱う車種は以下の通り。

Uzbekistan GM公式サイトより


基本カラーが白のためか、ほとんどが白い車体です。ときどき緑の車体を見ると「おっ」と思います。コンパクトからSUVまで、ひととおりそろっている感じです。

中でも面白いのが、Damas(ダマス)です。これは、かつてGMと提携関係にあったスズキのエブリィを基にした車種だそうで、その後DaewooおよびウズベキスタンGMで独自の進化を遂げました。

レトロというか、愛嬌がある顔立ちで、個人的には好きです。街中でも普通の乗用車や配達車として、よく見かけます。

ウズベキスタンのダマスについてレポートしている日本語記事(カーマニアでも走ってるクルマの名前が滅多にわからない! ウズベキスタンのクルマ事情 | 日刊SPA!)によると、現地のディーラーでも人気のようです。

さらに、GMウズベキスタンはRavonという新たなブランドを2015年に立ち上げました。これは特にCIS地域のローカルブランドだそうで、ロシアやウクライナ、カザフスタンなどに展開しています(UzDaily.com: New automobile brand Ravon presented in Moscow)。

まとめ

ウズベキスタンでシボレー車が多い理由についてまとめてみました。

前述のように、ウズベキスタンGMはRavonという独自ブランドで近隣地域に展開しようとしています。GM資本は入っていますが、独自ブランドで積極的に自動車生産・販売を行っているのは、中央アジアでもウズベキスタンだけでしょう。

なお、ウズベキスタンはISUZU のトラックやバスの生産も行っています。自動車生産は非常に盛んなのです。

ウズベキスタンは生産人口も多く、工場労働者の確保も容易でしょう。2016年に大統領が変わり、近隣諸国との関係改善を進めているところです。今後、ウズベキスタンの自動車産業がこの国の発展の鍵となる可能性が、大いにあります。

ウズベキスタンの今後の成長に関する考察は、別記事「ウズベキスタンは「次なるベトナム」となるか」をご覧ください。


2018年3月28日水曜日

【2018年版】留学生が日本で携帯電話を使う一番いい方法は?

はじめに

文部科学省の方針もあり、日本へ来る留学生の数は増える一方です。筆者は現在、大学で留学生を受け入れる仕事もしていますが、その時によく問題になるのが、留学生の「携帯電話の契約」です。

なにが問題か

では、留学生が日本の携帯電話を使おうとする時に、何が問題となるのでしょうか。筆者の経験上、留学生受入の現場では、おおよそ次のようなことが発生してしまいます。
  1. 留学生が日本へ到着。携帯電話を使えるようにしたいので、とりあえず街の携帯電話ショップ(docomo、au、softbankとか)へ行く。
  2. 田舎のショップだと外国語を話せる店員がいないのでそもそも話が通じない。
  3. 幸い話が通じても、月額料金の高さと契約プランの複雑さ、違約金の高額さに衝撃を受ける。
  4. 結果、携帯電話の契約をあきらめて、自国から持ってきたスマホをWi-Fiのみで運用してなんとか過ごす。
  5. しかし大学から急ぎで何か連絡したいときに電話番号がなくて困る。 すごく困る。 本人も不便。
この流れ、留学生受入担当者にとっては、「あるある〜」といった感じではないでしょうか。

docomo、au、softbankなどの大手携帯キャリアで契約すると、スマホのデータ通信プランだと6,000円以上するのが普通です。「2年契約」がほとんどのため、半年や1年で帰国する留学生は高額な違約金を払わなければいけません。 しかも割引は本体とセットでの契約でなければ効かず、本体代は分割であっても高額・・・。 とならば、お金のない留学生は携帯電話をあきらめても不思議ではありません。

解決策

解決策としては、次の2つが考えられます。
  1. 中古ガラケー+SIM契約
  2. 自分のスマホ+「格安SIM」契約
  3. Softbankのプリペイド携帯「Simply」を契約 ← 追加(2018年版)

1. 中古ガラケー+SIM契約の方法

1つめは、日本にいる間はガラケー(注:日本でしか使えないフィーチャーフォン)を使う方法です。ガラケーは、大手のショップで新品で買うと、非常に高いです。本体代金で3万円以上します。

そこで、中古携帯電話ショップへ行って、ガラケーを購入します。 中古ショップでは、ものにもよりますが、安いものだと900円くらいからあります。

そして中古ショップで購入した端末を、docomo、au、softbankなどのショップへ持って行き、電話回線を契約します。 日本の携帯電話はSIMロックがかかっているのが普通なので、必ずその携帯電話が対応したキャリアへ持って行ってください。

データ通信を使わなければ、月700円台〜使えるプランがあります(注:解約金が必要)。 ただし通話料金は30秒で20円と高いので、なるべく自分からは電話をかけずに、かかってきた時だけ使うようにしましょう。 何回か電話をかけても、だいたい月1,000円~1,500円くらいで収まるはずです。

初期費用(端末代、契約事務手数料)で5,000円、月々1,000円×12ヶ月=12,000円、解約金10,000円とすると、1年でかかる費用は30,000円くらいだと思われます。

これくらいなら、まあまあ払えるんじゃないでしょうか。 インターネットは無料Wi-Fiで何とかするから電話だけでいい、という場合はこの方法でいいでしょう。

参考に、大手3社のガラケー料金プランのリンクを載せます。
あと、大手3社に次ぐY!mobileもガラケープランを提供しています。

補足:プリペイド携帯

日本の携帯は大抵ポストペイド(月額制)ですが、例外的にプリペイド携帯も存在します。ただし、通話料が普通のプランより割高になります。
auとsoftbankがプリペイド携帯を提供していますが、softbankの方が充実しています。

Softbankのプリペイドを使う場合、「Simply」がおすすめです。この記事の3. Softbankのプリペイド携帯「Simply」を契約するを参照してください。

2. 自分のスマホ+「格安SIM」契約

自分のスマホを持っていて、電話だけでなくデータ通信(インターネット)を使いたい、またはデータ通信だけ使いたいという場合は、格安SIMを契約することをおすすめします。

日本はフリーWi-Fiの環境が劣悪です。大都市は多少、フリーWi-Fiスポットは増えましたが、LineやWhats Appなどチャットアプリをよく使う人は、やはりデータ通信のできるSIMが必要でしょう。

格安SIMとは?

格安SIMは、大手通信会社よりもかなり安価に携帯電話やデータ通信の契約ができるサービスのことです。「SIM」とは、携帯電話の通信に必要な小さなICチップのことで、格安SIM会社の多くは、この「SIMカード」単体で販売していることが多いです。

(画像)SIMカード

格安SIMは、大手通信会社の通信インフラを借り受けて、独自のサービスや料金プランを設定してそれぞれのお客さんに提供しています。格安SIMの会社は、ほとんど店舗を持たないかあってもほんの数店舗など、コストを極力抑えています。なので大手よりも格安で通信回線を提供できるのです。

どれくらい安いのか

どれくらい安いのか、比べてみましょう。
月額料金(通話+ネット) 契約期間 解約金 データ通信量 備考
大手通信会社 約6,900 円(機種代込み) 2年 9,500円 2GB ・電話かけ放題
・本体を分割払いで購入した場合は解約時に残債の支払いが必要
格安SIM A社 約1,900円 6ヶ月 8,000円 3GB ・これに電話料金がかかる(20円/30秒)
・電話機本体を用意する必要がある
※契約手数料は除く

上の表は、電話とネットをスマートフォンで利用する場合の料金比較です。前述のように、大手通信会社の契約プランが複雑怪奇なので、あくまで目安、例と思ってください。

大手通信会社と契約する場合は、機種を同時に購入するのが一般的です。上の月額料金は、Nexus5Xを同時購入した場合の料金です。SIMだけでも契約できるにはできますが、色々な割引プランが効かなくなります。ガラケーにすれば月額料金は安いのですが、最近のガラケーは本体料金がけっこう高いんですよ。

格安SIMでSIMだけを契約した場合、機種本体は自分で用意する必要がありますが、自国でスマートフォンを持っている場合もあるので、それが日本で使える機種の場合は、わざわざ新たに買う必要はありません。買う必要があっても、最近は1万円台でそれなりに使える機種が見つかります。

どうでしょうか。比べてみると、こんなに差があるんです。

なぜ安いのか

安さにはそれなりの理由があります。一般に、格安SIMのデメリットとしては次のようなことが言われています。
  1. 物理的な店舗の数が少ないので、申し込みやトラブルの相談が不便
  2. 設定を全部自分でやらなければいけない
  3. 通信速度が遅い
  4. 通話し放題プランがない
  5. クレジットカードがないと契約できない場合が多い
1 については、東京、大阪など大きな都市には、家電量販店(ヨドバシカメラやビッグカメラなど)に格安SIMの実店舗があるので、そういう所で契約すればよいでしょう。また、ネットでも契約できます。デジタルネイティブな若い留学生や日本の学生にとっては、ネットでの契約もお手の物でしょう。

2 については、これも若い留学生にとってはさほど苦労しないでしょう。SIMを入れるときに「APN設定」というネットワークの設定をしないと使えません。説明書に書いてある通りに設定すれば大丈夫です。

3 大手通信会社に比べて、通信速度が遅い場合があります。時間帯によって著しく速度が下がる時もあると言われていますが、安いんだからあきらめなさいってことです。最近は、速度については改善されてきています。私も格安SIMを使っていますが、速度の点で不満に思うことはほとんどありません。

4 通話し放題プランが必要な留学生はいるのでしょうか?よほどアクティブなビジネスマンみたいな留学生以外は、それほど自分から電話はかけないでしょう。

5 これだけは問題になるかもしれません。クレジットカードを作って日本に来た学生はよいのですが、日本で留学生がクレジットカードを作ることは簡単ではありません。ただ、銀行振込も可能な格安SIMの会社もいくつかあるので、そういう会社を使うしかないでしょう。

格安SIMのデメリットを見てみましたが、ほとんどの留学生にとって1~4はほとんど問題にならないでしょう。とにかく、使えればよいのです。

格安SIMのサービス

有名な格安SIMのサービスは次のようなものがあります。
格安SIMの普及に伴い、だんだんと料金プランが複雑になってきました。長くなってしまうのでここで比較はしませんが、どのサービスも、データ通信は数百円〜、通話つきの場合は1,000円台後半から、プランがあります。

月々2,000~3,000円くらいは携帯電話に出費してもよいという場合は、こういった格安SIMを契約するといいでしょう。

大都市の家電量販店にはだいたい、これらのSIMカードが置いてあり、その場で契約できます。最近では、筆者の住んでいる田舎のケーズデンキやノジマなどにも、一部の格安SIM(楽天モバイルとか)が販売されています。最近は、取り扱い店舗も増えています。

とりあえず近くの電気やさんに行ってみてください。

3. Softbankのプリペイド携帯「Simply」を契約

日本の大手携帯会社は、一応プリペイド携帯のサービスも提供しています。Softbankとauが提供していますが、おすすめはSoftbankで、「simply」という携帯を契約する方法です。

Softbankの「simply」は、以下のページで紹介されています。

Simply | シンプルスタイル(プリペイド携帯電話) | 製品情報 | モバイル | ソフトバンク

Simplyは、Softbankから2017年12月に発売された、名前の通りシンプルな携帯電話です。できることは、電話、メール、SMS、簡単なインターネットブラウジングくらいです。一応、スマートフォンと同じAndroidがOSとして入っていますが、電話機能に特化されているため、新たなアプリのインストールなどはできません。

機種代金は6,458円で、4,000円分のチャージが付いてきます。契約事務手数料・機種変更手数料が3,000円かかるので、初期費用は1万円くらいと思っていいでしょう。

プリペイドなので、その都度チャージが必要です。通話料金などについてはこちら

通話料は8.58円/6秒です。30秒あたり約43円なので、よくある通話料金の2倍以上です。まあ、プリペイドなので仕方がないでしょう。

留学期間が終わったら、携帯電話本体はSIMロックを解除して、買取店やメルカリなどのフリマアプリで売ることができます。次に留学しにくる別の学生に譲ってもいいですね。

結論

以上、見てきたとおり、月々1,000円、2,000円くらいでも携帯電話が使えることを紹介しました。

日本の携帯電話契約はとにかく複雑なのですが、留学生をサポートする人たち(学校の教職員やまわりの学生)が、ガラケープランや格安SIMについて基本的な仕組みや主なサービスを覚えておいて、留学生におすすめするようにした方がいいと思います。

とにかく留学生には、電話番号くらいは持っていてほしいのです。

SIMカードはamazonから買うと、契約手数料(3,000円程度)が無料になるようです。表示価格が300円とか非常に安く見えますが、もちろん月額料金は別途かかります。また、購入したらすぐSIMが届くのではなく、パッケージの指示にしたがって、各会社のサイトから登録する必要があります。日本語がよくわかる人でも難易度高めかもしれません。

2017年8月17日木曜日

ロシアに行ったら買っておきたい:何でも中東風の香りになる魔法の粉フメリ・スネリ

いつも真面目な記事ばかりだと退屈するので、夏休みだし、今回は調味料の話をしようと思います。

ロシアのスーパーには、様々な「カンタン」調味料が並べられています。日本でいう中華調味料的な存在で、例えば「ボルシチのもと」、「プロフのもと」など、定番料理がカンタンに作れる調味料がたくさんあります。また、ガーリックやディルの粉末などもあります。

そのうちの1つ、私がロシアへ行く度に買っている調味料が、まるで魔法の粉のように色々と使えるので紹介したいと思います。

その名もХмели-Сунели(フメリ・スネリ)

フメリ・スネリとは??

パッケージはこんな感じです。



一言でいうと、「何でも中東風の料理っぽくなる粉」です。

原材料は、パッケージの裏に書いてあります。


これを日本語にすると、
コリアンダー、ディル、バジル、マジョラム、フェヌグリーク、塩、パセリ、ピンクペッパー、ミント、ローリエ
となります。見るからに香ばしい感じの香辛料で構成されているようですね。
パッケージの写真も食欲をそそります・・・。

ロシアのスーパーではだいたいどこでも売られており、1パック数十円で購入できます。

使い道は??

パッケージには、次のように説明がされています。
フメリ・スネリ:ジョージア(グルジア)とアルメニア、および他のコーカサスの民族に使われている有名な香辛料。フメリ・スネリは第一にハルチョー作りに使われる。また、肉料理やスープのユニバーサルな調味料でもある。
ハルチョーというのは、有名なジョージア料理です。赤いスープが特徴的で、ボルシチに似ていますが、ボルシチよりも濃厚で少し辛味があります。

そのジョージアをはじめとしたコーカサス地方で使われている調味料とのことですが、コーカサス料理以外にも様々な料理に使えます。

次に、個人的におすすめしたい、フメリ・スネリがよく合う料理を紹介します。

フメリ・スネリがぴったり!個人的おすすめ料理

ハンバーグ

通常のハンバーグのたねに、フメリ・スネリを入れればあら不思議!たちまち香ばしさが激増し、ケバブのような風味になります。

ハンバーグ以外にも、基本的に肉料理には何でもよく合うと思います。

マヨネーズ・タルタルソース

ドレッシングを作るときにも使えます。いつものマヨネーズやタルタルソースでは何か物足りない時、フメリ・スネリを1つまみ入れてください。

すると、あら不思議!ただのサラダやエビフライが、たちまちコーカサス料理に大変身します。

納豆

最後に、意外なんですが納豆にも使えます。

これは好みが分かれると思いますが、要するに納豆に山椒を入れるような感じと捉えてください。「納豆 山椒」で検索すると、「上品な香りになる」「大人な味になる」などおすすめする記事がたくさん出てきます。

ちょっぴり大人っぽい納豆ご飯!山椒トッピング

これと同じように、フメリ・スネリを入れても美味しくなります。納豆好きの方におすすめです。

まとめ

以上、ロシアで買える魔法の粉「フメリ・スネリ」を紹介しました。

ぜひロシアへお越しの際は近くのスーパーへ立ち寄り、この魔法の粉を手に入れて日本へ帰ってください!

(そして誰か、Cookpadにレシピを公開して、フメリ・スネリを日本に広めてください。)

2017年6月10日土曜日

開幕!カザフスタン・アスタナ万博とカザフスタンのこれから

先日、大阪が2025年の万博開催地に立候補した事がニュースとなりましたが、今年の万博がどこで開催されるか、ご存知でしょうか。今年は、カザフスタン共和国の首都・アスタナで開催されています。6月9日に開会式が行われ、会期は6月10日から9月10日まで、3ヶ月間です。

カザフスタンとは?アスタナとは?

カザフスタンはソ連崩壊後に独立し、2017年で独立25年を迎えます。ロシアの南、中国の東に位置し、国土面積は世界第9位という広さに対し、人口は約1,700万人です。天然ガス、石油、レアメタルなどの天然資源が豊富で、2000年代に急激な経済発展を遂げました。ただ、ここ数年は資源価格の下落により、経済は少し減速しています。


 カザフスタンのGDP成長率

主要民族はカザフ人で、人口のおよそ7割を占めます。カザフ人はアジア系の顔立ちで、日本人ともよく似ています。最近だと、「美しすぎる女子バレー選手」として話題になったサビーナ選手が話題になりました。カザフ人以外にはロシア人や朝鮮人など多くの民族が暮らしています。 フィギュアスケートのデニス・テン選手も朝鮮系カザフスタン人です。
サビーナ・アルティンベコワ選手(instagramより)

そのカザフスタンの首都がアスタナです。もともとカザフスタンの首都は、南部のアルマティでしたが、1998年にアスタナへ遷都されました。アルマティでの大地震や、ロシア系住民の多い北部の分離独立を警戒したためなど、遷都の理由は様々あるようです。

遷都の前は、アクモラという名前の街でした。当時の人口は25万人程度で、遷都後に急速に街が整備され、現在は80万人を超えています。なお、アスタナの新都市を設計したのは、コンペで優勝した日本の建築家・黒川紀章氏です。

新たに作られた都市のため、市内には斬新な形状をした、近未来的な建築物が多々あります。

首都・アスタナ

アスタナ万博のテーマ

アスタナ万博のテーマは「Future Energy」。自然エネルギーの活用、エネルギー利用の効率化など、未来のエネルギーのあり方を考えることが焦点となっており、100以上の国・地域と国際機関のパビリオンにはそれぞれのアピールしたいテクノロジーや取り組みが紹介されているようです。

アスタナ万博の公式ページ(英語)はこちら

会場図もありますが、日本で行われた大阪万博や、数年前に行われた上海万博、ミラノ万博ほどの規模は無いように見えると思います。

それもそのはず。ひとくちに「万博」といっても、5年に1回程度開催される大規模な万博(登録博)と、専門的なテーマに絞った万博(認定博)があり、アスタナ万博は後者の認定博の方です。認定博は、会期や会場面積などに制限があり、分野も絞られた万博です。なので、規模もテーマも限定的です。

とはいえ、国際的な大規模イベントであることには変わりなく、かなりの労力と資金が投じられ、一般の人が楽しめるようになっています。

テーマに沿ったパビリオンのほか、シルク・ドゥ・ソレイユの公演など文化イベント、その他様々なイベントが開催されるようです。

なお、日本もパビリオンを出しています。日本館の特設サイトはこちら

カザフスタン国民の熱狂は?

日本では、かつての大阪万博が国民の熱狂を呼び、その後の高度成長期へと繋がった象徴的なイベントでした。前述のように「認定博」とはいえ、新興国であるカザフスタンでの万博開催となれば、さぞかし国民が熱狂していることでしょう・・・と思いきや、案外そうでもないようです。

東京オリンピックがいまいち盛り上がらず、開催に反対する都民が一定数いるように、アスタナ万博も冷めた目で見ているカザフスタン国民もいます。

これには理由があって、アスタナ万博は、プロジェクト開始から様々なスキャンダル、トラブルに見舞われてきました。




この記事によると、アスタナ万博をめぐって次のようなスキャンダル、トラブルがあったようです。関係者の自動車事故、アスタナ万博のための国策会社幹部による組織ぐるみの汚職、建設中のパビリオン内でバーベキューして(ネットが)炎上しちゃった問題、マスコットキャラクター変更論争、さらには吹雪による建設中パビリオンの倒壊・・・。
これはさすがのカザフスタン国民もゲンナリするはずです。

まあ東京五輪も、スタジアム問題、会場問題、ロゴ問題、費用負担問題、無償ボランティア・・・とこれまでも問題山積でまだまだ問題は出てきそうなので、よその国のことは言えませんけどね。今のところ、汚職が無いだけましでしょうか。

批判はさておき、多くのカザフスタン国民は「やるなら成功してほしい」とは思っているはずです。アスタナ万博の成功を祈ります。

万博後、カザフスタンはどこへ向かうのか

カザフスタンの向かう方向性は明確です。カザフスタン政府は「Kazakhstan 2050」という、2050年に向けた国家目標を定めています。

「Kazakhstan 2050」の特設サイトまであります。
これによると、カザフスタンは「2050年までに一人当たりGDPを60,000USドルまで増やす」という目標を掲げています。2016年の日本の一人当たりGDPが38,917ドル(世界22位)なので、かなり野心的な目標と言えます。なお、2016年のカザフスタンの一人当たりGDPは7,452ドルで、世界77位となっています(参考)。

また、経済成長だけではなく、「2025年までにカザフ語をキリル文字からラテン文字へ移行する」といったアイデンティティーに関わる目標や、「水問題の解決」など環境・国際関係に関わる目標も掲げています。

カザフスタンはいま、岐路に立たされていると思われます。しばらく経済成長を支えてきた天然資源価格の上昇は終わりました。また、独立から25年、大統領としてカザフスタンの成長をけん引してきたナザルバエフ大統領ですが、高齢となり世代交代の必要に迫られるでしょう。

アスタナ万博の遺産を活用し更なる発展へと舵を切れるか、それとも負の遺産として持て余し、停滞の時代を迎えるのか。カザフスタンの今後に要注目です。

2017年5月5日金曜日

最新 世界情勢地図:100枚の地図で理解する世界のいま



本屋で思わず手にとって衝動買いしてしまった一冊。

パスカル・ボニファス (著), ユベール・ヴェドリーヌ (著), 佐藤 絵里 (翻訳)『増補改訂版 最新 世界情勢地図』ディスカヴァー・トゥエンティワン,2016

本書では、およそ100枚の世界地図とそのテキストによって、世界情勢を解説しています。

どんな地図かというと、ヨーロッパが世界中に植民地を持っていた時代、世界の環境問題、人口分布、特定の国や集団から見た世界など、様々なテーマに基づき、カラフルで分かりやすく示された地図です。Amazonの商品ページにサンプルがあるので、そちらを見るのが早いでしょう。


この本の優れたところは、これまで気に留めていなかった世界の事実に、ビジュアルによって気づかせてくれるところです。

中でも面白いのは、「◯◯から見た世界」の章。米国、ヨーロッパの主要各国、トルコ、ロシア、中国、日本などの国々、あるいは「アラブ世界」、「イスラム主義者」など特定の集団の視点から世界情勢を見る、という試みです。

例えば、米国であれば、米国がどんな国と軍事的、経済的な同盟関係にあり、どんな国を警戒しているのかが一枚の世界地図でパッと分かるようになっています。これが「ロシアから見た世界」の場合、ロシア帝国時代の領土拡大の過程の地図が入ります。このように、国によって取り上げられる話題が異なります。各国はそれぞれの課題を抱えているからです。「日本から見た世界」は、中国などと比べると大分あっさりとしています(見れば分かります)。日本ってあんまり注目されてないんですかね。

なお国として取り上げられているのは主要な国のみで、全ての国の項目はありません。アフリカ諸国の中では、南アフリカとセネガルだけが取り上げられていました。南アフリカはいいとして、なぜセネガルなんだろう。国の規模や影響力からして今ならナイジェリアやエジプトの方がふさわしいのではと思いますが。著者がフランス人ということが関係しているのかもしれません。

このような多少の偏りはあるにせよ、カラフルな地図を眺めているだけでも楽しいです。「あ、ここの国々はこんな共同体作ってたんだ!」とか、「この地域ってこんな紛争があったのか」とか気づくことができます。

気づきを得たその後は、本文のテキストを読むと理解が進みます。しかしテキストは1つの項目につき1ページ。それほど深堀できている訳ではありません。あくまでテキストは参考程度で、気になった問題はネットや他の本で調べるなりしましょう。

気づきのきっかけとしては、素晴らしく楽しい一冊だと思います。

(統計データについて気になったら、公開データを調べてみてください。参考記事:Google Public Dataを使ってグラフで遊ぼう